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第1話 レイスと魔王ボロス

2018/11/18 執筆




転生して10年が経った。

俺はこの世界ではレイスという名前である。

今は母親のマナと父親のスレッドとの三人暮らしをしている。


この世界に生まれて5歳の頃だろうか。

前世、つまり葉山拓人の記憶が蘇った。


その時に思ったことが一つある。


それは魔法が使えない、ということだ。


これは理論的というよりも物理的に、ということである。


齢五歳にして知った現実は魔法使いになる条件。それは


魔法知識が要る、というわけである。


最初は簡単だと思ってた。異世界に来たからには魔法を使いたい、そう思った俺はこっちの両親に魔法を教えてと頼んだ。


その両親の答えはこうだった。


「魔法を教えるといっても……父さんは魔法なんて使えないんだよ?」


「まぁ、絵本とかでも出るし子供が憧れるのも分かるけど……現実的に無理かしらね…」


後から分かったことだが魔法使いになれる割合は全人類の2割程度だけで、そのほとんどの理由が知識が必要、それである。


知識なんて、と最初は思ったけど前にいた日本とはもちろん違う言語だから本なんて読めないし魔法知識を学ぶにはめちゃくちゃ高い学費を払って魔法学校に行くしかない。



はっきり言ってうちは裕福とは言えない。

というよりは村自体が農業が盛んな地域で魔法使いはおろか若者がほとんどいないぐらいのド田舎。金持ちなんて知り合いにはいなかった。


つまり魔法使いになれるは貴族で頭のいい者であり、ほとんどが魔法を使えないことから皆子供の頃には諦めて別の道を進むらしいのだ。それが世界の常識。


まぁ、それでも今の生活結構楽しいし村の人達は優しいし文句はないんだけどね。


「父さん、そろそろこのトマト食べごろじゃない?」


「おぉ、そうだな。ならピーマンとナス、あぁそれとパセリも収穫しておこう。後でお隣さんにもおすそ分けしてきなさい」


「うん!ムラさんの家にうちの野菜分けたらチーズとか貰えることから考えるにお昼はピザだね!」


「おぉ!よく分かったな!ムラさんのチーズは特別だからな!」


母さんが作る野菜たっぷりのピザは絶品だ。

ピザ生地にトマトソースをたっぷり塗ってムラさんの特性チーズをこれでもかってほど振りかける。

その上にスライスしたトマトやナスなどの野菜をいっぱいのせてまた特性チーズを被せるように覆う。あとは大釜で焼いて最後にパセリを振りかければ出来上がり。


とろっとろにとろけるチーズと新鮮な味の濃ゆい野菜、サクサクのパン生地のハーモニーは思い出すだけでヨダレが出てしまう。



「はい、レイスくん。チーズと牛乳」


「ありがとうムラさん!!こんなにたくさんもらってもいいの?」


「いいのよぉ〜っ!もうっ、レイスくん可愛いからおばちゃんサービスしちゃうのよ」


「えへへ〜!ありがとう!!」


お礼を言って帰路に戻ろうとした時であった。


「……あれ?なんか……聞こえる?」


それは悲鳴だった。


しかもそれは一つではなかった。


「魔物だぁっ!!!魔物が入って来た!!」


そう叫びながら逃げる村人達。


皆が逃げてるのは俺の家の方であった。


「レイスくんっ!?」


俺は皆とは逆の方を突っ走った。


「父さんっ!母さんっ!!」


必死で走った。

俺は前世の記憶があろうと父さんと母さんは紛れもなくこの世界では俺の両親だ!


感謝してるしなにより2人が俺は好きだ!!


2人に何かあったらと考えると最悪の状況を思い浮かべてしまう。


「くそっ!考えるなっ!」


「く、くるなぁあああっ!!!」


「……っ!?」


村のおじさんが鍬を振り回していた。


その周りにいたのは3匹のスライムだった。


俺はこの世界に来て魔物は初めて見た。


それもこの村は一応有名な農業産地という理由から国から手練れの冒険者を雇っていたらしい。


そのためか村に出たことのない俺は魔物の類は見たことがなかった。


だからこそこれも初めて見た。


「…やめっ…がごっ…………だずげっ…でっ…っ!」


人が魔物に殺されるところも。


スライス2体が体にまとわりついてもう1匹が口から体内に侵入していった。


おじさんは痙攣しながら苦しんでいたがそれがピタリと止んだ時バタンと地に倒れる。


体内から出てきたスライスはこちらに気づいたのかこちらとジリジリ近づく。


「ぁあ……くっ、来るなっ!!」


逃げるように駆け込んだのは俺の家だった。



「はぁ……はぁ……はぁっ!……な、なんだよこれ………?」


何が起きてるんだよ!?

おじさんは………殺された……んだよな!?


どうして!?

この村は冒険者の人達が守ってるれるんじゃないのかよ!!


「父さん……母さん……どこだよ……?」


いるなら返事をしてくれよ!!


「こ、怖い……怖いよ………」


殺される!!


今まで安全だったのは冒険者の人達が強かったからだ!!その人達がやられたってことは今来てる魔物は大群でやってきてるか強いか、だ!!


このままじゃ村人全員殺される!!

でも俺たちには対抗する手段は無い。


「……え?」


なんだろうこの音は?

キッチンの方から何か物音がする……!


まさか父さんと母さん!!?


「ば、化け物っ!!マナから離れろっ!!」


父さんの声!?


声を聞いた途端にキッチンへ向かう。


「父さんっ!!母さんっ!!」


「レイスっ!?」


キッチンには包丁を持つ父さんがいた。

その向こう側には母さんの髪を掴んで不敵な笑みを浮かべたゴブリンであった。


「…うぅ……離し……て……」


「キャッキャッ!ン?誰ダ?」


「……レイス……?」


「母さんっ!!」


「来るなレイスっ!!」


「で、でも……」


「………コノガキッ……何ダッ…!?」


……え?なに?

あのゴブリンこっちずっと見てるんだけど?


「……ハヤメニ…シマツスルカ!!」


そう言うとゴブリンは母さんの髪をするりと離し母さんの顔が床に落ちた瞬間こちらの方へダッシュしてきた。


「うわぁああっ!!」


持っていた棍棒をふりかざしながらこちらに凄い勢いで近づく。


あの小さな身体であの力強さはさすがは魔物と言うのだろうか。こちらに近づくたびにそれがビシビシと伝わる。


やられ……っ!!


「ぐはぁっ!!」


「え?」


突然何かに壁の方へ突き飛ばされ、目を開いたら父さんが逆方向に血だらけで倒れていた。


「父さん……俺をかばって……」


「クッ……マァイイ……。コンドコソ……カクジツニ……シトメルッ!!」


「やめなさいっ!!レイスっ!!逃げて!!」


「ハ、ハナセッ!!」


母さんはこちらに近づくゴブリンを必死に止める。


「………オマエ……ウマソウダナ。」


「え?なに……こっち来ないでっ!」


「ヒッヒッヒ。オマエミタイナ若イ女が大好物ナンダッ。イロイロ楽シンダ後骨マデクッテヤルッ!」


一歩、一歩と母さんに近づくゴブリンはニヤニヤ笑っていた。そこで初めて殺意が湧いた。


「やめろっ!!!母さんにそれ以上近づいたら俺が許さないぞっ!!!」


「ア?」


「待って!!」


「ン?」


母さんは涙を浮かべながらゴブリンに懇願する。


「わかったわ……。私を犯しても食べても構わない。でも…レイスッ……息子だけは見逃して!!」


「何言ってるの母さんっ!!?」


「……レイス逃げて……っ!」


「でも………」


「お父さんだってあなたを助けるために命を張ったのよ?私もあなたの為なら命を懸けれるの。」


「母さん…っ!」


「これでお別れになるけどあなただけは強く生きてっ!それが私達の願い。レイス、私達はあなたを愛して……」


瞬間。

母さんの首が弾け飛ぶ。目の前に転がるそれは涙を浮かべながらも笑っていた。


「レイ………ス………」


「うわぁあああああっ!!!!!」


その時、目の前が真っ暗になった。その後のことは覚えていない。


「……オモワズ殺シテシマッタ。マァイイ、ドウセコイツハ処分シナケレバ後々面倒ナコトニ……ン?」


「…………。」


「………っ!?ナンダッ!?」



思わずゴブリンは後ろに下がり距離を取る。


「何ダコノ魔力ノ異常ナ高マリハッ!?」


「………やる」


「……魔力ガ不安定ナ今ノウチ二殺スシカ……」


「……殺してやるっ!!!」


「……っ!?」



俺が次に目を覚ましたのは朝方であった。必死に逃げたのかあまり覚えてないけど村から少し離れた木の上で眠っていた。

魔物の姿は村に残っておらず村人の生き残りも居なかった。


俺は村に残っている人達に一人一人のお墓を作った。子供1人でやったためあまり見栄えがいいものでは無かったが想いは込めたつもりだ。


「父さん…母さん……村のみんな……」


俺はみんなが好きだった。


それに父さんと母さんが居なければ俺はもう死んでいた。


「俺……旅に出るよ。今はまだ子供だけどいつか魔法使いになって魔物を殲滅するために生き延びるよ」


俺は絶対に魔物を許さない。

魔法は使えなくても冒険者になれば魔道具を使う資格だって戦闘手段だって学ぶことができる。


まずは生きるために街を探すけどいつかはみんなの仇を討つよ。絶対に。


「これが……俺の生きる目的だっ!!」


レイスはそう誓って村を出た。



数日後所変わって近隣の森アローズ地。


「……人間っすね」


「……人間ですね」


……なんだ?誰?

あれ?いつのまに倒れたんだ?


だめだ。腹が減りすぎて意識が朦朧としてきた……。



数日間飲まず食わずでただ一心不乱に人のいる街を探すために歩き続けた。

レイスの身体の状態は最悪であった。


空腹と疲労により心身共に限界であった。


いつ倒れてもおかしいのに彼を限界以上に行動させた原動力は【魔物の殲滅】【生き延びる】この二つであった。



「どうしましょうか?魔王様のところへ連れて行きますか?」


「そうっすね。なんか弱ってるみたいだからその方がいいかもっす」


もしかして魔物なのか……?

弱ってるから連れてく?どこに……?


「たしかに魔王様なら……」


魔王……?

もしかしてあの魔王……?


やっぱりそういう存在いるのだろうか。


くそっ。魔物が目の前にいるというのに全く力が入らないや。


「それにしてもなんですかこの人間。衰弱してますがこの魔力は普通じゃない」


「まぁ、勇者とかそういう類っすかね?ん?それならボロス様のところに連れてくのはまずいんじゃ?」


何を言ってるんだ?

モザイクのようにかすれてしか聞こえない。



「それを決めるのは魔王様です。早く連れてきてください」


「えぇ〜!?俺が運ぶんすか?」


「当たり前じゃないですか。乙女に重いものを運ばせるなんて……」


「え?どこに乙女が……」


「ぁあっ!?」


「………よし、行きましょうか。お嬢様」


「えぇ、分かればいいわ」


………やっぱり俺は殺されるのだろうか。

もう抵抗する力もないや。


俺は意識が朦朧となる中で死を覚悟した。

感想


記念すべき第1話なのになんかシリアス……。

私はコメディが好きなのにっ!!


まぁこれからは増えていくと思うのでご期待ください!!

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