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第4話 ノアの魔獣使い

2019/09/10執筆



森を抜けて1時間足らずでノアの街に着いた。その後、アドロブドゥールに向かうための準備をした。

旅には食料の確保と移動の脚、それに用心棒の確保が必要なのだ。


そのうちの食料の確保を行い、預かり屋に冷蔵保存してもらった。


「…あとは馬車の予約と用心棒を雇わなきゃな」


「そうですね。アドロブドゥールまで馬車で約20日かかりますしね。」


「食料はちょくちょく補充するにしても用心棒は出来れば手練れがいいな」


「たしかに山賊とか怖いですもんね」


「……そうだな」


山賊とか出てきた時ルルが闘うとなると逆に足手まといになるからな。

だから少しお金がかかったとしても強い冒険者を雇ってルルが戦闘するシチュエーションをなるべく0にしなければならない。


「とりあえずこういう時は馬車の方での契約冒険者だろうけど別件で依頼を出そう。だいたい2日あれば誰かが受けてくれるだろう」


「え?明日出発じゃないんですか?」


「流石にずっと森の中で過ごしてたんだし2日くらい休もうぜ?」


「たしかに……そうですね!」


「それに…ルル。この街はグルメの街なんだぜ?楽しまなきゃ損だろ?」


「………っ!!」


「ま、とりあえず宿を取って荷物を置いたらちょっと遊びに行こうぜ」


「はいっ!!レイスさんの考え最高ですっ!!」


冒険者ギルドに用心棒の件を依頼し、馬車の予約を行なって宿屋に行った。


「2部屋ですね!分かりました」


「……?え?一緒に泊まるんじゃないんですか?」


「…………。」


こいつの頭は何かが抜けてるのでしょうか?

男女が同じ部屋に泊まるなんて普通なら警戒するもんなんだがな。


「……男女が別々なんて普通だろ」


「でもずっと同じ場所で寝てたじゃないですか?」


「危険だったからな。森の中だし」


「お金だってレイスさんばっかり出して……」


「いや、俺はお金めっちゃ貰ってたから別にいいけどさ……」


「それにレイスさんと一緒の部屋でも私なんともないですし。」


こいつさらっと失礼なこと言ってるな?


「とりあえず宿を別々にするのは俺が落ち着かないからだよ」


「あっ、もしかして私の魅力に我慢できず?ぷぷーっ!レイスさんのエッチ!」


「あ、すいません。やっぱり泊まるの1人で大丈夫なので一部屋で……」


「すいませんすいませんっ!!調子に乗りました!!」


「……ったく。」


宿を取り冒険者ギルドの近くにある酒場に来た。


「ん〜っ!!この唐揚げジューシーっ!!」


「………。」


「あ、店員さん!ビールおかわりお願いしまーすっ!!」


「あの……ルルさん?」


「あれれー?レイスさん食べないんれしゅか?私食べちゃいますよー?」


「いやいやいや……」


「…っ!このお魚も絶品で口の中でホロリとくじゅれます〜っ!!」


「おいルル、まじでちょっとまっ……」


「店員さんビールまだですかー!!」


「………。」


「…ふぅ……。しあわせ………っ。」


頬を赤らめながら目は虚になってふぅっと息を吐く。


レイスは料理の横にあるオーダー表の束を見て唖然とする。アローズの森の時からよく食べ、食べ物を生きがいにしていることは知っていたがまさか人の金でここまで図々しく頼むとは思っていなかった。



「人のお金で食べる食事ってこんなにも美味しんですね」


「………はぁ。」


……まじでないわー。

ぶん殴ってやろうかな?


「…ご飯の時は笑顔れすよ?レイスさんなんかぶちゃいくになってますよ?ウフフフ……」


「………。」


「あ、ガーリックバターライスお願いしまーすっ!!」


よし!明日殺そう。

起床とともにぶっ殺してやる!


「………人と食べるのって楽しいですね」


「んあ?」


「私、レイスさんと出会えて良かったです!」


「………はいはい、食わねえなら俺が食うぞ」


「……っ!だめですよ!私のです!」


「ははっ、食い意地ばっかだな」


「ふふっ、それって褒め言葉ですか?」


とりあえず今のは少し嬉しかったし少しは許してやるか。


次の日の朝。


「きゃぁあああああっ!!!!」


宿屋中に響き渡ったのはルルの叫び声であった。


「……レイスさんひどいです」


「……なんのことですかい?」


「なんで私のベッドに虫のおもちゃをたくさん置いてたんですか!!」


「ははっ、虫嫌いだもんなルルは」


「ははっ…じゃないですよ!……あれ?」


「あ〜、腹がいてぇ。」


「……もしかしてレイスさん、私の部屋に入りました?」


「……え?そりゃ、お前が酔いつぶれて眠ったから仕方なく………」


「変態っ!アホ!バカ!痴漢!犯罪者!」


「ちょっ……モノを投げん……」


「最低です!!変態さんです!!」


「…いや悪かったよ!謝るから!今夜も奢ってやるから!」


「ほ、ほんとですか!?約束ですよ?」


………チョロい。


っていうかこいつは本当にヤバい。

俺じゃなく本当の変態が相手だったらどうなってたか。


酔っ払うことによって過度なスキンシップが目立ち、スタイルもいいし何よりおっぱいが大きい。

それに反し色々と無防備だ。

………世話がやけるなぁ。




そんなことを考えた日の夜のことであった。


「なぁ、あんたらがアドロブドゥールまでの護衛依頼したレイスさんかい?」


居酒屋でルルの食べっぷりに呆れてた時、1人の男が声をかけてきた。


「護衛の依頼、受けにきたぜ!」


「1人……ですか?」


「あれー?レイスしゃんその人誰れすかー?」


「ルルは黙ってて」


「うぅー。ひろいれす。こうなったらヤケ飲みだ!ビール追加お願いしまーすっ!」


「……いい食べ飲みっぷりだな」


「あー、このアホは無視してください」


「られがあほれすか!」


「貴方はパーティーに入ってるんですか?」


「うんにゃ?基本俺はソロだぜ?」


「……申し訳無いんですけど貴方は条件には……」


「いや、まてまてまて!分かってる!条件がベテランってことは戦力がいるってことだろ?」


「まぁ、そうですけど」


「戦力なら俺1人で十分だと思うぜ?」


「いえ、1人では………」


「まぁまぁまぁ!言いたいことはわかるが俺の話も聞いてくれよ。」


「はぁ」


「ということで俺も一緒に飯食っていいか?」


「いや、何勝手に……」


「いいですよー?」


「へへっ、悪いね」


「大人数で食べた方が美味しいですもんねー!」


「ねーっ!」


……勝手な奴らだな。


どうして俺が会うのはこう変な奴ばっかなんだ?


「はぁ!?報酬はいらない!?」


「正確には飯さえあればいいってことだよ」


「いや、それだけじゃなくて馬車も要らないってどういう……」


「俺が用意できるからだ」


……何が目的だ?

こんなの俺らに好条件すぎて怖い。


「で、でもどのみち俺ら2人で山賊やモンスターの群れにあったら3人じゃ負担が大きいしルルが戦いに参戦することになる」


「……?なんだ?この女の子戦闘できないの?」


「れきますよー!」


「たしかに相手を回復させたり怒らせたりはできるよな」


「ひどいっ!」


「まぁ、冗談抜きでルルは魔力のコントロールが不安定でモンスターを引き寄せたりするから普通の冒険者だときついと思うんだ。」


「それで?」


「ローテーションで護衛してもらいながらじゃ無いと……」


「それも別に問題ねえ」


「………どういうこと?」


ここまで言い切れるには理由があるはずだ。

一度聞いてみよう。


「俺は魔獣使いなんだ。」


「………は?」


予想よりも酷い回答に開いた口が塞がらなかった。


魔獣使い。

格差社会であるこの世界では地位が高い者と低い者では扱いが違う。それは魔物も例外ではなく、上の者に従う本能がある。

それを利用して血の契約で主人に従わせる冒険者の職業のひとつ。


珍しいものの確かに便利な能力だが少ない理由はひとつ。

持続的に魔力を契約として与える為主人の身体精神共に疲労が激しいのだ。


基本その人の魔力にもよるが多くても5匹が限度。それだと頭数がだいぶ少ない。


「……ま、そういう反応だよな普通は」


「……いや、すみませんがやっぱり……」


「俺は今1000匹以上の魔獣と契約している」


「…っ!?」


「しかも俺は契約してる魔獣を召喚できるからいつでも対応が効く」


その話が本当だとするとこれは問題だ。


そんな冒険者がいるなんて知られれば魔王クラスの、いや、それを従えてるとすればそれ以上の戦力。


国をも潰せるレベルの戦闘力が一ギルドに所属するなんてまずはおかしい。


「……何が目的だ」


「ちょっ、なんでそんな殺気を出すの!?」


「……そんな化け物が一体何のために俺らに近づいた!」


「んー、何から説明すればいいか……。とりあえず俺はお前らに危害を加える気はない」


たしかにそれならいつでもできたな。


わざわざ声をかけたってことは何かあるってことなのか?


「……わかった。とりあえず信じるよ」


ルルは酔って机によだれを垂らしてだらしなく寝ていた。


「本当こいつは……」


「あー、ごめんけどこの子には眠ってもらった」


「え?」


「ちょっと今から説明するのは依頼の説明と、何故俺が君に声をかけたか」


「いや、どうやって……」


「俺の指を見て見な?」


男の指を見るとスリスリと自分の頬を指でこすっていた妖精のようなものがいた。


「サキュバスのキーちゃんだ。この子の能力で眠らせたんだ」


「………俺だけに話があるって?」


「うん。君は未来では僕達のリーダーだからね」


「は?何のリーダーなんですか?」


「まずこの規格外な力で気づいて欲しいんだけど………思い当たる節はない?」


「…………まさか……魔王………?それだと魔物を従えてる理由も納得する……。」


「………レイスくんって意外とお馬鹿さんなのかな?」


「……おい」


「それだと君は未来では大魔王になっちゃうよ?」


「あー……。」


「まぁここまで焦らすのもなんだし答えを言っちゃうね。」


「最初からそうしてください」


そういうと苦笑いをして男は真剣な表情で言った。


「俺の名前は田辺涼介たなべりょうすけ。5年前にこの世界にやってきた勇者だ」


「………はぁ!?」


「この依頼を受けた理由は君とのつながりを作るためなんだ。だから報酬は受け取る必要は無いんだ」


「ちょっ…待ってください!なんで俺が勇者の1人だとわかったんですか?」


「今勇者はこの世界に8人いるんだ。」


「なんでそんなことわかる……」


「そのうち1人が透視の勇者でね。予知してくれたんだよ」


「………たしか勇者の力は負の感情から生まれる力ですよね?では貴方は?魔力のない貴方が魔獣使いなわけないですよね?」


「鋭いね。…俺は……支配の勇者。魔物を奴隷にする能力だよ」


「……なっ!?」


「まぁ、俺は仲間だと思ってるんだけど女神に説明を受けた時はちょっと怖かったよ。心が変わりそうで」


「………そうですか」


「君の現状は透視の勇者に聞いて知っている。レイス君、きみは勇者の力を使いこなしてないしよくわかってないんじゃ無いか?」


「はい、ボロス様に聞いた程度です。」


「勇者の力は引き継ぐことができることも知ってるだろ?」


「……そういえばボロス様は小春さんの心眼の能力を扱えたな」


「………そういうことも含めて話すがショックを受けることもたくさんあるだろう。だが俺は女神の意思を、そしてこの世界を救うためにレイスくんに言わなければならない。聞いてくれるか?」


「…………はい!」

次回

第5話 勇者の力

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