表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

復讐の時が来ました

「エリス!」


 声と共に入り口が勢い良く開かれました。

 入ってきたのは大切な仲間。 

 ガルフォスおじ様、ミロクちゃん、勇者様。


 玉座に座る私の左右にはべリアルとビフロンスが控えています。


「エリス。君ともう一度話がしたかった」

「私を見捨てておいてよく言いますね。今さら何の用ですか?」


 つい憎まれ口が出てしまいました。

 本当は会えてすごくうれしいのに。 


「君を見捨てたわけじゃない! あの時は突き放すような言い方をしてしまってごめん! 俺は君のことが――」

「言い訳は止せ。耳障りだ」


 勇者様の言葉を遮るようにべリアルが火炎を放ちました。

 力が落ちているとはいえ魔王の一撃は凄まじく、勇者様が盾で辛うじて防ぎきれるほどでした。


「其方よ、復讐の時だ。勇者を完膚なきまで叩きのめせ!」

「眷属を生み出す力さえ残っていませんが。私たちの力、役立ててください」


 声高らかにべリアルたちが私を戦いに誘います。


「わかりました。二人の力を借ります」


 杖を天に掲げると、べリアルとビフロンスの体が吸い込まれていきますがそれだけではありません。

 世界各地に眠る、全ての魔王の力がここに集結しています。


「魔王とは太古に突如出現した災いです。その力を全て集めればどれほどのものになるでしょうか?」

「やめるんだエリス!」

「そんなことしたらエリスの体が‼」


 全ての魔王の力を集結させる。それが私の狙いでした。

 ビフロンスの能力は再生、べリアルは多くの古代魔法が使えました。

 この二つを組み合わせ、復活した魔王の力を古代魔法でここに集めたのです。

 

 魔王の力が杖を通して私に流れ込み、身体を変えていきます。


 背中からは天使のような羽、頭から鬼を連想させる二本角が生え。

 服装も黒から白いローブに変化していました。


「これで私は災いです。復讐の時は来ました」


 勇者様は呆然と剣を落とし、ミロクちゃんも震えながら膝を着きました。


「馬鹿野郎が……!」


 ガルフォスおじ様も苦痛の表情で斧を握りしめています。


「勇者様。貴方に捨てられたと思い、私がどれだけ嘆き悲しんだかわかりますか? その悲しみは怒りとなり、復讐へと駆り立てたのです」

-「エリス……!」


 勇ましき者は災いを消し去る力を持つ。

 全ての災いとなった私を勇者様に消し去れば、災いと戦うことも無くなり、勇者様が傷付くことはありません。

 ですが、私が、エリスがいたという心の傷だけは、残させてもらいます。

 

それが私の復讐です。


「構えなさい勇者。ここで全てを終わらせましょう」



「さすが、です」


 仰向けに倒れる私を勇者様たちが見下ろしています。

 魔王の力を得たとはいえ一人の私と、固い友情で結ばれた三人では勝負になりません。

 そもそも勝つ気などありませんでしたが。


「エリス。俺の話を聞いてくれ」

「何を――」

「俺はお前が好きだ。愛している」

「………………え? は、はは。冗談ですよね?」

「俺の想いは本物だ」

「……もう一度言ってください」

「お前が好きだ」

「うぎゃー」


 勇者様が私を? これ夢じゃありませんよね?

 ほっぺたをつねりましょう。

痛い、夢じゃない。

 私の頬を一筋の涙が伝います。

 

「私も貴方が好きです」

「それじゃあ――」

「ですが、貴方の告白を受け入れることはできません」

「え?」


 三人が戸惑いの表情を浮かべます。


「私に宿る災いの力。まだコントロールできていますが、やがて皆さんに牙をむくでしょう。平和のためには私を消し去るしか方法はありません」

「そんな――」

「勇者様。貴方と共にいれないことをお許しください。止めを」

「断る」


 勇者様は私の言葉を一蹴し、手を握ってきます。


「私の話を聞いていましたか?」

「俺が言うのも何だが勝手なことを言うな。エリスは俺が救ってやる」


 いくら勇者様でも、災いになり果てた私を救うのは難しい。

 そう言いかけましたが、言えませんでした。

 私の口は、勇者様の唇で防がれてしまったのです。


 その瞬間、魔法が解けたように、羽も角も消えてしまいました。

 魔王の力を感じることもできません。

勇者様が言い伝え通り、災いの力を消し去ったのでしょうか。


黄金の髪を揺らし、笑顔の勇者様。

それを見るだけで、とろけてしまいそうですう。


「ようやく終わったか。これでひと段落ってやつだな」

「よかった。本当に……よかった」


 勇者様の手を借りて立ち上がり、二人の元へ向かいます。

 ガルフォスおじ様には頭を軽く叩かれ、ミロクちゃんは泣きながら抱き着いてきました。


「帰ろう。みんなが待っている」

「――はい」



 復讐は失敗しましたが、これでよかったです。

 みんなと一緒にいられるのですから。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ