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第3話 ポンコツ魔法使いルル

2019/09/03執筆




「ふふっ、可愛いなぁ」


たしかにスライムは特別な個体や集団で行動しない限りゲーム同様ザコキャラでペットとしても飼うこともあるほど可愛いと人気なのである。


が、俺レイスにとっては初めて見た人殺しがスライムだったわけであまりいい思い出はないのだ。


久しぶりに人を見つけたから声をかけようとしたけどこんな頭がぶっ飛んでるやつに関わるのはごめんだ。さっさと立ち去ろう。


「………スライムだからスラちゃんね!」


「ぶっ!」


立ち去ろうとした瞬間、彼女のネーミングセンスに吹き出してしまうレイス。


「え?誰?」


「あっ、いやぁ……」


スライムと話していた少女は後ろに振り向きながら聞く。


黒い長い髪に紺色の瞳、太過ぎず細過ぎない身体は俺の知る限り上位にいくだろう。特に胸部にある2つのたわわは男心をくすぐる。


しかしコスプレイヤーの如く魔女の格好をして厨二病感を漂わせており先ほどの言動もあり関わり合いにはなりたくなかった。


「さっきからジロジロなんですか?変態ですか?」


「ちょっと待て!誤解だ!」


「さっきからおっぱいばっかり見てるじゃないですか!!」


「馬鹿野郎!おっぱいばっかり見てるか!他にも見てるわ!!」


「……ふぇ…?」


……あれ?ちょっとまった。

何か間違えたな。


「おっぱ……じゃなくて…えーっと……」


「………何かいうことありますよね?」


じーっと人を蔑むような目で見る彼女。

レイスは観念して彼女にこう言った。


「……おっぱいばっかり見てたがなんだ?文句あるか!?」


「な、なんで開き直ってるんですか!?そこは普通謝るんじゃないですか!?」


「知るか!そんな服着てるからだ!!そんなに胸を見られたくなきゃ貧乳にでもなるんだな!!」


「ひ、ひどいです…。私結構気にしてるのに……。」


「いっ!?」


彼女はそう呟くと目からポロリポロリと涙を流した。


「ちょっ!?俺が悪かった!なんでも言うこと聞いてやるから泣き止めっ!な?」


「ほ、本当ですか?……ぐずっ……」


「あ、あぁ。」


女の涙に弱いレイスはその場を鎮めるためにそう言った。


「なら私と友達になってください……」


「……は?そんなことでいいの?」


「はい。……ダメ……ですか?」


「……別にそれなら問題無いけど……」


「ほんと!?やったーっ!!」


……ここまで喜ばれると照れる。

それにしてもなんで今出会った人と友達になって欲しいんだ?


「もしかして友達1人もいないの?なーんちゃっ…………」


「なんで知ってるんですか!?まさかストーカーッ!?」


「……まじかー」


まぁ、わかるよ?

こんな中二病みたいなやつ友達になりたくもないよな普通。

普通の人なら避ける。


「私、魔法の成績悪かったんです。いつも最低ランクの評価ばかり。回復魔法しか使えません。」


「え?回復魔法?」


「そしたらみんな少しずつ私を避け始めひとりぼっちになりました。」


「は?なんで?」


「だんだん寂しくなって私は動物や魔物にまで話しかけました。それでもみんな逃げるか襲ってくるだけ」


「まてまてまて……」


「挙げ句の果てに『もう…悪魔が友達でもいいかな……』と自暴自棄になって悪魔召喚の魔法陣を発動した結果不発」


「いや、まじで待っ……」


「家族も知り合いもいない私は孤独でした。金で友達の関係を築いた時もありました。でも最後には必ず独りに………」


「待って!わかった!分かったから!友達になろう!!」


「はいっ!」


……ここまでくると可哀想になってくる。

俺が思った以上に残念な女の子だ。


「それにしても回復魔法はすごいな。」


「え?」


「回復魔法はたしか魔法5原素のうち火、風、土属性の合成だろ?そんなすごい素質の持ち主なのにどうして成績悪かったんだ?」


「私魔力のコントロールが全然ダメで回復魔法以外発動すらしないんです。魔法訓練学校では最下位でした!」


「訓練学校出身か!ということはお前もアドロブドゥール魔法学校に受験するってこと?」


「はい」


訓練学校とは。

魔法学の基礎、少しの応用のほか、魔法以外の実技や知識を専門分野ごとに学ぶ場である。


元いた世界で言うと訓練学校が小学校、魔法学校がそれ以降の学校というようなものである。


つまりは俺みたいな例外以外でいう義務教育である。


「なるほどな。とりあえず魔法知識を少しかじってはいるんだな」


「はい、魔法専攻でしたので」


「そういえば名乗ってなかったな。俺の名前はレイス!よろしくな!」


「私はルル=セルディア=オダルーカスと申します。よろしくお願いします、レイスさん!」



こうしてレイスとルルは出会った。


後にレイスとルル、その他の人達によって王国規模での大事件を引き起こすことになろうとはこの時誰も知る由がない。


「ところでなんでこんなとこにいたんだ?」


「な、なんでですか?」


「ここ広くて迷いやすいから。迷いの森って言われてるから普通1人で行動しないのが常識……」


「ぎくっ!」


「まさか迷って……」


「……違うんです!私は悪くないんです!」


「はぁ?」


「休憩中に馬車が私を置いていったんです!ちょっと離れてる隙に……」


「へぇ……」


どうせ休憩中に何かしらの動物に気を引かれて離れて迷子になったか居眠りでもしたんだろ。嘘ついてるな。


だってめっちゃ目泳いでるもん。


「…何か失礼なこと考えてませんか?」


「いえ、全くそんなことは……」


「そんなことよりレイスさんこそなんで1人で?あっ、まさかレイスさんも人のこと言えないんじゃないんですかぁ?」


不敵に笑うルルはフフンとドヤ顔になる。


「どうなんですか?人のこと言えるんですか?」


「…俺は…別に……」


「あれれ〜?言いにくいことですか?なんです……」


「俺はこの森アローズ地方の出身なんだよ!」


「へ…?」


「……流石にあんなドヤ顔されたらいいづらかったんだけどな」


「……す、すいません」


「ははっ、別にいいけどさ。はたから見るとルルってアホだよな」


「あ…あほってなんですか!!」


「はいはい。それじゃいくぞ」


「え?どこへ?」


「………。うん、ならルルはそのまま森をさまよっていたら?俺は先に行くから」


「あぁ!ごめんなさい!ひとりにしないで!」


「やっぱりアホだな」


「アホって言わないでくださいっ!」


そのまた数日経った昼頃、ようやくアローズの森を抜けたレイス達は1番近くの町であるノアに向かっていた。


「レイスさぁん……もう少し休憩しましょうよぉ……。」


「いや、さっき休憩したばかりだろ?体力ないなぁ」


「うぅ……」


ルルは訓練学校出身ではあるが魔法専攻だったため基礎魔法と少しの応用はするが実践経験は殆どないらしい。


他の科は少しは体育などの身体を鍛えるものが沢山あるが魔法科は比べて少なめらしい。


こうしてルルに聞いてると俺の場合は訓練学校に比べ恵まれた環境だった。


「…わかったよ。とりあえずご飯食べるか」


「わーい!!」


「切り替えはやっ……」


この数日ルルと過ごして大体のことがわかった。


ルルは本当に魔力のコントロールが不安定であった。しかも迷惑なほどに。


それは一緒に行動し始めてすぐ、ゴブリンの群れに遭遇した。


「はっ!」


レイスは次々とゴブリンの群れを剣で薙ぎ払う。ゴブリンは群れで行動することで有名だがあまりにも多過ぎる。


そんな時だった。


「レイスさん!回復魔法を使います!!」


「…いや、俺ダメージ食らってない……」


「"ヒール"!」


「……まぁ少しは体力もどるかな」


「………。」


「………。」


「どうですか?」


「……全く変わらない」


その時だった。


さっきまで死にかけていたゴブリンがむくりむくりと立ち上がる。


「……おい、まさか………」


「………いやぁ…」


「おいおいおいおい……」


「ギャギャギャギャギャっ!!!」


同時にゴブリン達が襲いかかってきた。


「くそっ!逃げるぞ!!」


「きゃぁあああっ!!!」


ルルのかけたヒールはゴブリン達にかかり致命傷だった傷は完全回復したのであった。


「はぁ…はぁ……」


「こ、怖かったよぉ……」


「…………。」じー


「っ!?」


「…………。」じー


「ちょっ!謝りますからそんな目で見ないでくださいっ!!」


その後もありえないくらいモンスターに襲われまくった。


原因はルルだ。

彼女の魔力はとても多いらしく、それがコントロールできてないことでその魔力がダダ漏れらしい。


俺には分からないが魔力に敏感な魔物には感じられるのかルルは言わば釣りでいう撒き餌と一緒だ。


あそこで俺に会わなければルルは襲われてご臨終になっていただろう。


「……どうしました?」


「いやぁ、この森での思い出を思い返してただけだよ。」


「いや、忘れましょうよ。」


「とりあえずもう休憩はいいよな。暗くなる前には町に着きたい。」


「えー……」


「……ノアには名物グランドバードの唐揚げがあるらしい。めっちゃジューシーらしいぞ」


「レイスさん早くしてください!行きますよ!」


「……ちょろい」


「……?何か言いました?」


「いや、何も言ってない」


ルルは食べ物に目がなく良く食べる。食べることが生き甲斐なのかそれをネタにすると簡単に扱いやすい。

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