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「今日もサイゼリアに行く?」とみゆにひとみが聞くと、みゆの周りに女子がいっぱい集まった。

「ねえ私たちも一緒に行っていい?」

 あかりが声をかけた。

「いいよ、ねえ、みゆ」

「うん」とみゆは明るい声を返した。

「俺も行きたいな」と木本の声がする。

「ダメよ、男子は」とあかりが言うと、

「そうよ、女子会なんだから」と朋子と二人でみゆの前に壁をつくった。

 みゆは木本にごめんねと手で誤った。

 木本はその姿を見た途端デレーとした顔になった。

 何、何とあかりと朋子が振り返った。

 何かしたとひとみに聞く。

 ひとみはポカーンと口を開けて立っている。

 ああ、何か口に入れてよ。おなかペコペコだから。

 みゆは勝手にひとみにアフレコしていた。

 ひとみの頭の中にはもうサイゼリアのメニューしか映っていないのだろう。

「しょうがないな。男子は帰るさ」と木本が言う。

「フン。男子」とあかりは木本ににらみをきかす。

木本はカバンを手に教室の外に出ていく。

「ねえ、私たちも行ってもいい」と女子が次々に声をかけてきた。

 気が付くと8人になっていた。

 サイゼリアでは4人、4人に分かれて座ることになった。

 当然、みゆの隣はひとみで、その前にあかり、朋子。

 通路を挟んで座っている4人もいわゆるキラキラ組のメンバーのようである。

 さゆきと佳林は最初からキラキラ組にいたメンバーだ。

 みゆはキラキラ組の動向は最初から気にかけていた。

 これもいじめにあってきたからなのだろう。

 常に敏感に観察をしていた。

 あとの二人は途中からつるむようになった気がする。

「自己紹介してあげて」とあかりが言うと、隣の席の女子が一人一人挨拶を始めた。

「私は愛香」と小柄な女の子が言うと、

「ごめん、私、ドリンクバーに行く」とひとみが立ち上がる。

「じゃあ、私たちも行きましょう」と朋子。

「私は瑠々」と自己紹介を始めるや、ひとみは一目散にドリンクバーに向かった。

「ジュース、ジュース」とひとみは声をあげ、鼻歌を歌いながらドリンクを注ぐ。

「ひとみはあんな子だからよろしくね」とみゆ。

 実際誰が頂点に君臨してるのかは分からないが、キラキラ組もちょくちょくメンバーが入れ替わっている気がしていた。

 最初の頃いたはずの女の子が今ではクラスの別の友達と仲良くしている。

 順位があるとするなら、椅子の並び通りなのだろうか。

 だとしたら、1位あかり。2位朋子。3位さゆき。4位佳林、5位愛香、6位瑠々ということになる。

 どちらにしても目の前の二人の機嫌を損ねないようにしないととみゆは思っていた。

 キラキラ組から途中で抜けた女の子、少し心配である。

 なぜ抜けたのか分からないが、そこから始まるいじめというものがあると知っているからだ。

 しかしそこに首を突っ込んでいけるほど、みゆは勇気がない。

 万が一そういう展開を目にしたとしても静観するだけだろう。

 キラキラ組との接触は喜ばしくもありつつ、危険と隣り合わせでもあった。

 みゆはみんながドリンクバーでドリンクを注いでいるのを見ながら、最後にコーヒーをとりに行った。

 ひとみは相変わらずいっぱい飲み物を手にテーブルに戻ってきた。

「それ一人で飲むの?」と朋子。

「えっ、少ないかな?」

「いや、逆、逆…」とあかりは笑い始めた。

 誰もがひとみの大食いを目の当たりにすると驚いている。

「足利さん、すごい食欲ね」とあかり。

「そうかな?」

ひとみのテーブルの前だけ皿がいっぱい山積みになっている。

「だって私、お皿のせいであなたの顔が見えないよ」

「細いのにどこに消えてるの」と朋子。

「すごい、すごい」と横の席からも声が上がる。

みんな、ひとみの食いっぷりに感心していた。

 そんなひとみを見ながら、みゆはこう思った。

 ひとみってすごいでしょ。

 私の自慢なのよ。

 食べてるだけで人を感動させられるなんて、クラスの中できっとひとみくらいよ。

 横を見ると、ひとみはチーズケーキを一口で飲み込んだ。そしてメロンジュースで流し込む。

「味混ざらない?」とあかり。

「普通でしょ、メロンチーズ味」

 その日はそれで解散になった。

「ごめん、私少し酔ったかも…」とあかりが言う。

「私も…」と朋子。

「気持ち悪くなっちゃった」

「なんで?」とひとみ。

「見てるだけでおなかいっぱいって言うか。むかむかする」とあかり。

 それは未知との遭遇なのだろう。

 感情移入し過ぎたに違いない。

 自分が食べたわけじゃないのに、自分で食べたように脳が錯覚したのかもしれない。

「明日、学校で会いましょ」とキラキラ組は帰っていった。


 ひとみはまだ食べ足りないのか。

 さらに注文した。

 みゆはひとみの前に移動して座り、じっとひとみを眺めていた。

「何?クリームでもついてる?」とひとみは口の周りをナプキンで拭った。

「そうじゃないよ、ずっと眺めてられるなって思って」

「そう?みゆも食べたらいいのに」

「いいの。私はひとみでおなかいっぱいだから」

「そう…、じゃあ、もう少し付き合ってね」

「いいよ。やっと二人っきりになれたしね」

「そう言えば今日はいっぱい人がいたな。みゆの誕生日かなんか?」

「違うよ」

「そうか、みゆのファンだっけ、みんな。ファンミーティングってやつだ」

「そうだね」

「みゆは楽しかった?」

「うん。みんながひとみの大食いに驚いてるのが最高に楽しかった」

「ふうーん…、ただ食事してるだけなのにね」

 ひとみは首を傾げた。


「私、ひとみに感謝してるんだ」

「なんで…」

「白黒だった私の世界に色を付けてくれたから」

 ひとみははてなマークを頭にいっぱいつけて、みゆを見てる。

「色を失った私の世界。それにひとみは塗り絵をしてくれたんだよ」

 ひとみはさらに???という感じでひとみを見つめてる。

 結局目の前のケーキ―を一息で食べ、

「抽象的…、詩人なんだね」と言った。

「ひとみの明るさが私を明るくしてくれる。ひとみが笑えば、私も笑顔になるの?」

 フン、フンとひとみはナイフとフォークで肉を切る。

「ひとみは私の天使だよ」

「天使?」

「私をいつも癒してくれる。私を幸せで満たしてくれる」

「じゃあいつか願い事を叶えてあげなきゃね」

「いいよ、もう十分。いっぱい幸せもらったから」

「全然、記憶にございません」

「いいの、私は覚えてるんだから」

「ねえみゆ、私の背中に羽根とか見えてない」

「ごめん、見えてる」

 残念私、中2病だ。

 守護天使にしか見えないよ。

「私が守護天使?頭大丈夫?」

「うん、平気。ひとみは私の天使だよ」

「ヨ~マイエンジェル」とひとみは鼻歌を歌う。

 それは単純にひとみが照れていたからである。



気が付いている人もいるだろう。

ひとみとみゆは「東京女子流」から名前をお借りしてます。


もちろん、キラキラ組は「ジュースジュース」です。

深い意味はありません。


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