19.家族に打ち明けました
「はぁ…」
私は、談話室の扉の前に立っていた。
(ああ、入りたくない…もう少し考える時間が欲しかったな…。ギルドで発言した時点で、こうなる事は分かっていた。もう誤魔化せないのは分かっているけど…心の準備が…)
ドキドキとする胸を押さえ深呼吸して談話室に入ると、そこには、両親と兄がお茶を飲んで何か話をしている所だった。
「レイチェル、来たか。そこに座りなさい」
「はい、お父様」
両親の向かい側のソファーに腰をおろした。
「今日は、街に行ったらしいね。楽しかったかい?」
「はい、とっても楽しかったです。ふふふっ」
「で、ギルドにも行ったそうだね。ルーカスに話は聞いているよ」
私の隣に座る兄がニッコリと微笑む。
(……うう、逃げたい)
「はい、お兄様のお仕事を拝見いたしました」
「今回、レイチェルのおかげで問題が解決しそうです。ジャックが感謝してましたよ」
「そうかそうか、で、レイチェルそんな知識をどこで覚えたんだい?」
「………」
(ほら来た、誤魔化せ!私……)
「何かの本で見たんです……」
「ふむ、そんな本うちの邸にあったかな……?」
「あ……えっと」
(落ち着け…落ち着けわたし…)
あの書庫にある本は、父の本そんな本がない事はバレてる。あの時苦しんでいる人を助けたい一心で話した事は後悔してない。話して楽になろうか。頭がおかしいと思われるだろうか。これ以上誤魔化す言葉が見つからなかった。
「レイチェル、言いたくなければ言わなくていいのよ?」
「え?」
(なんで?)
「でもね、これだけは知っていてほしいの、私達は何があってもあなたの味方よ。覚えていてね?」
3人が私を見て笑顔で頷いた。
(ああ、ダメだ。信じてもらえなくてもいい、話さなきゃ……後悔する。でも、気持ち悪がられたら?)
私の瞳からポロと涙が零れた。
「あ…あの、信じてもらえるか分からないけど、実は……わたし…転生者なんです…」
「「「???」」」
私は、祝福の儀式でこことは違う別世界で生きた前世の記憶を思い出した事を話した。
「そうか、なるほど。そんな事があったのだな……祝福の帰りに様子がおかしかったのはそれでか?」
「はい、どうしたらいいか分からなかったのです。言っても信じてもらえないと思って……言えなくて、ごめんなさい」
「いいのよ、辛かったわね。前世の記憶を思い出しても、私達の愛しい娘に変わりないわ。それにあなたは小さな頃から不思議な事を話していたもの納得がいったわ。ふふふっ」
「驚いたけど、僕も信じるよ。それに今日のギルドでの事が証明してる」
(信じて…くれるの?…ああ、なんて優しい家族なんだろう…)
私は、緊張の糸が切れたのか瞳からポロポロと涙が零れだした。
「うう…ひっく…ふうぅ…わたしの事、気持ち悪いって…思われたら…うぅ…どうしようって…ふぅぅ…」
「「「!!!」」」
私が泣き出し両親達は、ギョッとして焦った顔をした。
「そんな事思うわけがないだろ?おまえは俺の大事な娘だ!」
「そうよ。可愛い娘にそんな事思うはずないでしょ?」
「大丈夫だよ。もし何があってもみんなでレイチェルを守るから」
隣に座っていた兄が優しく、泣いている私を抱きしめて背中をポンポンと撫でてくれた。
母も隣にやって来て反対から私を抱きしめてくれた。
しばらくすると、涙が落ち着いて来て黙っていた父が口を開いた。
「ああ、そうだな。この事は家族だけの秘密だ。ロイやマリーには、話す事になるだろが、みんな内密に頼むよ」
「分かってるわ」「分かりました。父上」
「…ぐす…うぅ…お父様。ありがとうございます」
(ああ、家族の前で久しぶりに大泣きしてしまった。でも、よかった。なんとかなったー)
私は、泣き疲れそのまま兄の腕の中でウトウトと眠ってしまった。
「「「………」」」
「あらあら、レイチェルもまだまだ子供ね」
「そうだな。まぁ、俺に取ったら三人ともまだまだ可愛い子供だ」
「父上…」
私は、数時間後目を覚ました。
「あら、起きたのね?ふふふっ」
「ふぁ!お母様???」
どうやら、母に膝枕してもらっていたようだ。
(わぁ…2時間くらいかな…なんか嬉しいけど申し訳ないような…)
その後、父と兄も執務室から戻って来て、母が今日あった事をもっと聞きたいと言うのでギルドでの壊血病について知っている事を話す事にした。
3人は、その話を聞くと青い顔をした。
「よ、よし、これからはそのビタミンC?の入った食事を摂ろう」
「そうね。そうしましょう」
「そうですね。領地内でも噂を流しましょう。この病でなくなる者を減らせます」
「そうだな、柑橘の果物農園を作るのもいいな」
父と兄は領民の為に何かしたいと話し込んでいる。
「あ、あとビタミンCは他に美肌効果とか……」
「なっ!なんですって?!レイチェルもっと詳しく…」
「は、はいお母様…」
この話し合いは、執事が夕食に呼びに来るまで続いた。
夕食が終わると父が何か思い出したかのように話し出した。
「ああ、そうだった。近いうちに時間を作るから一度スキルを見せなさい」
「ふえ?」
(ど、どうしよう……)
「私も見たいわ。最近ずっと部屋で研鑽しているのでしょ?」
「僕も見せてほしいな」
三人がにこにこして私を見つめる。
「ああ、えっと……」
(これも、隠せないやつかな?)
「今更、何が起こっても驚きはしない。それに、親として知っておく必要があるからな」
そう言われると、断る事ができない。
「は、はい。わかりました…」
「うむ、楽しみにしているぞ」
部屋に戻った私は、あの部屋を隠し通すか考えたが……結局、後でバレる事を考えると見せた方がいいと判断した。
(まぁ、いっか!転生者だってバレてしまったし…隠さなくていいかな?)と、開き直った。




