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14.噂を流せ(テオドール)

俺達は、侍女達がよく通る中庭や庭園付近で空いた時間 囮令嬢と過ごす事にした。父と母にも許可を取ってある。案の定、すぐに俺達の噂は広まっていった。仕事中にも関わらず侍女達は、俺達を見て噂話をしているようだ。


「今日もいらっしゃるわ」

「どこのご令嬢かしら?あんなに仲睦まじいんですもの婚約も近いのでわ?」

「あのご令嬢 陛下も気に入ってるそうよ」

「まぁ、羨ましいわ」

(よし!いい感じに噂されているな……普通なら、そんな暇あるなら働け!と言ってやりたい所だがな)


予想外だったのは、兄が長期視察から帰って来ていた事だ。兄は、俺の事情を知らない。

第一王子アレンは、綺麗な銀髪に俺と同じ青い瞳。男らしい顔立ちと体格で第一騎士団の指揮をとっている。剣術の腕も俺に一度でも負けた事が嫌だったのか鍛錬を重ね、今では剣聖ともいわれる程だ。

先日、王城の廊下で兄に声を掛けられた。

「テオ、元気そうだな」

「兄さんも元気そうで何よりです。視察は、どうでしたか?」

「ああ、レヴァイン帝国は、うちの国にない技術を色々持っていてな。また、近いうちに向かう予定だ」

「そうなんですね」

「ああ、そういえば、最近よく綺麗なご令嬢と一緒にいる様だな?」

「まぁ……」

「今度一度、俺にも会わせてくれ。妹になるかもしれないだろ?」

「さぁ、どうでしょう」

「ハハハッ、取ったりはしないさ。まぁ、今度お茶でもしようじゃないか」

「はい……」

と、言う事があって作戦が進んでいる以上本当の事を話せないままでいるが、兄は負けず嫌いだ。前に何度か俺に好意を持っていたはずの令嬢が兄に心変わりした事がある。あの兄の事だ裏で誘惑していてもおかしくはない。今回は、囮令嬢だがレイチェルだったらと思うとゾッとする。とりあえず、今回の作戦を邪魔される訳にはいかない。誤魔化し通す事に決めた。



花が咲き乱れる庭園のベンチに座り 今日も二人は演技する。


『殿下』   と、囮令嬢が耳元で囁いた。

『なんだ?』

『昨日から視線を感じるんですよね……』

『本当か?!』

『はい、あまりいい気配ではないので例の人物かもしれませんよ』

『よし、分かった』 と、言って俺は囮令嬢をガバッと抱きしめた。


『ちょ、ちょっと!やりすぎですよ』

『我慢しろ。こちらを見ているなら後一押しだ』

『はぁ、我慢しますよ……』

『俺だって男になんか抱き付きたくないんだ!お前がレイチェルだったらどれだけ良かったか……』

『殿下も報われませんね』

『何か言ったか?』

『何も?』

その日は、視線以外の反応はなかった。

後で聞いたのだが、離れた所で護衛していたハリスは、しゃがんで笑いをこらえるのに必死だったと言う。殴ってやりたい。


二日後、俺宛の怪しい手紙が届いたと事務官から知らせを受け、ハリスが手紙を持って来てくれた。

安全を確かめ封を切った。手紙には、


   『 殿下は令嬢に騙されている 』


と、一文汚い文字で書かれてあった。

「やはりそうか、犯人は、王城にいる。もう少し続けるぞ」

「かしこまりました」 「御意」





あれから、庭園に行くたびに視線を感じる距離が近くなっている。

俺達は、今日 囮令嬢を庭園に一人残す作戦にでる事にした。


「殿下 失礼します」 と、ハリスがワザと俺に声をかけた。

「ハリス どうした?」

「はい、陛下がお呼びです」

「分かった。申し訳ない少し待っていてくれ」

「はい。分かりましたわ」 と、囮令嬢がニッコリ微笑んだ。


俺はハリスと立ち去ると囮令嬢がいる場所が見える2階の部屋へ移動し庭園を監視した。


(さぁ来い!今度こそ捕まえてやる!)

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