この世界で生きる草
翌日、ヘージたちは神殿で食べる食料を、セリアとスノリェは孤児院へのお土産にファガリアを買って町の東口に集合していた。
「私たちは先に帰ってるから、必ず帰ってくるのよ」
「ヘージ、サクラお姉ちゃん。またね!マリーお姉ちゃん、他のみんなも遊びに来てね」
「みんなによろしくな。2人とも元気で」
「またねっ。おかーさん、スノちゃん!」
「もう貴方は私の妹なのだから、遠慮せずに伺わせてもらうわね」
「オレの作った最高のファガリアを手土産になっ!」
2人は馬車に乗り込み東にある最果ての集落へと向かう。別れを済ませてヘージたちもは再誕の神殿へと向かった。
「この道も久しぶりなのよねっ♪」
上機嫌なアリアさんが先頭を進む。買った食料などは男たちが運んでいたので手ぶらだった。どんどん進むアリアと対照的ににたまにソアが何やら草に話かけて遅れている。
「何か珍しいモノでもあったのか?」
シェイブがソアの見ている草を凝視するが、ただの草だった。
「なんでもない。行こう」
「ちょっ!置いて行くんじゃねーよっ」
そう答えて立ち上がりシェイブを置いて進みだした。
(余も、お主も変われたということか。この世界でこの世界の草として生き、草として枯れる。それを受け入れたのだな)
それは異世界植物だった。
しかし、シェイブが気がつかなかったのは既にこの世界の草木に馴染んでいるからだ。郷に入れば郷に従え、そんな言葉を植物ですら理解していた。
むやみに人を襲えば報復として草刈りが行われる。獣を襲ったとしても人にとっては恐怖でしかないためこれも草刈りが行われる。
やがて彼らも理解した。
自分たちの生き方はこの世界には合っていないのだと。
基本的人権の尊重という言葉がある。
人間が人間らしく生きる権利。
異世界植物にとっては、周りは全て自分と同じ草だった。それはお互いに草権を持っていることに等しい。
それを承知でお互いがお互いに生きる為に進化をしてきた。草が草を奪い合う、しかしそれはある意味においては基本的草権の尊重がある世界と言っても差し支えないのだろう。
価値観、考え方、生き方が違えば権利も変わってくる。
人が獣に遭遇したとする。いくら人間が基本的人権を訴えた所で獣にとっては関係ない。また、逆に狩猟に来ていた人間と獣が出会った時は基本的獣権の尊重はされないだろう。
故に、人間にとって草権が関係のないこの世界で生きていくために、ただの草であることを選んだ。この世界の草らしく生きて、草らしく枯れる。
それがこの世界における基本的草権だと。
「こんな道があったのね」
アリアについて歩いていたマリーが驚嘆の声をもらすが、当然の反応だろう。自分たちの住んでいた町のすぐ近くに神殿がたっていたのに町人は誰も知らなかったのだから
「ヴァルホン王国に所縁のある物を持っていないと道に迷う結界が張られているのよね。っと、見えてきたのよねっ」
「っ!ここが...」
マリーの眼前に広がった3000年前の神殿
マリンの魂が少しばかり疼いたのを感じた。
「始まりの場所。そして、僕らがソレを終わらせる場所だよ」
ヘージの言葉に皆が一様に息を呑む
「お兄ちゃんっ、ソレは明日って事にしたでしょ?今夜はここでバーベキューだよっ!」
サクラの一声で緊張が解ける。
「今夜は宴なのよね!部屋は自由に使っていいから荷物をおいたら薪木とかの準備にとりかかるのよねっ」
騒がしい夕食も終わり、ヘージたちはベッドへ入った。




