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ペルソナ~心を失った少年~  作者: 渚
第一章 ノーク編
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 集まったのは男女入り混じっての6人。

 隼人にとって、クラスメイトは顔は知ってるけどそれ以上の興味はなく

 名前に至っては、ほとんど覚えていない。

 そんな隼人をよそに、皆口々に話す。


「奥さんに裏切られたとかで、亡くなったらしいね」


 その声は小さく、亡くなった方を冥福するようでもあった。


「死に方、残酷だったらしいよ」


 そしてほかの一人が声をひそめ、体を両腕で抱えるように話す。


「最初お腹を引き裂いたらしいんだけど、引き裂いても引き裂いてもなかなか死にきれなかったらしくて

 結局首を吊ったみたいだね」


 聞いているだけで、身震いするようなおぞましい話をまた一人が言う。


「けど、失敗して最後には自分の体に油を撒いて焼死したって話も聞く」


 どこまでが真実でどこまでが噂なのか、そこにいる誰も真実は分かっていなかった。


「夜になると、その家、うめき声や、人の足音が聞こえてくるらしい」


 皆こういった話が好きだった、日常では体感できないスリルを

 表面では怯えながらも、心のどこかで求めているのかもしれない。


 辺りは漆黒の闇に包まれ、使い込まれた街灯が怪しく光る。

 冷えた空気が辺りに立ち込め、それはまるで心まで冷やすよう。

 空は朱色に染まり、奇麗だとは言えない灰色の雲がかかる月は

 赤く染まっていた。


 その月の下に館は姿を現した。


 錆びついた金属製の門はギィと嫌な音を立てて開き

 庭は草で荒れ放題で、奥を見ようとしても、草の陰に隠れ

 どうなっているかは知ることができなかった。


 皆身構えるように身体をこわばらせ、隠してはいたけど、小刻みに震え

 誰も言葉を口にしなくなっていた。


 その扉は分厚い朽ち果てた大きな木製で、枠には収まっておらず

 隙間を開けて傾いていた。


 その扉は、触れるとガタリとずれ、人一人が通れるほどの隙間を開ける。


 室内は薄暗く、蜘蛛の巣が張り、埃っぽい匂いがあたりに立ち込め、空気は淀んでいた。


 一足踏み出すと、分厚い埃が足元に舞い

 まるで雪の上を歩いた時かのように、くっきりと足跡を残す。


 両側には部屋のような空間があり、正面には木製の階段が続いていた。


「現場は2階らしいよ」


 どこから仕入れた情報か知らないけど、一人がそう話す。

 そしてまた一人が、思い出したかのように懐中電灯を取り出して

 明かりをつけると、その階段は案外しっかりとしていて

 人一人が乗っても問題ないように見えた。


「お前、懐中電灯持ってるんだから先行けよ」


 懐中電灯を持ったは少年は、少し渋るような態度をみせたけど

 ドンと背中を押され、しぶしぶという感じで前を進んでいく。

 ギシギシと音を立て、電灯を持った少年が先導して

 その階段に、確かめるように足をかける。


「大丈夫そうだ、行くぞ」


 言葉には威勢はあるものの、その声は小さく

 どことなく震えているようにも思えた。


 階段に乗り出すと、ギシッと音を立て、やはり痛んでるようだった。

 そして、崩れないようにとの配慮で一人一人上ることに。


 2階には階段と面するように廊下が走っていて

 左右にそれぞれ、部屋があった。


 懐中電灯を持った少年には、多分根拠はなかった。

 しかし迷わず右の道を進み、皆もそれに続いた。


 部屋の扉はすっかり痛み表面がぼろぼろと剥がれ落ちている。

 ドアノブに手を伸ばすも、半分外れていて

 回しても空を切るだけで何の変化もない。


 仕方なく扉を押し、強引にこじ開けることに。

 だけどその扉は案外軽く、押せば難なく開いていった。


 扉が開ききったところで、恐る恐る少年は懐中電灯で部屋を照らした。

 すると、その部屋の光景は意外なものだった。


 所狭しと人形が置かれ、懐中電灯を充てるとその目が光る。

 それはまるで、目を光らせこちらを睨みつけているようだった。


「ひぃっ」


 ガタン。

 気付けば懐中電灯は床に転がり、持っていた少年は一目散に逃げだしていた。

 そして、それにつられるかのように、一人、また一人と逃げ出した。


 いつの間にか取り残される隼人。

 彼は仕方なく懐中電灯を手に取り、再び室内を見渡すと

 部屋の中央には木製の椅子が置かれていて

 その上には、赤い瞳の人形がぐったりとしていた―――――


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