疑問
僕は2人を見送った後、自分の部屋に戻った。
するとボクがイヤな笑みを浮かべながら、ベッドに座っていた。
「…今の話、聞いてたんだろ?」
「ああ、もちろん。こんな近くで話されちゃ、イヤでも耳に入るさ」
足を組み、頬杖を付いて、僕を見つめる。
「―で、オレに聞きたいことがあるんじゃないのか?」
「無いな。あの事件、僕達は無関係だ。それは違いない」
「ハッキリ言うなぁ。何か根拠でもあるのか?」
「お前が動けば、僕は分かる!」
「ははっ。なるほど。そりゃ道理だ」
ボクは楽しそうに笑い、手を叩いた。
「まっ、その強気に敬意を表して、教えてやるよ」
笑いを引っ込めると、ボクは立ち上がった。
「オレは動いていない。だから事件にも関係無い。だが…模倣犯だなんて笑わせるな」
急に眼に野生的な光が宿った。
その眼を見て、不安が胸に広がる。
「オレがしたことをマネるなんて、ふざけたヤツが出てきたもんだ」
「それはっ…! しょうがないだろう? 3年前、あんなに世間が騒いだんだし…」
「だがオレが動いたのには、訳があった」
ボクは僕に向かって歩き出す。
そしてすぐ目の前で立ち止まり、真剣な表情で見つめてくる。
思わず心が揺れ動く。
「オレはお前の為に動いた」
スッと両手が上がり、僕の顔を包み込む。
「…っ!?」
びくっと体が竦む。
冷たくも優しく触れてくるこの手を、僕は振り払えない…!
「お前を傷付ける全てのモノを消す為だけに、オレは動いたんだ」
「でもっ、あんな結末、僕はっ…!」
「分かってる。オレは少しやり過ぎたな」
ボクは深くため息を吐き、僕を抱き締めてきた。
「あっ…」
「お前を守る為だったのに、お前を傷付けてしまったことだけが、唯一悔やむことだ。だから今回は動いていない。お前の為にならないことなんて、オレは絶対いしないからな」
その言葉は…イヤというほど、心に染みる。
「じゃあ…心当たりは?」
「うん…。希更という刑事はオレの信奉者だとか言っていたが、オレはそんなヤツを側に置いたつもりはない。少なくとも、模倣犯なんてことは絶対にさせない」
「じゃあ…お前も知らないヤツ?」
「多分、な。でも気に入らないなら、オレが探し出して、消してやろうか?」
途端にニヤッといつものイヤな笑顔を浮かべる。
「なっ!」
「それがお前の為になるというなら、オレは動くぜ?」
「結構だ! 僕に何かあったワケでもあるまいし!」
ボクの腕を振り払い、ベッドに座った。
「とにかく、お前が動いていないならそれで良い! …このまま大人しくしててくれ」
「ああ、良いさ。それがお前の望みならな。だが…」
不意に険しい顔になったボクは、僕の耳元に口を寄せた。
「お前に万が一のことがあれば、オレはお前の許可無しでも動く。それは分かってんだろう?」
「…ああ、分かっているよ」
ボクは僕の為にしか動かない。
僕がそう願ったから…。




