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絡繰りメイド長と真実

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~紅魔館 美鈴の部屋~


「美鈴、入るわよ。」


 戸をノックし、部屋に入る。

 先の試合で負傷した美鈴はお腹に魔術治療を受けることとなった。あの妖狐の攻撃力の高さが窺われる。魔術治療自体、よっぽどの大怪我を受けたときしか使えない魔法で、消費する魔力も膨大だ。 

 美鈴の場合は内蔵が少し破裂していたが、外傷は打撃痕のみだった。結果的には表面に治癒速度上昇の魔法陣を埋め込むだけで済んだ。

 治療は魔法戦が終わったすぐ後にパチュリー様が終えたようで、今はただ安らかな笑顔を浮かべて眠っている。


「全く、あなたはいいわよ。私なんて次の試合で勝たなきゃいけないのよ。」


 人の気も知らずに寝ている顔を見ているうちに愚痴がこぼれていった。今のところ一勝一敗だが、次の試合結果によって有利不利が生じてしまう。

 もし私が負けてしまったら…。


「まぁまぁ、落ち着いてくださいよ。咲夜さんなら勝てますよ。」


 先程まで眠っていたはずの美鈴がいつの間にか私の手を握っていた。寝ていたおかげか、その手は温もりに溢れていて体温が低めの私を包み込むようだった。だけどその手は、すり傷で覆われていた。

 

「美鈴、この傷はもう痛くないの?」


「ああ、これですか。もとの回復力はそんな低くないですから全然平気ですよ。だから居眠りしてるときに投げられるナイフ、頭に刺さってもすぐ治るんですよ。」


「…居眠りするんじゃないわよ。門番として、責務を果たしなさいよ。」


 そんな、他愛もないおしゃべりを部屋いっぱいに埋め尽くす。

 美鈴と話しているときだけ、私は“メイド長”ではなく、“咲夜”という一人の女性でいられるのかもしれない。お嬢様の傍にいるときも、そこにはメイド長としての私がいる。ここまで家族になれるのは、美鈴しかいない。


「咲夜さん、まるで幼い頃に戻ったみたいですね。」


 私に向ける母のような微笑みは、紅魔館に拾われた頃から変わらない。


「いいじゃない。今だけ、今だけでもあの頃に戻させてよ。私はもう、大人なんだから。」

 

 そして、私は変わった。

 人間の私は、自分の中の時を止めてはいるが、15年も歳月は経った。幼い私ではなく、大人になった私は紅魔館のために戦わなければいけない。

 正直言って、あの者たちはかなり強い。

 私の相手と思われる人間の少女からは何も感じ取ることができなかった、何も分からなかった故に、強いと感じる。勝敗の行方が分からない。

 

「美鈴。私の試合、見に来てくれる?」

 

「ええ、もちろんですとも。」


 美鈴の見ている以上、負けることはできない。育ててくれた主のためにも、勝利を授けよう。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「…さっきの試合結果、本当はあなたの勝ちじゃないでしょう?」


 次の試合会場に足を運ぶなか、藪から棒に尋ねられた。思わず足を止め、チラリとレミィの方を覗く。同じく足を止め、私の方をジッと覗き込んでくる。


「突然、何かしら?あの状況でも逆転はいくらでもできるわよ。」


「確かに、あの時攻撃魔法を展開していれば逆転は出来たかもしれないわね。だけど、展開しようとしていたのは、()()()()だった。しかも不十分な形だった。あれを避けるのは、流石にあなたも無理だと思うの。」


「あら?あの瞬間、私が覚醒して避けたとは考えないのね。」


「じゃあ、」


 そう言い、レミィは私の肩をそっと触れる。ズキッとした感覚が体を走り、フラフラと倒れてしまった。膝をつきながら肩を抑え、呻き声を発する。ゾワゾワとした感じを抑えるために、火属性の魔法陣を再び肩の位置に埋め込む。


「やっぱり、刺されていたじゃないの。」


 私を見下ろし、そう告げる。

 やっぱり、レミィは凄い。チラッと一瞥しただけでも、刺された箇所を的確に当てられた。


「はぁ、分かった。言うわよ、言う。

 あの時、私は肩を確実に貫かれた。全てを凍らす魔剣で。放っておけば向こう側の勝ちなのに、あいつなんて言ったと思う?

 『今回私が勝ったら、未来が変わってしまうみたいです。あなたが勝ったということにしてくれませんか?』

 そう言ってきたのよ。だから乗っただけ。」


「そう。」


 レミィは納得したように頷き、また歩を進めた。私もそれに合わせ、大広間へ向かう。

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物語心

“??”の姿 劣等感を力に換える程度の能力


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