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声知らずの君を僕は好きになる。  作者: ゴマ麦茶柱
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第1話

VRE(ブイアールアース)にようこそ」

 の表示の下にあるワールドに入るボタンに手を伸ばして押す。

(広いなぁ⋯)

 広い。自分の()()身長の小ささも相まってとても広く見える。

 軽くその場をぶらぶらと歩いていると、ちらほらとグループができてていて、それぞれが楽しそうに話していた。

(耳がぴょこぴょこ動いてる⋯)

 その中の一つのグルーブに目をやると、猫がモチーフなのか、けもみみを生やした少女や本物みたいにリアルなゴリラ、どっかのアニメで見たことあるキャラクターが立ち話をしている。その仕草はとてもリアルだ。

 笑った時に若干のけぞるような動作だったり口を押さえて笑ったり、とにかくとても人間っぽいそれだ。

 その三人グルーブに自然に近づいた。

「こんにちは⋯」

「ん、こんにちは〜」

「こんにちは」

 こちらに気づいて、二人は挨拶を返してくれて、もう一人は軽く会釈をしてくれた。

(あ⋯なんか話を⋯)

「でさ〜そいつ女だったんだよ」

「ぎゃははは、マジ?」

「クククク」

(ヤバい、会話の流れがわからない⋯)

 三人が話の続きをしだすと、次第に自分がその輸から完全に外れていることに気づいて僕は何も言わずに、ただ挨拶をしただけのようにその場を離れた。

(はぁ⋯どうしよう⋯他のワールド行こうかな⋯いや、今日はもういいや)

 メニューを開いて、ログアウトを押そうとしたその瞬間に視界の左上で何かが動いていた。それに無意識に目線を動かされると、動いていたそれは自分の方に向かってきていた。

 ログアウト画面を表示させたまま上を向くと、鮮やかなビンク色の髪をした少女がこちらを見下ろして立っていた。

 服はよくわからないけど、パーカーみたいな服で、少し長めのスカートとタイツを履いていた。一通り見た感じ、ケモノ要素も無機物(ロボット)要素もないし、恐らく人間のアバター。

 その人間アバターがこちらを無言でずっと見つめていた。

(あ⋯ああ⋯)

 無言と見下ろしのダブル圧から恐怖を感じてログアウトの確定ボタンを押そうとしたその時だった。

 むにゅ

 両頬に手が伸びてきて、そのまま僕のほっべをむにむにと触る。

(な、なに⋯これ)

 笑顔でむにゅむにゅと僕の頬をむにる少女。顔が近いわけで次第に少し恥ずかしさが出てきた。

 すると、ログアウト確定手前でずっと止まっていた手をチラッと見られた。

 そして、僕に目線を合わせてくると頬を触っていた手を脇の辺りに移動させてそのまま持ち上げてきた。

「うわぁ!」

 足がすくんで、少し屈んでしまう。もちろん足は地面に着いている。けれど、目で見てる景色は抱えられて持ち上げられているのだ。

 それを理解し体勢を立て直しながらゆっくりと少女の方を見ると、首を傾げていた。

(こ、こここ⋯)

「こんにち⋯は⋯」

 ビビりまくりながら言葉を発すると、少女は傾げていた首を元に戻してニコッとして頷いてくれた。

(何この人⋯)

 僕をゆっくりとその場に下ろしてくれると、床に体育座りで座ってまたこちらを見つめて、時よりニコッとする。

 そして、その時気付いた。この少女、いやこの人は体全体をVREに反映していると。

 通常、頭と両手しかVR内には反映されないが、専用の機械を使えば腕や足といった部分もVRに反映させることができる。

 でも、はっきり言って、その機能はVRを使うにあたって必須ではない。けど、この人はそれを使っている。つまり、ガチ勢だ。

「ぜ、全身反映(フルトラッキング)させてるんですね⋯」

 会話に詰まって、そのまま無言で見つめ合うのが目に見えてわかったので会話を繋げようとする。

 すると、少女はコクコクと頷いて右手でピースして見せた。

(なんで喋らないんだろう⋯)

 でも、少女の身振り手振りが可愛くて別に喋ってなくても全然気にならない。

 すると、少女は立ち上がってその場で倒立して見せた。

 転ぶことなく一回転してみせると、こちらに両手でビースしてくる。

「す、すごい⋯!」

 普通にすごい。VREのシステムじゃなくて実際に自分の体で回転したのだ。

 褒めると、目をキラキラと輝かせてこちらに近づいてしゃがみ、頭を撫でてきた。

(スキンシップがすごいなぁ⋯)

 アバターとはいえ、女の子に頭を撫でられたり頬を揉まれたりしたなんて少なくとも今まで生きてきた僕の記憶にない。恥ずかしいけど、少女の可愛さを堪能していたく思った。

 というか、別に撫でられなくても揉まれなくても、この少女は可愛い。

 仕草の一つ一つが可愛らしいのだ。時折見せる笑顔も最初は恐怖だったけど、だんだんそれも薄れてきている。喋らないのは謎だけど。

 少女がちょいちょいと右を指差すといつの間にか扉ができていた。

 別のワールドに飛ぶための扉。基本、誰かと一緒にワールドを移動したい時に一時的に作る扉だ。

「あ、い、行きますか?」

 少女はそのまま扉を開けて走っていってしまった。

(扉作ったってことは僕が着いて行っても良いやつだよね)

 僕もその扉に向かって走り出した。




 結局、散々遊んで怖い人ではないことを知り、僕が眠いからとその日は解散した。

 翌日、スマホに届いた通知を見るとあの少女からフレンド申請が届いていた。

 彼女の名前は『YuNoMi!』。

 声知らずの友達ができたのだ。

こんにちは。ゴマ麦茶柱です。

最近、とあるものの影響をうけたのでVR系の小説を書きます。

恐らく1、2万字で完結予定なので、最後まで是非読んでいただけたら幸いです。

では、また今度。

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