第4話 ダリ王国
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---ダリ王国関所にて---
「シュベル様、調査お疲れ様です!して、そちらのお二方はどういった方で?」
関所の兵はシュベルに尋ねた。
「おう。この人たちは、ムンク王国国王の命を受けて、世界中を旅して「悪魔の病」の完治方法を探しているダンテとサンタって言うんだ。この国にはハールバーグ大学の貴重な研究資料を拝見するために来たんだと。」
ダンテとサンタは一礼をした。
「なるほど。して、ムンク国王の許可証を見せてもらえますか?」
サンタはバッグの中から、十四年も使い続けているボロボロの通行手形を兵に見せた。
「お疲れ様です!どうぞ、ごゆっくり、ダリ王国をお楽しみくださいませ。」
ダリ王国。世界有数の研究施設が国中に存在し、城下町には世界最高学府、ハールバーグ大学がどっしりと構えている。一方で、学生が沢山いるこの国は、城下町が年中パーティーのように賑やかで、昼も夜もお酒に酔った学生が町をふらついており、大学敷地以外が賑わいを鎮めることはない。
「おうい!そこにいる、大柄の球に足二本生えているのは、サンタクロースじゃないか!」
街に入った途端、近くにあった酒場から、サンタよりはちょっと若そうな長身の男性が現れた。
「お!その声はゴーギャンじゃないか!久しぶり!卒業祝い以来か!」
二人はお互いの肩を叩きあった。
「お前よくいきていたな!!!俺たちてっきりお前がリーネシュタイン王国とともに死んじゃったものかと思ったぜ…!」
ゴーギャンの目は涙目だった。
「ああ、死の寸前で奥様に皇子を守るよう言われてね。今はこちらの若と一緒に旅をさせてもらっている。」
サンタはダンテに一礼をした。
「そうか、お前もだいぶ変わったんだな。して、今回のダリ王国訪問は?」
ゴーギャンは片手のお酒を口に運びながら、質問した。
「今、私たちは「悪魔の病」の完治方法を探して旅をしていてね、ハールバーグ大学にその手がかりがあるんじゃないかと思って。」
ゴーギャンはかつての同期に肩に手を回しながら、提案してきた。
「なら、久しぶりにレウス先生のところに寄ったらどうだ?ほら、あの病理の。俺まだ大学の解剖教室で講師として働かせてもらっているから、アポも簡単に取れるし。」
「レウス先生には是非久しぶりに会いたいものだけれど、先に国王に報告しなければ。」
そう言って、サンタはダンテの方を振り返った。
「行ってこいよサンタ。恩師なんだろ?国王への報告は俺たちでやっとくから。」
ダンテはサンタの肩にポンっと手を置いた。
「お気遣いありがとうございます!若。では後ほど。」
最後にシュベルが
「後で俺が終わったら迎えにいくから終わったら大学のミュエリス大聖堂で待っていて。」
と言ったので、ありがとうと言い、ゴーギャンとサンタは大学がある方向に向かっていった。
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「シュベル、ご苦労であった。」
白髪と長い口髭をもった国王は赤のクッションと金のメッキでできた玉座に腰をかけて、シュベルを労った。
「国王、やはりヴァレンティノ王国跡地のある一箇所にのみ、ゴブリンのハーブが群生していました。通常植物すら生えることがないカラカラの土地から、沢山のゴブリンのハーブ…。これはおそらく何者かの人工的なものかと…!」
シュベルは国王に跪いて、低く丁寧な声で、国王に訴えた。
「やはりか…。あの土地には、うちの国の薬物依存症の患者も逃亡した形跡があったから、何かあるのかと思ったが…。」
国王は頭を抱えて、ゆっくり話し始めた。
「こちらも調査をして、とんでもないことを発見した。あの滅亡したリーネシュタイン王国に、ガルダ帝国が宣戦布告する少し前、大量にゴブリンのハーブが流れていたのだ。国籍不明の裏社会の商人が、リーネシュタイン王国軍の末端の兵相手に、格安で大量に取引しているのがわかった。滅亡前のリーネシュタイン王国軍にはゴブリンのハーブが大量に蔓延っていて、実質軍の弱体化が激しかったらしい。」
「リーネシュタイン…王国…。」
ダンテの頭の中は衝撃で一杯だった。ダンテは今まで滅んでしまった故郷のことをあまり考えないようにしていたが、ここまできて、リーネシュタインの名前を聴き、そして衝撃の事実を聴かされ、動揺してしまった。
「シュベル、そちらの青年はどちらの方じゃ?」
国王はシュベルに尋ねた。
「は、すみません、名乗り出るのを忘れました、私はムンク王国から「悪魔の病」を完治させる手がかりを探して旅をしているダンテ・ライオネルと申す者です。」
国王は途端に驚いた表情をした。
「ムンク王国、ダンテ・ライオネル…、君はもしかして、あのリーネシュタイン王国の…!」