第2話 ゴブリンのハーブ
リーネシュタイン王国が陥落した日、サンタはムンク国に到着し、ダンテは国王である祖父に保護されてその戦争を無事に過ごした。しかし、リーネシュタイン王国を落としたズム王国は今や最強の軍備と財力をもっていた。祖父は、ダンテをかばっているという口実で攻められることのないよう、サンタに、ムンク国で流行している「悪魔の病」を治療する手がかりを探すという命令を出してダンテと共に旅をさせていた。
なかなか治療する手がかりをつかめないではいたものの、その間ダンテはすくすくと成長して、ダンテは14歳となっていた。
「サンタ、最後に見た街からだいぶ歩いたけど、まだ全然街が見えないね。」
ダンテは額の汗をぬぐった。
「若、昨日泊まった街はまだムンク国領地でしたが、ここはもうヴァレンティノ王国跡地です、ここには国がありませぬゆえ、街がある保証はどこにもありませぬ。」
ヴァレンティノ王国跡地。ここは名前の通り元々ヴァレンティノ王国があった場所なのだが、突然の「悪魔の病」で次々に国民が倒れ、国王自身もダリ王国に亡命するなどして、滅亡した王国の跡地なのだ。
「サンター、今日はもうここで野宿しよう。足がもう痛い。」
サンタはほとんどカラカラの大地にあぐらをかいた。
「そうですね、若。今日はもうここで休んで明日の朝にまた移動を再開しましょう。」
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街でこしらえたその日の分の食料を食べ終えると、二人は寝袋のなかに収まり、横になった。
すると突然、遠くから人影が二人、ダンテたちに近づいてくるのが見えた。
「サンタ、人だ!あそこに人がいる! 人が近くにいるってことは街も近くにあるんじゃ…!」
ダンテは寝袋から飛び起きて、遠くの人影の方に走って近づいた。
「おーい、そこの人たちー!」
ダンテは二人に手を振りながら声をかけた。しかし、二人から返事はない。
(おかしいな…。あの人たち聴こえてないのだろうか。)
ダンテはさらに二人に近づいた。そして二人の顔を見た瞬間、ダンテは驚愕した。
(なんだ…!この人たち!目が定まっていないし、口から唾液が溢れている!まるで理性を保っていないようだ!)
「うっ…うぅぅ…、く、くすり…、よ…こせ…!」
そういうと、二人はダンテに襲い掛かった。急遽、サンタがダンテをかばい、武器の大槍をブンッと振り回した。
「若!この二人、様子がおかしいです!自分の身をお守りくだされ。」
サンタがそういうと、ダンテは腰の双剣を抜き、両手で握った。
「サンタ、殺すんじゃないぞ、気絶させるだけだ。」
「了解です!」
そういうと、ダンテとサンタは二人に飛びかかった。
二人とも動きが鈍いせいか、ダンテとサンタは容易に二人の背後に回り、うなじにチョップをかまして、二人を気絶させた。
「この人たちはいったい…。」
ダンテがそういうと、サンタは気絶した二人の目を確認した。
「これは…。」
ダンテはそういうと静かにその瞼を閉じた。
「サンタ、これはどういうことだ?」
ダンテがそういうと、サンタはゆっくりと話を始めた。
「若、この二人はおそらく、ゴブリンのハーブをつかってのものかと。」
「なんだ、そのゴブリンのハーブとは。」
「ゴブリンのハーブとは、麻薬です。燃やすと発生する煙に、脳を刺激する物質が含まれていて、吸うとはじめはこれ以上にない快楽を覚えるのですが、中毒作用があって、一回でもうやめられなくなり、徐々に理性を失くしてひたすら薬を求める体質になるのです。」
ダンテは二人を見下ろしながら
「二人を街まで運ぼう、そこで医者に見せて治療してもらおう。」
といった。
彼らはすぐに二人を背負って街に向けて出発した。
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ダンテとサンタは夜中、辺り一面何もないカラカラの大地をひたすら歩いた。どうやら近くに街はなかったらしい。麻薬をしていた二人はどこから来たのか。ダンテは疑問に思いながらも、ひたすら歩き続けた。
「若、あちらの方角から煙が上がっています。街があるかもしれません、行きましょう。」
サンタが指差した方角にはうっすらと波の形をして登っていく煙があった。
「よし、行ってみよう。」
ダンテとサンタが煙の方に近づくと、そこには明かりはついていないが、確かにそこには何軒もの家が並んでいる街が見えた。どの家も明かりはついていないのだが…。
ダンテはとりあえず人を探しに街に入った。一見したところ外に人はいない。ついに、宿屋らしき建物を見つけたので、中にはいって、宿屋の人に医者がどこにいるのか尋ねることにした。
中に入ると、そこにはひどい悪臭が漂っていた。人はいなく、埃がまっている。ダンテはその臭さのあまり思わず鼻をつまんだ。
「サンタ、この臭いはいったい…。」
ダンテはそういって、サンタの顔を見ると、サンタが悲痛な表情をしていた。
「若…、この臭いは、ゴブリンのハーブです…! あまり吸わないでください!」
サンタは急いで白いハンカチをダンテに渡し、二人はハンカチで鼻をふさいでマスクにした。
すると奥からゾンビのように、口からよだれを垂らした4人が現れた。
「草を…、くれ…、草を…。」
ダンテとサンタは迫り来る危機に身構えた。
「クソッ。」
二人が、四人に襲い掛かった瞬間、一瞬で四人の心臓に弓矢の矢が飛んできた。
(なんだ…!)
そう思って矢が飛んできた方向を見ると、二階に続く階段の影にベレー帽をかぶり、弓を両手に持った男がいるのがわかった。
「おまえら、ここで何をしている。」
男は聴いてきた。




