継ぎ接ぎ巫女の魂の名
~紅魔館 応接室~
「すまぬ、迷惑をかけてしまった。」
魔力を補給し、人間状態の姿のままで首を垂れた。その件に関してはルナはほとんど悪くない。観戦できないフィールドで戦わざるを得ない指定だったのに、そこを“観戦できる”にしたルナの頑張りを褒めたいほどだ。能力を重ね掛けして13分間耐えたのはすごいし…。あれかなり魔力消費するはずなのにな…。
「なぜルナが謝るの?氷華の試合見れたのはルナのおかげだし、楽しかったよ。」
そう、輪廻はルナを元気に励ます。毎度思うが、紅魔館に来る前に変な妖怪に追われたのも輪廻のせいなんだよなぁ。その対応でかなりの魔力を消費したっぽいし…。
「まぁ、その件はもういいよ。私は次の戦いについて話したいんだけど。」
いつまでもルナが落ち込んでいても埒が明かないので、声をかける。ずっとこのやり取り続けても面倒くさい上に、早く次の作戦を伝えたい。
「次の試合について話したいつったって、うちには輪廻しか人間がいねぇだろ。」
蘭丸が腕を組み、顎で輪廻を指す。遂に膝を抱えて丸くなってしまったルナをなでなでしていた輪廻は、「読んだ!?」と声をあげ振り向いた。
…なんか、平和な頭だね、輪廻は。
「輪廻、さっきの試合は魔法戦。魔法戦の次は、人間戦…。私達に人間は…輪廻しかいない。」
風音が銃の手入れをしながら、理由を応える。これはたまに思うのだが、風音はいつ、銃のカスタムをしているのだろうか?必要な道具が手元にないときも、気づけば改造っているところを見る。まぁ、魔弾にも対応しているのだから、部品も普通じゃないのだろう。
「うー…ん?それって私に当てはまる?私って種族的にも微妙なラインに位置してるんだけど…。」
そう言い、体のあちこちを私達にさらけ出して見せる。
見た目はほとんど人間に近い。しかし、秘めるられる魔力の許容範囲は妖怪以上という“人間の器”。
その二体目に入っている彼女の魂は純粋な人間だから、問題があるはずがない。
「人間の器に入っているといっても、魂は人間だし、力も能力も人…いや、輪廻みたいな一族ならば普通に持ち合わせている量だから大丈夫だよ。それに、輪廻は強いじゃん。」
「そ…そうかな?」
と、輪廻は頬を赤らめ、スカートの裾を正した。輪廻が照れた時だったり、信じられないときにやる仕草で、見慣れている。輪廻の気分を良くさせるときには、これが一番都合がいい。
単純だから。
「まぁ、いんじゃねぇの?あの咲夜っつう人間、お前なら見知ってるだろ?攻略もしやすい。」
蘭丸が、妖力を与えながらそう言う。ルナもさっきとは打って変わって、従順に妖力を受け取ってる。最後の試合はとっても長くなるだろうから、念入りにそぎこまなければいけない。
やはり、蘭丸の頭が良くなってる気がする。大丈夫だろうか…。心配だ。
「分かった!能力、スペルカードフル動員して勝ってみせるよ!」
そう元気に意気込み、頭に結ばれていたリボンを一度解き、さらに強くキュッと結ぶ。下に落ちかけていたしっぽは、後頭部から波打つようにたなびいている。そして勢い良く立ち上がり、ドアを開け放つ。昔の勇者さながらに歩を進めるその姿は、いずれ皆を統べる者に相応しいと感じる。
「それじゃ、頑張ってね。博麗輪廻。」
そう、人間戦に挑む魂の名を呼び、私達も歩を進める。
今回と次の回は、キャラクター紹介をお休みさせていただきます。