物理戦
戦闘描写、つらい((+_+))
~紅魔館表庭 黄昏~
この世界に来てから初めて地面より高い場所にいるかもしれない。一時間ほど前にいた湖に夕陽が差し込み、キラキラと反射しているのが眩しい。
紅魔館の屋上からは、この世界“幻想郷”の自然を拝めるとレミリアさんは言っていた。幻想郷の景色は、私達が暮らしていた世界よりも空が澄み渡り、青葉が濃く、人々が壊した原初の景色をそのまま保っているように見える。
視界を下へ向けると、緑の中国の服に赤毛を三つ編みにした門番紅 美鈴と、白い中華服にゆったりとしたスカートの金髪赤目の妖狐の霞火 蘭丸は向かい合って準備運動をしている。物理戦を行うにあたって、自滅をしないようにするためだ。
改めてみると、奇妙な組み合わせだ。中華服に身を包み、同じ物理戦を得意とし。心姉の采配は正しいし、レミリアさんの采配もおそらく正しい。
「……中華服の奴は物理攻撃が得意なのかの。」
「ん?ルナ、何か言った?」
「なんでもないのじゃ。」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「それでは第一回戦、始めましょうか。」
「それでは第一回戦、始めようか。」
オレらのリーダーである心とあちら側のリーダーのレミリアさんが空を飛んで開戦を宣言した。対戦カードは既に切られていて、オレの相手はあの門番で、強さは分からん。ルナや心の推測ではかなりの手練れで強いと言っていた。はっきりいって、下働きで働くなんてオレには無理。
だから勝つ!
「ルールを説明する。」
・物理戦、魔法戦は名前の通り、物理・魔法or妖術のみを使用すること。
・上記の内容に反しない限り、何をするも自由である。
・人間戦、2対2は、物理、魔法、妖術を全て使用してよい。
・勝敗の判断は各チームのリーダーに委ねられる。
・それぞれのチームのリーダーは、自分たちのチームの者が戦闘不能だと判断した場合、そこで宣言することで勝敗が決する。
・指示、応援はしても良い。
・リーダーは、誰かを切り捨ててはいけない。
「物理戦、第一回戦。」
「霞火蘭丸 対 紅美鈴 始めなさい。」
レミリアさんが告げると、2人は屋上の方へ行ってオレらを見下ろすよう眺めている。紅魔館の連中は美鈴を応援しているが、オレらのチームは静かな目で応援してやがる。
いや、お前らも応援しろよ。
「よそ見とは、また随分と余裕ですね。」
ハッとして前を見ると、距離およそ40mを30㎝まで詰められていた。美鈴は拳を私の腹めがけて突き出してきた。門前での行動よりも動きが素早く、手のひらを拳に当てるのが限界だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ボガーンと、表庭で小さな爆発が起きた。皆、何事かと下を見下ろすなか、レミリアは微笑を浮かべている。
「ルールに、能力を禁止するとは言ってないからセーフですよ。蘭丸は妖術を使っていません。」
「あら?能力を私達も使えるようにこのルールを吞んだのよ?ただ、物理で勝てなくなったら、能力を使うと思ってたけから…。早すぎないかしら?」
蘭丸は攻撃を受ける前、こっちを見上げていた。あんなところを相手に見られていたら、初手を取られて当然だ。
「仲間の私が言うのもアレですけど、蘭丸は単細胞だから油断してただけです。それに、“私達”の本気はあんなもんじゃないです。」
「そう、楽しみにしてるわ。」
…負けないでよ、蘭丸。あんたは風音の次に強いんだから。
もくもくと上がる煙を覗き込み、私は腕を組んだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「アツッ…なんですか、急に爆発が、ゲホッゲホッ…。」
煙の向こう側から、美鈴のそんな声が聞こえた。真っ白な煙なもので、こっちからも向こうは見えないが。
バカだな、声を先にあげちまったら場所丸わかりだr、ゲホッゲホッ。
足を踏み込み、拳を流れに乗せて突き出す。そうすると、目の前に美鈴が現れる。目を閉じて苦しそうにしているが、煙のない外側にだしてやればマシになるだろ。
拳は腹に命中すると同時に発火した。そして、美鈴が煙のない外側に消え、拳から離れると、火は消えた。
「どうだ?驚いたか?先手を取ったはずなのに、カウンターを返されるのは。」
「…はい、ビックリしましたよ。急に爆発して、急に腹パンして、急に発火だなんて…。それがあなたの能力ですね。」
「ん?ああ、オレの能力は『触れたものを発火、爆発させる力』だからな。」
「『力』?『程度の能力』ではなくて?」
「あ?呼び方になんも違いはねぇだろ?幻想郷での呼び方が違うだけだろ。」
「…かもしれませんね。」
そう言い、美鈴は立ち上がった。そろそろ全力を出してぇところだったが、“あの状態”にはなるなと念を押されている。
さぁて、どうしようかな。
美鈴は足を思い切り踏み込み、拳を突き出したが、それを横に逸らし、阻止する。逸らしたおかげで背後に回り込むことができたので、背中に肘鉄を打ち込もうとしたが、前転により回避され、庭にめりこんだ。
もう片方の手で庭に触れて爆発させ肘を抜いたあと、後ろを振り向くと、美鈴が飛び蹴りをかますところだったが、しまったという顔をして地面に墜落した。すぐ隣に落ちたから、拳を上方向にして爆発させて美鈴を高く打ち上げ、オレも飛び上がり、かかと落としで再び墜落させる。
オレも重力により落下するが、仲間みてぇに風の術だの妖術系を操るのは苦手なんで、そのまま着地する。
美鈴は背中を強く打ったらしく、微かな呻き声しか発せてない。それに冷たい眼差しを向け、オレには苛立ちが沸き上がった。
「…なんで、本気出してくれねぇんだよ。」
「…ふふっ、これで、も…強めに、い…たので、すがね…。」
「…ふん。」
「それに、門で対峙したときから、勝つのは難しいなと思っていました。だから、これは、当然の、結果なんです。」
「“たいじ”とか、難しい言葉使うんじゃねぇー!なんだそれ、面白いのか!?」
「…はぁ?」
「…お前の属性とオレの属性の相性は悪いからな。純粋な物理戦、またいつかやろうぜ。」
オレがそう言ったら、
「物理戦終了よ、美鈴、お疲れ様。」
と、試合終了の声が響いた。オレはなんとなく美鈴に手を出した。
「ん。」
「?なんですか?」
「お前、碌に動けないだろ。骨数本やってるはずだ。摑まれってんだよ。」
「…ふふっ、いいですよ。」
美鈴は、オレの手に摑まり、そのまま背中に負ぶってやった。さすがにこの状態で風の妖術をつかないわけにはいかないので、仲間にサポートされながら、屋上へ飛んでいく。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「次の試合は、半刻後。場所は、咲夜についてけばいいわ。」
「美鈴さんはどこへ連れて行けばいいですか?」
「他のメイドに言いつけて治療させるわ。心配はいらないわよ。」
レミリアはそれだけ言って、どこかへメイドを連れて去っていった。私は仲間を見渡し、一人に視線を向けた。この中で唯一の魔法使いに。
次は魔法戦だ。
【キャラクター紹介】
霞火蘭丸
金髪赤目の見た目10歳位の少女
九尾狐の妖怪だが、尾は一本
5/4生まれ 獣人の里生まれ
九尾狐だが、妖術を全く使えない、物理戦闘しかできない故に里では孤立。
13歳の心とルナハートに出会い、妖術はルナを師とし、物理は蘭丸を師とした関係。
その1ヵ月後、里を出て心達と共に行動する。
脳筋、単細胞。一人称は「オレ」だが、れっきとした少女。
年齢はおよそ60代。
能力 触れたものを発火、爆発させる程度の能力
“??”状態 本来の力を取り戻す程度の能力