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11.療養中の部屋育成


領地に戻った私は、婚約が白紙になった事を報告すると母は驚き激怒した!


「なんですって!会ってすぐ断るなんて!私の可愛いレイチェルに何て事を…許せないわ!」

ピシッ!ピシピシピシッ!

「え?!」

変な音が聞こえたかと思うといきなり、

バリンッ、ガシャン!

と応接室のガラス窓がすべて割れた。

「!!!!!」

「お、お母様、落ち着いてください!私は大丈夫ですから!」

(はぁ…言わんこっちゃない…。わたしが少し泣いてしまった事は秘密にしておこう…邸が崩壊するかも…お母様は何をしでかすか分からない…)

いつもは穏やかな母だが怒らせたら父よりも怖い。付与術のスキルを持ち、あらゆるデバフ効果を与える事ができる母は、強化でも毒でも呪いでもかけ放題だ…怖い怖い…。

なんとか母をなだめたけど、兄も怖い顔をして黙って何か考えている。大丈夫かな……


数日後、父が王都から帰り機嫌の悪い母を執務室へと連れて行った。

父はうまく説得してくれたのか、やっと母は落ち着きを取り戻した。

(はぁ…よかった。この数日生きた心地がしなかった…やっぱり、お母様の側にはお父様がいないとダメね)

執務室から戻って来た両親は、応接室にいる私の向かいのソファーに座ると、

「レイチェル、顔色が悪いわ。ショックを受けて可哀そうに…少し心を癒す為に、しばらく療養していなさい」

母はわざとらしくチラッと一瞬だけ父を睨み、そう言ってにっこり笑った。

(いやいや…疲れてるのほぼお母様のせいですからね!とは、口が裂けても言えないな…)

今は素直に言う事を聞いていた方がマシだ。

とは言え、ここ最近忙しい日々をおくっていたし、久しぶりの自由を満喫したい。

「ありがとうございます。お母様」

父も困った顔をして黙ってコクンと頷いていた。




「ああ……暇だわ」

療養と言う名の軟禁生活がはじまった。

まさかの外出禁止、一週間は庭に出るのも禁止なんて聞いてないよ!


最近、私の部屋の前には、護衛が一人いつもいる。

窓の外の庭にも一人…今までこんな事なかったのに。

療養一週間が過ぎ、庭の散歩の許可がおりた。もちろん護衛が一人ついて来た。

(見張られてるみたいで落ち着かないわ…)

過保護を通り越しているよ…両親よ。

邸の外の警備も増えてる気がする。

(もしかして私…命を狙われている?…まさかね)


「邸の中で何かできる事考えなきゃね。暇で仕方ないわ…」


昼間は、読書やマリーとお菓子作り、他の使用人達と情報交換の女子会した。

友達の令嬢と文通し、たまに庭の散歩をした。

そう言えば先日、父にお願いして庭にブランコとすべり台を作ってもらった。

この世界には、子供が遊ぶ遊具が少なくて、ブランコはあったけれどすべり台はなかった。

なので絵を描いて父に説明すると技術士が、あーでもない、こーでもないと試行錯誤して作ってくれた。

今ではその場所がお気に入りの場所になった。なぜか父は、すごく褒めてくれた。

そして、就寝時間になると魔力操作の訓練をして、あの女神様の加護xxxroomルームで過ごした。


最初は1時間だけと決めていたのに、ついつい長居して最近では数時間。


結果…睡眠不足です。


(はぁ、いっその事マリーにだけ教えておこうかな…)

そうすれば、昼間でもルームに入る事が出来るよ。やったね。

でも、どう説明したらいいのか分からず…今日も就寝時間を迎えた。


魔力操作の鍛錬を早々と終えた後、腕輪を壁にかざしroomの扉がフワッと現れた。


扉の前でルームシューズを脱いで部屋に入る。

前世の部屋と一緒で土足厳禁のマイルール。


さっそくコタツの前の座椅子に座ってノートパソコンを開いた。

電源をポチっと押して画面が明るくなる。

設定画面なんてものはなく、画面に5つのアイコンが並んでいるシンプルな作り。

『ショッピング』『検索』『メール』『ユーザー情報』『ヘルプ』


ちなみに、電源コードなんてものはなく、どんな仕組みなのか不明。


ヘルプには、こう書いてあった。


※ショッピング※

対価を払って商品を購入できる。

対価はこの世界のお金とアイテム。うさぎの貯金箱に入れるとポイントに変換される。

そのポイントで商品を購入する事ができる。商品は、すぐに配送される。

商品を購入すればroomLvが上がる。Lvが上がれば買える商品が増える。

購入したアイテムは、この部屋の扉から持ち出す事ができない。       

※検索…情報を調べる事ができる。

※ユーザー情報…ユーザーの詳細を表示。

※メール…メッセージを送受信する事ができる。

※ヘルプ…ノートパソコンの使い方説明。

※うさぎを可愛がるように。


このヘルプを最初見た時、慌てて女神様に手を合わせて、

「もっと詳しく説明してほしいなんて思ってごめんなさい」

と祈りながら謝った。


そして、説明にそって『部屋の育成』を進めていった。

すごく楽しくて、ハマってしまった。


現在、座っている座椅子も自分のお小遣いをポイントに変え購入したものだった。

ラグマットレスを引き、収納棚、観葉植物、クッション他…

白くて殺風景だった部屋も、今では普通に生活できそうな部屋になった。


ショッピングの商品は、雑貨、日用品、食料品、家具と種類が多く購入しなくても、その画面を見ているだけで、あっと言う間に時間が過ぎてしまう。


今分かっている対価は、

小銅貨 100P、 銅貨 1000P、 銀貨 10000P  に交換できた。


さすがに13歳の少女に大金をほいほい持たせてくれる親ではないので、自分でお小遣いとして貯めていたお金を対価につぎ込んだ。

課金はご計画的にと言う文字が頭に浮かんだ。

(ほんとそれ…)


たぶん予想では、

大銀貨 10万P、金貨 100万P、白金貨 1000万P となるはず。

今世と前世を物価的に考えると小銅貨100pは100円と考え方いい。

アイテムの対価については、未だ試していない為不明。


私は、今日もうさぎの貯金箱を膝に抱え、ショッピング画面を見て

「あ、これいいなー。あれもほしい」と、楽しく欲しい物を物色する。


手紙やヘルプに『*うさぎを可愛がるように。』と書いてあった通り、この部屋にいる間は、うさぎの貯金箱を自分の近くに置いたり、抱っこしたり、撫でたりしている。

そして、この丸い貯金箱はお金を入れるたび合計ポイントが表示される優れもの。



ちなみに、ユーザー情報を開いたら…こうでした。


レイチェル・クローズ (13歳) クローズ伯爵家次女

魔法 火Lv-、水Lv-、風Lv-、地Lv-、闇Lv-、光Lv-、

   魔力操作Lv2

祝福 扉Lv1

加護 女神テールの加護Lv1

称号 転生者・神獣の愛し子・roomの主・伯爵家の愛娘


謎の称号が書かれてあったけど見なかった事にした。

そして、魔法項目がしょぼくて少し落ち込んだ。


そんな毎日を送る私に、文通をしていた令嬢から、

「近いうちにクローズ領に遊びに行ってもいい?」

と言う手紙が届いたので「ぜひ遊びに来て!」と返事の手紙を書いた。





数日後、レイチェルの部屋


「え?!そんな事があったの?大変だったわね」

ワインレッドの髪をキュッとツインテールに結び、少し目尻の下がった黒い瞳で心配そうに私を見つめる彼女は、ウェンディ・ワイズ伯爵令嬢。


「療養してるって書いてあったから、すっごく心配したのよ!」

ラベンダーグレイの内巻き髪を肩まで伸ばし、褐色の瞳をうるうるさせて今にも私に抱きつきそうな彼女は、セシル・ロッドフォード子爵令嬢。

二人ともクローズ領に別荘を持っていて、母のお茶会で知り合った私の数少ない友人達だ。


「二人ともありがとう。私は大丈夫よ。ここで話した事は秘密にしてね?」

療養していると手紙に書いた手前、理由を求める二人に今回の婚約白紙騒動の事を簡単に話した。

本当は話してはいけないのかもしれないけど、終わった事だし、注意喚起にもなる。

それに、今回王族に対して良いイメージを持てなくなったのも原因だった。


「もちろんよ!それにしても…まるで婚約詐欺ね!」

と言ってウェンディはハーブティーを優雅に飲んだ。


「ちょ!ちょっと、不敬罪で捕まっちゃうわ!」

セシルは、クッキーを摘んだ手をぷるぷるさせた。


「ふふふっ、大丈夫よ。ここには私達しかいないもの。それにあんな我儘な王族と婚約しなくて良かったわ。私にはテッドがいるもの」

「ああ、あの約束したって言う人ね。でも、何処の誰なのか分かったの?」

「ううん、分からない……。小さい頃ちょっとしか会ってないし。テッドって名前と大人になったら絶対迎えに来るって約束した事くらいしか覚えてないの。…8年も前の約束だから、もしかしたら、もう忘れらてるかもしれない」

「うーん。レイチェルは、テッドの事が好きなの?ひとめ惚れしたとか?」

ウェンディにそう聞かれて、ふと思い出したのは…テッドではなく、テオドール殿下の顔だった。

あの時の悲しい気持ちが蘇る。自分の今の感情が分からなくなって、打ち消す為に首を振った。

「ううん…、分からない。でも忘れられないのよね」

「でも、素敵じゃなーい!絶対迎えに来るんでしょ?ああ、羨ましいわー!言われてみたーい!」

「もう!セシルは、恋愛小説の読み過ぎよ!」


「「「ふふふっ」」」

女子会は、やっぱりサイコーだ。


「あ、そうそうテオドール殿下と言えば…王都で噂になっているそうよ」

「えっ?」

ウェンディのその言葉に私の心臓がトクンと鳴った。

「ちょ!ちょっとー!ウェンディ!」

「いいじゃない。もう、関係ない人なんだし?」

「そ、そうよ!で…どんな噂なの?」

もう関係ないはずなのに、その噂が何なのか気になってウェンディを見つめた。


「あのね、最近王都の大通りを可憐な令嬢と仲睦まじく腕を組んで歩いていたんですって。もうすぐ、殿下も全寮制の王立学園に入られるでしょ?会えなくなる前にデートしてるって噂なのよ」

「そうなの……。やっぱり、お慕いしている方がいたのね。だから、白紙にしたかったんだわ」

私は、少し胸がキュッと苦しくなって俯いた。

あんな素敵な人に好きな人がいてもおかしくない。

(まるで、私が失恋してしまったみたいね)


「「………」」


しばらく黙り込んでいる私を二人は黙って見守っていたが心配になって声をかけた。

「ねぇ、レイチェル?大丈夫…?」

「あ、え?…大丈夫よ?」

ハッっと我に返った私は、二人に笑顔を向け、少し冷めてしまったお茶を飲んだ。

喉が潤ったせいか少し気持ちが落ち着いた。


「殿下だってさー、好きな人がいるなら婚約式の日取りが決まる前に、断ればよかったのよ!そうしていれば、レイチェルが傷付かずにすんだのに!」

セシルがぷんぷん怒りながらまた、クッキーをもしゃもしゃ食べる。

確かにそうだ。

「申し出から一週間後?だったかしら婚約式」

「そうなの、よっぽど急がないといけない理由があるんだと思ったのだけれど違ったみたいね」

「うーん。大人の事情だったんじゃなーい?」


ふむ……、そうか。

私は、大人の事情に巻き込まれただけ。

今さら深く考えても仕方がない。

そう思ったら何だか気が楽になった。


「大人って大変ね?」

三人は顔を見合わせてふふふっと笑った。


その後も他愛のない話をした。


「今日は、来てくれてありがとう」

帰る際、私の手作りクッキーをお土産に渡すと、とても喜んでくれた。

二人は名残り惜しそうに、

「「また来るわ」」 と言って帰って行った。


私は馬車が見えなくなるまで見送った。


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