館の主への提案
勢いで作っちまったじぇーー!
「美鈴、その子達は誰?」
先導していた門番さんは、突然現れた青い服を着たメイドさんに呼び止められた。背が高く、銀髪を三つ編みにした綺麗な青い瞳が綺麗な人だ。
「あっ、咲夜さん。この子達がお嬢様に会いたいと言っていまして…。」
門番さんもとい、美鈴さんは咲夜というメイドさんに事情を話してくれた。見知らぬ我らより、彼女が説明した方がこの館のお嬢様とやらに会うことも容易いかもしれぬ。
メイドさんらしく物言いは丁寧だが、彼女の言った一言に少しカチンときた。どうやら心姉も同じらしく、
「咲夜さん、でしたっけ?」
「ええ、何か御用ですか?」
「確かに私達は見た目幼いかもしれませんが、ルナと私以外は50歳過ぎています。それに、私とルナは15歳ですし、お子様扱いは不本意です。」
「あっ、失礼いたしました。」
確かに我らの見た目は幼いが、かといってお子様扱いは腹立つ。人間に上から目線されるならば余計にだ。
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~紅魔館 応接室~
「それで、館の御主人様とやらは眠っておるのか?早く話がしたいのじゃが。」
「すいません、そろそろ起床時間なのでしばしお待ちください。」
応接間で待つこと半刻。館の主はまだ眠ってるらしい。夜行性の妖怪ならば、仕方がないと思うが…。心姉の読みが当たってるといいな。吸血鬼だったらしばらくは退屈しないと思うし。
「お待たせいたしました。お嬢様をお連れいたしました。」
そんなことを考えていたら、咲夜さんが館の主を連れてきてくれた。
「はじめまして。私はレミリア・スカーレット。この紅魔館の主よ。」
なんと、館の主は我と同じくらいの少女だった。真っ白なドレスに紅いリボンを身に纏い、白に近い水色の髪と真っ赤な瞳を持つかわいらしい女の子だ。
門番さんやメイドさんが大人だったから、てっきり主も大人だと思っていたが…拍子抜けだ。
「こんばんは、レミリアさん。私は物語 心といいます。」
心姉は自己紹介を軽く終わらせ、レミリアさんに手を差し伸べた。
「あら、心。よろしくね。」
レミリアさんも心姉の手を取り、握手を交わした。その瞬間、僅かにだが、心姉の口の端が上がったのを我は見た。
ああ、やっぱりそうなんだ。
「レミリアさんって、吸血鬼なんですね。」
「…あら?何故そう思ったの?」
「私は手を交わしたときに、妖気を感じとる力が上がるんです。妖気の形や色、匂いが教えてくれました。」
「…フフッ。なるほどね、あなた、かつて存在したあの村の生き残りなのね。」
「あはは…。それで、どうです?あたりですよね?」
レミリアさんはひたすら笑った後、さっきまでの穏やかな目を閉じ、代わりに威厳のある主らしい目になった。
「如何にも。私は≪永遠に幼き紅い月≫と呼ばれる吸血鬼よ。ようこそ、物語心さん。」
改めて名乗った彼女の背後から黒く、大きな翼が開かれ、今まで抑えられていたのであろう妖気が一気に解放された。部屋を覆いつくすような妖気に咽そうになりながら、ひどく感動した。
こんなにも強い力を持つなら、十分楽しめる。
「それで、何のために紅魔館へいらっしゃったのかしら?つまらないようなお話じゃないといいのだけど。」
「いやー。私達、昨日この世界に来たばかりで住む場所がないんです。だから…」
「泊めてほしい、というお願いならお断りよ。」
うーん。レミリアさん、惜しいなぁ。実に惜しい。我らみたいな見知らぬ人を泊めてくれるわけないものね。それに、心姉がそれ以上に面白そうなことを思いついたからの。
「…私達と戦ってくれませんか?」
妖怪相手の決闘という提案を。
「…はぁ。正気かしら!?私達“紅魔館”は幻想郷の最強勢力の一つよ?それを相手に戦いたいなんて…。」
「最強勢力かは知りませんでしたけど…。私達が勝ったら、しばらくの間紅魔館に泊めてほしいんです。負けちゃったら、しばらく下働きでも何でもしますから。」
「…ルールはどんな感じになるの?」
食いついた。計画通りに進んでいるの。
「決闘は4回戦。物理戦、魔法戦、人間戦、最後に2対2の対戦カードでどうですか?最後は1人倒せば1点入るとすればいいと思いますね。」
「あら?それじゃあこちらは3人だから、難しいわね。そちらは7人いるけど、2人余ると思うけど?」
「地下に2人分の魔力と妖気を感じられます。一人は魔法使い、もう一人は吸血鬼でしょう。なのでカードは大丈夫です。こちらは、私と風音は戦わないのでなんの問題もありません。」
「…流石ね。いいわ、物理戦、始めようではないの。」
「よろしくお願いします、レミリアさん。」
「決まりじゃの、二人共。物理戦を始めるにあたって、カードの開示をするのじゃ。」
「紅魔館からは、美鈴を。」
「…!全力でお相手いたします!」
「私達からは霞火 蘭丸を。」
「おっ?オレの出番か?」
「あの、メイドさん。暴れても問題ないくらい広い場所へ案内してくれませんか?」
「かしこまりました。表庭へ案内いたしましょう。」
ようやく、戦うことができるのか…。
【キャラクター紹介】
物語 心
桃色の髪に桃色の瞳の少女
妖怪
4/2生まれ ルナハート・ストーリーの姉
かつて存在した人と妖怪が共存する村の生き残り
能力 世界とリンクさせる程度の能力
??状態 “物語”と認識したものの人物をこちらの世界に呼び出す程度の能力