始まりの終わり。
瞬時にヘージは理解する。ヘージの中の八神平次がなぜあの時に目覚めたのか
「どおりでオレがここで目覚めたわけだ。...僕はもう逃げない。オティヌスを倒せる勇者なんか望まない。僕たちがお前を止めてみせる!!!」
シュドッ
「やれるものならなっ!!」
超加速したイヤルクがヘージに斬りかかる
右斜め上からシュージが剣を振り下ろす。父親を切れない事を利用して近接攻撃を仕掛けたのである。
ガキーンッ!
ドスッ
それを剣で頭上にて受け止める
すかさずイヤルクが右足で蹴りをヘージの腹部に入れるが、それをヘージが両腕で掴む
「ひょろい子供だと思えば、どこに...そんな力がッ!」
左足で自身の右足を蹴り上げて拘束を解除、その後にイヤクルが距離をとった。
「それはサクラや由美、それにみんながいるからな。それに妻のため、娘のため、妹のために命も賭けられないつまんねー男には、、、もうならないっ‼︎」
無力だった自分と決別した。
そのはずだった。それでも自分は弱かった。
今は仲間がいる。過去にも同じくらい自分を信じてくれた...、信じ続けてくれた仲間がいた。
この場所で始めて魔族と、神と対峙した時とは違うと今は思える。
イヤルクが目を閉じて何かを呟きだした。
「全能のチカラ、ここに在り、我が肉体を捧げ、神として.....、顕現せよっ!!」
それはシュージの肉体を贄とした|神≪オティヌス≫召喚の呪文
自身の魂と自身の体を一つとしようとして唱えられたものだった。
「ムダなのよね」
細やかな女性の声が神殿に響いた。
イヤルクは耳を疑った。真紅の瞳による神の威圧感の中を動ける人間などいるはずない
「オレたちはココにいる」
野太いが敵意ではない威圧感を放つ男の声が繋ぐ
「バカなっ!!何故だっ!」
動揺するイヤルクは気づかない
「あなたって本当にバカねー。言い方を考えなさい。私たちのいるココは、、、どこ?」
イヤルクを哀れむような声で凛とした声の女性が繋ぐ
消えていく体に気がついた時には意識だけとなっていた。
「父上、また後でお会いしましょう」
息子の声は最後まで聞こえたのだろうか?
生みの親でもあるイヤルクを見送る元魔王たちは静かに見守った。
「...全能なんてものは世の中にはないんだよ」
ヘージは消えたイヤルクに呟いてから、目と閉じて父親の冥福を祈った。
「ちゃんとおとーさんは魂の輪廻に乗ったから大丈夫だよ」
サクラが手を握ってそんな言葉を言ってくれた。
生きててほしいと思う反面、カスミをその手にかけたことを知らぬまま死ねたのを救いにも思った。
世界神であるサクラに追い返されたオティヌス。つまり、サクラの方が神としてのチカラは上なのである。
全能故に世界神のチカラも持ち合わせるはずのオティヌスであるはずなのだが、チカラに差が出た。
それは、この世界において全能神≦世界神のチカラを意味する。
「お前の自滅だよ。イヤルク」
シュージの肉体を生贄に捧げて、神の肉体の召喚は不発に終わった。それだけのことだった。
「我が王よ、思い出した事がある」
この場所で少しの時間がたち、昔の記憶を思い出したのだろう
【信】のキリングが語り出す。
「我らは奴に呼ばれた存在。本来の輪廻からは外れて転生すら出来ぬはずであったのだが、女神様が我らに転生のチカラを与えてくださったのだ」
それは魔王の誓約。魔王が何度も蘇っては勇者には困る
魔族が転生できず、魂も消える存在であるのはそのためだった。
「女神様が役割を下さった時に、こうおっしゃっていた。『あなたたちを記憶を残して転生するようにしたのは私だけど、辛い目に合わせるかもしれない。…ごめんなさい。いつに日にかあなたたちが解放されたら、この世界を守ってくれたら嬉しいな』っと。今なら分かる気がするのだ」
「ヘージ、私も思い出したのです。故に、この世界に残りヘージたちの帰る世界を守るとしましょう」
ルインもキリングに歩み寄り、ヘージと向き合う
「わかった。この世界の事をよろしく頼むよ」
「わたしからもお願いね」
ヘージとサクラはルインたちに世界の守護を託した。
『世界神のサクラの名の下に、あなた方に世界の祝福を。この世界に生きる全ての生命、魂にも世界の祝福を・・・』
世界神の加護が降り注いだ。
ヘージは、オティヌスと決着を着けに行くと決めていた。イヤルクとの戦い。これはまだ始まりにも過ぎない
「じゃあ、始めるよ。『女神召喚』由美」
この世界自身が由美の心臓で出来ている。
それを召喚し直す事は、世界の再誕でもある。
神世界に、この世界を召喚した。否、神世界は由美から始まったのならば、それは神世界がこの世界に召喚されたと言ってもいいのだろう。
「ヴァルハラの扉が開かれる…」
誰の呟きだろうか。それは八神平次の心の声が漏れたのかもしれない
神世界とこの世界は一つとなった。
そして、世界を閉じた神が目覚める。
呼応するように神々が目覚める。
終焉の宴は終幕へと向かう
神々の運命は加速した。




