光の名を持つモノ
「希…更さん」
ぼやけた視界に映るのは、希更さんの戸惑った表情だった。
「ハルくん、なのね? コレは一体、どうしたの?」
「あっ、月夜が…」
「月夜くんが出てきたの?」
びっくりする希更さんを見ながら、僕は軽く頭を振った。
「ええ、僕を助ける為に…。どうやら例の事件の首謀者は、遊間だったようです」
「やっぱり、か…」
重々しい声で現れたのは、門馬さんだった。
「門馬さん…。気付いていたんですか?」
「何となく、刑事の勘でな。前々から怪しいとは思っていたんだが…」
「…その口ぶりだと、彼が怪しいと分かっていて、あえて僕と接触させてたってことですかね」
「えっ、それは…」
口ごもる希更さんの様子を見て、僕は確信した。
やっぱり…エサとされていたか。
「良いです。何も言わなくて」
「ハルくん…」
「事件があの日以来、ピタッと止まれば、怪しまれるのも当然ですもんね」
遊間はあの日、僕と月夜が話しているのを聞いて、確信したんだろう。
僕と月夜がまだ、切れていないことを。
だから事件を起こさなくなった。
目的は達成されたから。
「…月夜くんの方は?」
門馬さんが不安そうに僕を見る。
月夜の怒りの恐ろしさは、門馬さんでさえおびえさせる。
「今、引かせました。大分興奮していますが、僕の言うことを聞いてくれましたから」
「そうか…」
安堵する門馬さんと希更さんの姿を見て、僕は複雑な思いにかられる。
結局…事件解決の為に、僕は遊間と共に泳がされた。
けれどここで怒りを出せば、また月夜が暴れてしまう…!
胸元を押さえながらも、僕は落ちたケータイを拾った。
「…じゃあ、僕は帰りますね」
「あっ、送って行くわ!」
「いえ、結構です。僕のことより、彼等のことをお願いします」
僕は2人に遊間達のことを頼み、学校から出た。




