招かれざる来訪者
カン!カン!カン!カンッ!!
普段は礼拝時刻を報せる鐘の音が、激しく打ち付けられる警鐘に変わってヴォルスの街を駆け巡った。
「な、なんだ?!」
慌てて飛び起きる
窓から外を覗くと人々が着の身着のまま右往左往しているのが見てとれた。
今は夜明け直前の様で、薄っすらと暗闇が火の光を浴びて色付き始めていた。
「緊急事態のようなのよね」
振り返ると、ローブを羽織ったアリアさんとサクラが部屋の扉を開けて飛び込んできた。
「宿屋の主人と話してきたが、まだ何もわからないそうだ」
その後ろからシェイブが現状確認に走ってくれた様だ
カン!カン!カンッ!
どうやら警鐘が始まって少し時間が経過しているようだが、未だに鳴り止む様子はない
直ぐに外に出るべきだろうが情報が回ってこない。こういう時は冷静になるのが大切だ。
「まずは動ける服装に着替えて準備が出来たらフロントに集合しよう。警鐘に変化を感じたら即集合で」
3人が頷き、アリアさんとサクラは部屋に帰っていく
警鐘は鳴り続けたまま、フロントに集合となった。
「まずはフォール教会へ行こう」
「巫女さまが心配なのよね」
「うんっ!」
「無事でいてくれよ…」
シェイブの幼馴染でもある巫女さまだ。この街に来た最大の理由でもあるので、優先順位はそれ以外になかった。
三者三様に同意を得て急いで向かう
他の人たちも大きな時計塔を目印に教会に向かっいる様で次第に人混みとなり歩くような速さになった。
教会に着いた僕らは人混みの中にいた。
「そんな…」
「開けてくれー!」
「神よ…」
「巫女さまー!」
集まった民衆は、各々に助けを求める。
しかし、目の前の扉は固く閉ざされていた
ある違和感を感じた
僕らの来た方向の人々より、反対側から来た人々の方が焦燥感が滲み出ていたのである。
ふと、自分たちの来た方向を振り返る
「なっ…」
言葉を失った
暗闇の西の先、漆黒の雲かと思うほど埋め尽くされた魔族が、既に肉眼で数が数えられるほど接近していた。
さらにそれに気がついた者がパニックを起こし、辺りは混乱を極め始めていた。
「ヘージ、こっちだ!」
シェイブに引っ張られて人混みから脱出した。
ドーンッ!ドーンッ!ドッドッドーンッ!
その瞬間、砲撃音が轟き
漆黒の雲は少し密度を薄めた。
砲撃は北から
振り向いた先は小高い丘
軍事国家 ノルズリの国旗がはためき
金色の甲冑を身に纏った青年が剣で魔族を指し示す
「あの戦いから幾星霜。余の力を味わい主人に伝えよ。借りは返す、と」
東から登り始めた朝日が甲冑を輝かせた。その時、剣先が光を放った。
ドーーーーーーーーーンッ!
まだ空に残る星々より放たれたように見えるほど上空からの落雷
魔族の半数以上が焼け焦げ、直撃した魔族は消滅した。
生き残った魔族も無傷ではない。
命の危機か、戦力差を察したのかはわからないが反転し西の空へ飛び去っていった。
見惚れていたヘージたちは正気に戻る
「ノルズリがどうして…」
ノルズリの国旗を携えた軍隊は街の入り口前で待機し、それを率いた金色の甲冑を身につけた者がヴォルスに足を踏み入れた。




