再び交わる運命と友に
「小癪な…、我の元へと到達する事など最初から無理だと言うのに」
「それを決めるのがお前だと言うのなら、選択肢すら無い『到達した』と言う事実で塗り潰すだけだよ」
「我、全知全能の神。故に、何者にもなり、何者をも超越する。下等種如きに我を止める事などできぬと知れ」
ヘージとオティヌスの視線が交錯する。
黒いローブのフードを目元まで深々と覆い隠している顔の中を垣間見る。
その左目は潰れ、顔の左側半分のは焼き爛れ、包帯で巻かれていた。
それでも、右目の真紅の輝きはまるで両目であるかのように錯覚を起こさせ、世界の全てを見通すかの如く力があった。
「我が力の前に消えろ。『渦を引きおこす者』…」
全能故に、何物にもなれる。その言葉通りに大気は渦巻き荒れ狂う。
アリアの神魔法でも近づく事が用意ではないほどの障壁となりて道を塞いだ。
「ここはオレの出番だな」
眉目秀麗な男が声をあげる。
「私たちの。でしょ?マリーよ。覚えておいてもいいけど、口説くのは死んだ後にしてくれる?シェイブ、行くわよ。」
純情可憐な女性が名乗りをあげて太陽の輝きの中で並び立つ
「私たちの絆は、」
「オレたちの縁は、」
「「途切れない。混ざり合う想いは平次のためにっ‼︎」」
「アリア、少し力を貸りるぞ。世界を我が手に、『妖精の国の主』。小世界形成完了。『『豊かな』妖精の栄光』」
何もなかった空に大地が生まれ、全ての神々に羽が生える。
渦はいつのまにか消えて、世界が生まれていた。
「この世界は神々から贈られた物だ。オティヌス、てめぇ一人では破れはしない」
「っく!我が地に着くなどあってはならぬっ。『人間の神』っ‼︎」
わぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎
ズドドドドドドッ
オティヌスが唱えると、何処からともなく人間が現れて妖精とかした神々を狩り始めた。
「そう。貴方は生者は必要ないと考えるのね…。」
騒音に満ちた世界にマリーの冷たい声が静寂をもたらす。
「また作り直せば良い。所詮は我以下の存在故に容易な事だ」
迷いなどない。神は一人いれば良い。
オティヌスにとってのこの状況は好機だった。
全知全能、故に。全ての聖者の全知全能が集まった時に自分を殺すのではないかと不安にかられ続けていたからだ。
(…我以外の神などいらぬ)
それがオティヌスが望んだ事だった。
しかし、マリーの一言でその希望は潰える。
「私は『死者を迎える女神』、貴方が要らぬといった神々は私が迎え入れるわ」
そして、世界の全てがオティヌスの敵に回った。
「なぜだっ!我こそ神‼︎唯一神にして世界を再構築し、理想郷を築く者なりっ‼︎」
「貴方も神名を名乗ったら?ま、私は知っているけどねー」
取り乱すオティヌスを無視して、マリーがシェイブに話しかける。
「オレの神名は【フレイ】だ。そして、てめぇに理想郷を語る権利はないっ!…そんなものはお前だけの理想郷だ。オレたちはそんな小せえモノに理想を重ねたりしないっ!」
「そうよね。平次」
懐かしい男女の二人の面影が重なった気がした。
それは、よく知る人物で、支えてくれた友だった。
「もしかして・・・」
ヘージの口からは言葉が出て来なかった。
彼は時が流れ、魂から記憶が風化してもおかしくない年月でさえ、八神平次の夢を信じ、付き添い、生涯を平和な国・世界を作るために何度生まれ変わって尽力した。そして、愛する人を救うという目的にも魂尽きるその時まで付き合うと誓った。
(…それが今なんだ)
「おいおい、忘れちまったのか?オレなりに努力はしてみたが国を纏めるので精一杯。世界を纏めるってのはオレには荷が重すぎたみたいだ。すまん。」
「…、いや、いい世界だったよ。お前に託して正解だったさ」
ヘージの目には涙が溜まっていたが流すことはない。弱さを見せるのは今じゃないから
「オレの名前は『ランロット・ユングリング』。ヴァルホン王即位後は『ランロット・ユングリング・ヨシノ』って名乗っていたけど、まさか子孫に平次が生まれてくるとは思わなかったぜ」
「こっちもだよ。ずっと側で見守っててくれたんだな…」
平次によく聞かされていた桜の話、吉野山の桜が忘れられずにいると…、だから女神サクラの名前を聞いた時にユングリングの姓をミドルネームにしてヨシノを名乗った。
「私もいるのにねー。ランロットばっかりっ!」
覚醒した意識はマリーの中のマリンも呼び起こしていた。
「お兄ちゃんっ!あの人、まだ何かするつもりみたい」
当時と同じ空気を漂わせる3人にサクラがオティヌスが何かを始めた事を告げる
「また、力を貸してくれるか?」
「ずっと貸してるだろ」
「私たちはあなたの理想に賛同したのよ。理想郷、ちゃんとつくってよね」
二人は拳を突き出す。ヘージも拳を突き出し
コツンっ
再び、運命は交錯した。




