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暴き出されるもの

「遊間! ゴメン、待たせたかな?」


「ううん、俺も今来たとこだから」


遊間の高校の屋上で、僕達は待ち合わせをしていた。


近辺の高校同士の交流会で、僕は遊間の学校へ来ていた。


「遊間の学校、やっぱりスゴイね。キレイで大きくて、僕の所なんて比べ物にならない」


「まあその分、お金かかるけどね」


「でも遊間もスゴイよね。1年の時から生徒会長なんて」


ココに来て分かったことだけど、遊間はこのエリート校の中でも、カリスマ的存在だった。


廊下を歩けば、生徒どころか先生達まで頭を下げてくる。


彼が何か言えば、それは必ず実行される。


ちょっと宗教っぽいところと、…ボクに似ているところが苦手に思えたけど、やっぱりスゴイ。



「周りにおだてられてなっただけだよ。陽日だって、頑張ればウチの学校に来れたんじゃない?」


「そっ…んなワケ、ないよ。確かに目指したことはあったけど、無理だって分かったし」


3年前には、確かに僕はこの学校を目指して頑張っていた。


ボクだったら、きっと余裕で合格したんだろうな。


僕と違って頭も良いし、要領が良いから…。


「そっかな? 俺、陽日って、特別だと思うよ?」


笑顔を浮かべながらも、遊間の目は真剣だ。


「そんなことないよ! 僕は普通の高校生だし」


…そう、僕は『普通』だ。


『特別』なのは、ボクの方なんだから…。


「遊間の方こそ、特別じゃない? すっごいカリスマ性持ってるし、優秀者だってウワサだよ?」


「俺なんて小物だよ。俺なんかより、すっごい人、知ってるし」


「へぇ。遊間よりもスゴイ人って、どんな人?」


「う~ん。そうだねぇ」


遊間は沈みゆく夕日を見つめて、眼を細めた。


「俺も大概のことは難なくこなせるから、ある程度、自信過剰だったんだよね。でも3年前、俺よりすっごい人を見つけちゃってさ」


3年前…!


イヤな言葉に、心臓がギリッと痛んだ。


「そっそう…」


「俺はさ、人に命じなければ動かせないけど、その人は命じなくても人を動かせたんだ」


「…スゴイね」


「うん。その人がいるだけで、周りの雰囲気とか違っててさ。同じ人間だなんて思えないぐらい、スゴイ人」


遊間はうっとりと、夢見るように語る。


けれど僕は自分の血の気が下がっていく音が聞こえた。


「頭の回転も良いし、運動神経も抜群。何かピンチが起こったって、すぐに切り抜けられる。学生達のカリスマ的存在だったんだ」


そして遊間は熱のこもった眼で、僕を見た。


「陽日、知っているよね?」


「何…を?」


「あの人のこと。―ツキヤのことだよ」


ズキッ!


心臓が悲鳴をあげた。


やっぱり、遊間は月夜のっ…!


「ねぇ、彼はどこ?」


遊間はいきなり僕の両肩を掴んできた。


「3年も調べたんだ。そしたらキミが月夜ともっとも近しい人物だってことが分かったんだ」


「じゃあ…あの事件は…」


「うん、僕が起こしたことだよ。彼と、会う為にね」


あっさりと認めた遊間。


僕は目の前が真っ暗になる。


「月夜と会う為だけに、あんな事件を起こしたのか!」


僕は遊間の手を振り払い、後ろに下がった。


「そうだよ。そうでもしなきゃ、彼に会えないじゃないか」


遊間はそれが当たり前だと言うような顔をした。


「あの事件の後、話していた相手、ツキヤでしょ? 彼を呼び出してよ」


「冗談っ…! 僕は月夜をもう二度と表に出さないことを条件に、表の世に出てきたんだ! アイツの好き勝手にはもう二度とさせない!」


「ヒドイ言い様だね。そもそも3年前の事件、ツキヤが動いたのは、キミのせいだって聞いたけど?」


「なっ!」


どこでそれをっ!


…遊間はどこまで知っている?


「まっ、俺が知っているのは、キミが中学時代、イジメられていたことだけどね」


「あっ…」


遊間はニヤッと笑った。


「陽日は控え目ながらも優等生だったんだよね? でもそれを気に喰わない連中から、ひどいイジメを受けてたんだ。ご家族はそれを知って、キミを庇うどころか、逆に情け無いヤツだって、切り捨てたんだろう?」


「あっ…ああっ!」


眼を閉じると、次々と思い出してしまう。


…中学時代、入学したての頃はまだ良かった。


でも2年になると、周囲の態度は冷ややかなものになっていった。


僕の家族はみんなエリートの道を進んでいた。


だから僕も僕なりに一生懸命に頑張ってきた。


でも…。


頑張れば頑張るほど、友達は冷たくなっていく。


頑張っているのに、家族は認めてくれない。


そして…ボクが現れた。


僕を守る為に現れたのだと言って、ボクは…。



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