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12.魔法とスキル


お気づきだろうか?


療養中とは言え私は、もう13歳。

下手したらこのまま14歳を迎えてしまう。


普通であれば今頃、魔法の実践訓練をしているはずの私は、12歳の魔法基礎の授業の途中で婚約白紙騒動からの長期療養で未だに、魔法も使えないお子ちゃまだ。


もうそろそろ、療養を切り上げて魔法基礎の授業を再開してほしいと、母にお願いしに行った所、

「あ!忘れていたわ!」ですって!

もう、笑うしかない。


そして、近いうち父が私の魔法属性を見てくれる事になった。

それが終われば本格的に魔法の実践訓練が始まる。


「レイチェル、いい?イメージが大事よ。スキルもそうだけどイメージする事で威力も上がるの」

母は、時々魔法の本には書いてない事を言う。

私は、コクコクと頷いた。

(魔法の本には、右手に魔力を流せとしか書いてなかった。そうかイメージか)


「今日は、このページの魔法の発動を教えるわね。まず、わたしのお手本を見てちょうだい」

「はい、お母様」

(きたこれ!魔法だ!)


「最初は、火属性から」

母は、人差し指を立てるとポッと小さな炎が指先にともった。

「わぁ!すごい!熱くないの?あの、呪文などはないのですか?」

「熱くないわ。この程度の魔法には、呪文は必要ないのよ。イメージで十分。高度な難しい魔法以外必要ないわね。まぁ、イメージする為に自分で呪文を作って呟く人もいるわね」

母がとても不機嫌な顔をしたので、これ以上呪文について聞くのを辞めた。


「次は、水ね」

空になったティーカップに、人差し指を向けると指先からトポトポと水を出した。

「これもイメージよ。お茶を注ぐように…魔力を指先に集中して」

母は、次々と披露してくれた。

指先から風を起こし、砂を出し、光の玉を浮かべ、黒い靄を出した。

(すごい!魔法すごい!)

黒い霧は、何に使うのか教えてくれなかったけど、母の魔法は美しかった。


「ね?イメージ大事でしょ?あと、魔力も大事だけど、魔力を身体から放出するのが大変なの。それは、実践して教えるわね」

「はい!お母様」


翌日、庭で魔法の実践をした。

魔力の放出に最初は戸惑ったものの、難なく6属性の魔法を指先から発動させる事が出来た。

「これで魔法属性の相性を見る事が出来るわね。うちの子供達は優秀ね。みんな一日で出来る様になるなんて」

「そうなの?」

「ええ、何日もかかる子もいるのよ。今日はよく頑張ったわね」

母に頭を撫でられながら褒められて、気分上々だ!


魔法が使えた!今ならスキルも使える気がする!


さっそく自室に戻った私は、机の引き出しから一冊のノートを取り出しペラペラとめくった。


(えーっと、確かここに扉スキルのアイデアをメモしたはず…)


私は、転生者と分かってから忘れない様にノートにメモをとっていた。

それも誰にも読まれない様に日本語で。

もし、見られても読めないし何かと訪ねられても落書きだと誤魔化すつもりでいる。

恥ずかしい黒歴史ノートだ。ちなみに、もうすぐ2冊目が終わる。


(これこれ、この中でイメージしやすいものは…これかな)


ノートを閉じると私は、白い壁に向かって右手を前にかざして目を瞑った。


お茶の用意をしてくれたマリーが後ろで生暖かい目で見守ってくれているのが少々気になるが…いつもの事だから仕方ないと諦めた。


(イメージ…イメージ)

扉の向こうは、異次元空間。アイテムが収納できて中は時間停止状態。それから、こんな感じで…と想像する。


魔力を右手に集中させ、壁に向かって魔力を放出しながら「収納」と呟いた。

その瞬間、手の平がぱぁっと光って 目の前に小さな白い扉がフワッと宙に浮いて現れた。


「「!!!」」

私は、恐る恐る扉を開けて見るとイメージ通り、紫の渦を巻いた空間が広がっている。

(ちょっと、禍々しいな…)

試しに机の上にあるペンを中に入れてみた。扉に「ペン1」と表示され、取り出す事もできた。

「やった!成功…した?」

「おめでとうございます!やりましたね!」

私は満面の笑みで、マリーは目に涙を浮かべて喜んでくれた。


その時、ふと考えがひらめいた。

女神様の加護『ルーム』も扉に関連している。

加護の事は伏せて、これもスキルなんだと説明すれば昼間もルームを利用できるのでわ?

マリーが感動してくれている今がチャンス!


目元の涙をハンカチで拭っているマリーに話しかけた。

「マリー、あのね?もう一つ見てほしいものがあるの」

「はい。なんですか?」

「まあ、見てて」


何も言わず、すぐ側の壁に左手の腕輪を前にかざした。

フワッと扉が現れた。


「え?わぁ!すごいです!お嬢様!この扉は何ですか?」

マリーは、胸の前に両手を握り私の返事を待っている。

「この扉は…ルーム」

「ルーム…?」

「この扉の向こうは、私の秘密基地なの。誰にも言わないでね?お父様やお母様にも」

「はい!もちろん!」

「それから、ここに入っている間は、スキルの研鑽をしたいから一人にしてほしいの。用事がある時は扉を3回ノックしてね?」

「はい!畏まりました。お嬢様」


(やったー!あっさりクリアー!これで心置きなく昼間でも部屋育成ができるー!)

私は、さっそく夕食の時間までこもることにした。


その日以降 私は、用事がない限り、部屋に引きこもる事が増え家族は心配した。


ある日の夕食後、私は談話室に呼ばれ両親の向かい側のソファーに兄と座った。

食後の飲み物を用意してくれた使用人達は、さっさと談話室から出て行った。

なんだか嫌な予感がする。


「レイチェル、最近、部屋に籠りがちになったと聞いたが?……」

「ああ……そ、それは、扉スキルの研鑽をしてるので」

そう言って私はニッコリ笑った。

いつかは、言われると思っていた言葉だった。

療養していた時よりもここ2週間ずっと部屋に籠っている自覚はある。

だって、もう夜中にこっそりルームに行かなくてもよくなったから。

昼間もルーム使い放題だ。


「まぁ、頑張っているのね」

「はい」

母はにっこり笑った。

「そうか…、では一度成果を見せてくれ」

「成果…ですか?」

「ああ、レイチェルのスキルは、スキル名鑑にも載っていない不明スキルだ。どの様なスキルか分かった場合、神殿に報告する必要があるんだよ」

このスキルは、たぶん規格外だ。

「収納」だけでも見せようかと思ったけれど、今は辞めておいた方がいいかもしれない。

「そうですか。……えっと、まだ、お見せできる程ではないので」

私は、気まずくなって俯いてしまった。

「……そうか、わかった。困った事があったら言いなさい」

「はい、ありがとうございます」


私は話し終えると、そそくさと部屋に戻った。





レイチェルが出て行った後の談話室。


「「「…………」」」


「レイチェルは、何か様子が変でしたね。何か隠している様な……」

兄ルーカスは、腕を組んで首を傾げた。

「そうね。さっきは、いつものあの子らしくないわね」

「もう少し見守ろうじゃないか。いずれあの子から話してくれるだろう」

「ふふふっ、そうですね」

伯爵夫婦は、手をとり合って頷き合った。

それを見ていたルーカスは、相変わらずだな。と言ってお茶を飲み干して立ち上がろうとした所、

「ルーカス少し待て」と父に呼び止められた。

「まだ何か?」

「ああ、そうだ。あの例の件について、テオドール殿下からの報告が届いた。脅迫文を送った者は二人いるそうだ。一人は捕まったが…最後の脅迫文を送って来た者が、まだ捕まっていないらしい」

「たしか、『婚約したら令嬢の命はない』だったかしら…」

「うむ、婚約は白紙に戻ったが、レイチェルの命を狙った者がまだどこかに潜んでいる。警備は増やしてあるがまだ油断は禁物だ。領内でおかしな点を見つけたら報告してくれ」

「ええ、分かったわ」

「はい、分かりました。父上」

三人は、顔を見合わせ頷いた。


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