Chapter2-3
お久しぶりです。すっかり遅くなって申し訳ないです。相変わらずちと書く時間がないもので、すっかり遅くなってしまいましたorz
それと、そろそろ本格的に書く間がなくなってきまして、しばらくの間(恐らく11月いっぱいぐらい)書けそうにありません。その為、次回の更新はかなり遅くなると思いますが、ご容赦くださいませ。
それでは本編の方をどうぞ
森林の中にひっそりとある町、アルメリア。
単純な面積だけなら、ライラックのおよそ三分の四程度だろう。だが、ライラックほど建物や人が多いわけではなく、ちょっとした広場のような場所が多いこともあり、小さいという印象はあまり受けない。むしろ、広いとさえ感じるものもいるだろう。
そんな町の北にある広場の一角に、二人組みのプレイヤーの姿があった。ハルカとソレルだ。
「私達だけじゃ、ちょっと厳しいですね」
「ラシルが普通に倒してたからもっと楽だと思ったのに・・・完全に予想外だったわ・・・」
二人は先程まで居た、森林遺跡―――通称アルメリアダンジョンでのことを振り返っていた。
ラシルと分かれた後、目標となるモンスター、アーマーソルジャーに戦闘を仕掛けた二人だったが、かなりの苦戦を強いられる事になった。
前衛となっていたソレルは敵の攻撃を避ける事が出来ずダメージを受ける。そのダメージもなかなか高く、ラシルが食らうダメージよりはまだマシだったが、そもそもラシルほど避けきれていない上に食らうダメージに大差があるわけではないので、ソレルのHPは削られていく一方だ。攻撃も三回に一回ぐらいはミスをしているような状態の上、回復アイテムを使用するために思うように攻撃が進まない。攻撃に関しては、ソレルの予想通り、ラシルよりはダメージを与えることは出来た。だが、こんな状況ではあまり意味はない。
一方ハルカの方は、ソレルの後ろから矢を撃っているためそれほどの危険はない。ミスもあまりなく、攻撃力も現状を考えれば申し分ない。だが、それはあくまでハルカが安全に攻撃出来る場合の話だ。モンスターは一匹だけではない。近くにモンスターが居れば、ハルカにターゲットが向くこともある。そうなってしまえば、ハルカはターゲットを外そうと動き回り、果てには自分に襲い掛かるモンスターを撃退しようとし、ソレルの負担は更に増えることとなる。
更に、別れ際にラシルの掛けた支援魔法が切れると、アイテムの消費に拍車がかかり、結局数匹倒したところで、アイテムの補充も兼ねて引き返してきたのだった。
「それにしてもラシルのヤツ、私よりレベル低いのになんであんなに戦えんのよ・・・」
「ラシル君、装備が結構揃ってますし、前にパラメータは回避に重点を置いてるって言ってましたから」
ソレルの愚痴に律儀に答えるハルカ。
このゲームではレベルアップ時には、自動でパラメータがアップする仕組みになっている。キャラクターの作成時にパラメータの成長具合の割合を決め、それに合わせ、クラスに沿ったパラメータが上がっていく仕組みになっている。ただし、これだけでは他のクラスになったときに、かなり厳しいものがあるため、その救済処置として、レベルアップ時に一定のポイントを得て、そのポイント分だけ、更にパラメータを強化出来る仕組みになっている。そして、キャラクターのパラメータとクラス、武具、魔法による修正値との合計が、キャラクターの最終的なステータスとなる。
因みに、ラシルは回避に重点を置き、それ以外は足りない分を上げるようにしている。そして、ハルカはバランスを重視し、ソレルは力に重点を置いているのだった。
「ここでうだうだ言ってても仕方ないし、行くとしますか!」
「はい!」
座らせていたキャラクターを立ち上がらせ、二人は再びダンジョンへと向かうのだった。
ダンジョンの一層目にはさほど強いもんスターは存在しない。少し道に迷いながら、遠回り気味に、目的の地下一階層目の入り口に辿り着く。それでも、特にダメージを受けた様子もなければ、アイテムも使用することはない。SPが溜まっていない事を除けば万全と言えるだろう。
「あ、そうだ」
早速地下に行こうとしたその時、ソレルが何かに気付く。
「ハルカってボイスチャットは大丈夫?」
ボイスチャットの確認だった。
この2人は、パーティーこそ組んでいるものの、今まで会話は全てチャットで行っていた。そのせいもあり、戦闘中はどうしてもお互い意思疎通が出来ない状態となっているのだった。
「はい、大丈夫ですよ」
「じゃぁ、つけとこうか」
ソレルはボイスチャットの設定をONにする。これで、キーボードを打たなくても意思疎通が可能となる。
「聞こえる?」
「大丈夫ですよ」
互いに通じ合っているのを確認し、地下へと進む2人。
声には現れていないが、ハルカは初めて聞くソレルの声に内心驚いていた。自分の友人の声になんともそっくりなのだ。
(こんなこともあるんだ・・・)
そんなことを考えながら、先に地下に下りたソレルを追うのだった。
地下一層目に降り、周囲を見渡してみるが、近くにモンスターが居る気配はない。2人はアーマーソルジャーを探すべく、どちらからともなく歩き出す。
2人が探索を開始して、しばらく経つ。ここまでは幸運にも、常に二対一の状況で戦闘することが出来、先ほど来たときよりは随分楽に戦えている。それでもアイテムの消費は、やはり激しく、前衛として敵の攻撃を受けているソレルは既に、三分の一近くを消費している。
「ふう、やっぱり厳しいねぇ〜」
ソレルが溜息交じりに口を開く。
2人は今、通路の端に座っている。連戦をしていては、アイテムがどれだけあっても足りそうにないので、一戦終える度に、こうして座って自然回復を待っているのだった。そのため、ダンジョンに居る時間に対し、全然戦闘は出来ていない。
このままここに居ていいのだろうか?そんな疑問がソレルの頭をよぎる。
あまりにも効率が悪いこの状況下で、彼女らにここに居るのは単に入団試験のためだ。内容はなんとも単純で、10日以内にルーンソードを入手すること。だが、モンスターからのドロップでの入手ではない。ソレルが自身の力で手に入れたものなら、たとえ購入したものでも構わないのだ。 それならば、ここよりもっと効率よくモンスターと戦える所に行って、そこでレアアイテムを発見し、それを元手に買ってもいいのではないか?
そんな考えが思い浮かぶ。
だが、これには別の問題がある。
そもそもレアアイテムなど手に入るのか?手に入れることを前提に考えているが、これが出来ないことにはどうにもならない。
問題はまだある。
仮に手に入ったとして、それを売らなければならない。金銭を得るために手に入れたのに、売れないのなら、たとえそれがどんなレアアイテムでもガラクタ同然だ。だが、これに関してはあまり心配はしていない。ゲーム上には様々な人間がいる。NPCからの販売物でないものなら、余程の物でない限り売れないということはほとんどない。短い間だが、商人としてやってきた経験からそう考えていた。むしろ問題なのは時間だ。期限を定められている以上、それまでに売ってしまわなければならない。レアアイテムならそんなに時間は掛からないだろうが、出すまでの時間を考えれば、なんとも微妙なところだと言わざるを得ない。
だが、そんなことよりもある意味一番厄介なのは購入かもしれない。
購入方法は大きく分けて三つ。
一つは、他のプレイヤーによる個人商店。購入するなら、これは最もオーソドックスな方法だろう。勿論売っていればの話だが。
ソレルはこれまで、あまり個人商店を覗くといったことはあまりしていない。せいぜい消耗品の購入に利用しているぐらいだろう。これは単純に、武具を買うほどのお金を持ち合わせていないため、どうしても疎遠になってしまうからだった。それでも、全く縁がないかというと、そういう訳でもない。たまに、武具を中心に扱っている店を覗くこともあったが、これまでにルーンソードを見かけたことはない。勿論全部の商店を見ているわけではないので、一切売っていなかったというわけでもないだろうが、数が少ないのは確かだろう。なら、無事購入というのは難しいかもしれない。
二つ目はオークションによる購入だ。
アイテムを見つけるのなら、こちらの方が確立は高いだろう。たとえ誰かが購入しようとしても、出品者が設定した期間はずっと残っているからだ。
だが、こちらは確実に購入出来る訳ではない。それに、都合よく試験期間以内に購入出来るとも考え辛い。そう考えると、やはりこちらも難しいだろう。
三つ目は他のプレイヤーに直接交渉をすることだ。
購入する、という事だけを見れば確実性は高いだろうが、売ってくれそうなプレイヤーを探し、交渉する手間を考えるなら商店を回ったほうが無難と言えるだろう。
結局の所、どの方法を取るにしても他者次第になってしまうため、どれも確実ではない。それなら、自身でアイテムを入手した方がいいとも思える。
「そろそろ行きましょうか」
ハルカから声がかかり、考えを中断する。既にHPは回復している。どうやら回復している間ずっと考えていたらしい。
「うん」
そう言って立ち上がるソレル。
探索を再開して間もなく、モンスターを発見する。アーマーソルジャーだ。
「それじゃぁ、ハルカ、行くよ」
返事を待つことなく、モンスターに攻撃を仕掛けるソレル。
ソレルの現在の武器は斧。その為、攻撃の出が少し遅い。その為、大抵の場合、相手の攻撃よりも一歩遅れる形となる。それは今回の場合においても例外ではない。
慣れたプレイヤーなら、相手の攻撃を誘い、それを避け、カウンター気味に攻撃を当てるという動きになるのだが、始めてそれほど経っていないソレルには、その発想はないのだろう。相手の攻撃を受けながらも攻撃を繰り出していく。
そして、後ろからはハルカが矢を打ち込んでいく。
そのままモンスターを撃破。ラシルに案内されて来たばかりの頃を思うと随分安定してきているのを二人とも実感する。尤も、出直してきてから、未だ複数のモンスターを相手にしていない現状だからなのだが。勿論そのことも二人は理解している。
戦闘が終了し、ソレルのHPは半分近くにまで消耗していた。また休憩を挟んだほうがいいだろう、そう思っていた時だった。今度は後方からモンスターが迫る。アーマーソルジャーだ。
「敵」
ハルカは短くそう言いながらモンスターと距離を取る。その間も一発、また一発と確実に矢を打ち込む。この辺りの動きは、ラシルに随分と鍛えられたため、始めた頃よりは随分と様になっていた。
ソレルも回復アイテムを使いながら敵へと迫る。
今回初の連戦だった。だが、それだけなら、アイテムの消費が多くなる程度で、大した問題ではない。慌てる様子もなく、互いがそれぞれの役割をこなす。
しかし、今回はそれだけではなかった。モンスターがもう一匹現れ、ハルカへと迫る。ハルカは、再び移動し、もう一体のモンスターの相手を始める。
こうなってしまっては、ソレルは回復に手間取られ、モンスターの撃破がどうしても遅くなる。そして、ハルカもすぐにモンスターを倒せる訳でもないので、結果として、戦闘時間が大幅に長くなる。それは、二人にとって全滅の可能性が増えることも意味していた。
この場合、一体ずつ確実に倒していったほうがいいのだが、ハルカはどうしても、自身に来る敵の撃破を優先してしまうのだった。それは初心者故の行動なのだが、それよりも大きな要因となっているのは、ラシルと組んでいるということだろう。
普段はレベル相応の所に行っているという事もあるが、なにより、ラシルと組んでこのような状態になった場合、ラシルが全てモンスターを引き受けているのだ。その為、こういった場合のハルカの行動はどうしても、今のようになってしまうのだった。
「ハルカ、先にこっちお願い!」
ボイスチャットで、ハルカに指示を出す。
「ごめん、咲希」
「え・・・?」
ずっと似ている声だと思っていたせいだろう。このような状況に陥り、慌てていたハルカは、咄嗟に出てしまったのだ。
ソレルも内心驚いていたが、だからといって手を止めるわけにもいかず、戦闘を続ける。
「ごめんなさい、ずっと友達に似てると思ってたからつい・・・」
「いいから、はやくお願い〜」
咄嗟に謝り、そのまま動きが止まるハルカを急かす。
結局、戦闘が終わるころには、2人ともHPがほとんど無い状態になっており、そのまま再び休憩となった。
「ごめんなさい。慌てたたからつい咄嗟に」
先程のことを気にして、ハルカは再び謝罪していた。
「いいっていいって。いや〜、でも流石に声聞けばバレるわね〜」
「・・・・・・へ?」
ソレルの言葉に、硬直するハルカ。一瞬彼女が何を言っているのか理解出来ず、どこかマヌケな返事をしてしまう。
「だから、間違ってないって」
「えっと、それってつまり・・・」
少し間を空け、自身が行き着いた考えを口に出す。
「・・・・・咲希?」
「うん」
即答で返ってきた。似ている程度にしか思っていた為、なんとも意外だった。あまりに突然のことにそのまま停止してしまうハルカ。
「ごめんね、驚かせようと思って」
「あ、ううん、それは全然いいんだけど・・・」
ソレルの言葉に我に返り返事をするハルカ。
その後も回復している間、ずっと雑談は続くのだった。
「あ、そうだ。神代にも内緒にしといてね。あっちもびっくりさせたいし」
「うん、わかった」
そう言って立ち上がり、二人はずっと話ながら、探索をするのだった。
二人の会話は途切れることなく続き、気付けは既に、日付が変わろうとしている時刻となっていた。
アイテムが出ることは無かったが、お互いレベルを一つ上げ、この日は終了となるのだった。
私立星想学園。2-Bと書かれた教室で、この日も睡眠を貪る樹の姿があった。
前日、ハルカとソレルの二人と別れ、溜まり場でアルタス、ウィシュナの二人と会話をしていた樹だったが、二人が出て行くと、溜まり場で一人になってしまい、樹自身もまた、出かけていたのだった。
アルメリアで戦闘をした際、予想以上に苦戦をしたため、少しでもレベルを上げようと、普段ハルカと二人で行っている場所よりもワンランク上の場所で戦闘を繰り返していた。
久々のソロを満喫するラシル。
いつもなら、ハルカに色々と教えながらになる為、どうしてもテンポが悪くなってしまう。それを不快に思ったことは無いが、やはりたまにこうして元のプレイスタイルに戻ると、嬉しいものがある。
このとき、ラシルが相手にしていたモンスターは、ソレル達が相手にしていた、アーマーソルジャーと同等か、若干強いといったぐらいのモンスターだろう。だが、苦戦を強いられていたソレル達とは違い、ラリスは持ち前のプレイヤースキルで優々と撃破していくのだった。
結果、レベルが二つほど上がった頃には、既に深夜二時を過ぎており、慌ててベッドに入ったのだったが、朝起こされるまで寝ていたということはなかったものの、眠気が取れることも無く、こうして現在眠っているのだった。
少しして、毎日のごとく、湊斗が声を掛けに来るものの、
「ノートよろしく」
と、短く呟き、また落ちてしまう。
そんな様子を見て、湊斗は短く溜息を吐くと、それ以上起こすことはせず、その場を離れるのだった。
そして、遥歌と咲希の二人は、珍しく時間ギリギリで登校してきたため、樹に声を掛けることは出来ずにいた。
そのままHR、一限目の授業となり、授業終了のチャイムが鳴っても樹の目が覚めることは無かった。
授業後の休み時間。未だ睡眠中の樹の周りに、すっかりおなじみとなった、いつもの三人が揃っていた。
「こいつは学校になにしに来てんだか・・・」
咲希が呆れた様子で呟く。
「きっと疲れてるんだよ」
「多分ゲーム疲れだろうけどね」
遥歌がなんとかフォローしようとするが、湊斗がそれを断ち切る。
外見だけなら、温和な雰囲気を漂わせ、実際にも外見通りの性格な湊斗だが、付き合いの長さ故か、こと樹に関しては、容赦がない。
「それにしても、今日土曜で半日しかないのにこいつ寝て過ごすつもりなのかしら?」
私立の星想学園では、公立校と違い、土曜でも半日だけ授業がある。そして、樹は基本的に、起きる用事がなければ延々と寝続けるのだ。勿論限度はあるが、このまま放置しておくと放課後まで寝ている可能性は高いのは確かだ。
「お〜い、神代〜。起きなって」
ゆさゆさと樹の体を揺らしながら、起こそうと試みる湊斗。だが、よほど熟睡しているのだろう。基本的に、起こされればすぐに目覚め、寝起きも悪くない樹には珍しく、ここまでされて一向に起きる気配はない。普段なら、こうして周囲で話をしているだけでも起きかねないので、それほど熟睡しているかが窺える。
「う〜ん、仕方ない・・・」
湊斗は少し思案したあと、突然樹の机の中を漁り始める。そして、取り出したのは一冊のノート。
何をするのかと、湊斗を見つめる遥歌と咲希。
そんな二人を尻目に、ノートを丸め、振りかぶったかと思うと、思いっきりそれを振り下ろす。
スパン!と小気味いい音教室に響く。
そして、その犠牲者はというと、
「んぁ・・・あ〜・・いたい・・・」
まだどこか寝ぼけた様子で、ようやく重い頭を上げるのだった。
「おはよ、神代」
まずは湊斗。
「おはよう、神代君」
「まったく、あんたはいつまで寝てるつもりよ?」
そして、苦笑気味な遥歌と呆れた様子の咲希が、それぞれ声を掛けてくる。
そんな三人の様子を見回し、ふとある物に気付く。湊斗の手の中にある、丸まったノートだ。
それを見て、樹はようやく謎の頭痛の原因を察するのだった。
「頼むから起こすなら普通に起こしてくれ」
「神代が普通じゃ起きないからだよ」
すぐさま湊斗に反論される樹。
そこで、休み時間の終了をしらせるチャイムが鳴るのだった。
二時間目の授業が終わり、再び休み時間。
先程の休み時間同様、樹の周りにはいつものメンバーが揃っていた。
「今度はなんの用だ?」
先程のこともあり、どこか含みのある言い方で迎える樹。尤も、そんなことを気にするような者は、この中には居ないのだが。
「あんたに頼みがあってね」
「頼み?」
先に口を開いたのは咲希だった。咲希が樹に頼みごととは珍しい。なんともいやな予感がする。要件など聞かずに断ってしまおうかとも考えたが、先程の休み時間を無駄足にさせてしまったこともあり、とりあえず聞き返してみる。
「ファンタジアナイツをちょっと手伝って欲しいんだけど・・・ダメ?」
「そーいや、やってるとか言ってたっけか・・・」
以前にそんなことを言っていたのを思い出す。
普段なら手伝いぐらいは、全然構わない。プレイスタイルこそソロだが、やはり多人数でやった方が楽しいというのはある。それが友人同士なら尚更だ。だが、現在入団試験中というのを考えると、安請け合いも出来ないのだった。手伝いに呼ばれる可能性ある以上、ログインしている間は出来る限り予定は空けておきたい。
どうしたものかと迷いながら、遥歌に視線を送ってみる。遥歌もそれに気付く。
「あ、こっちは大丈夫ですよ」
どうやら、こっちの意図は察してくれたようだ。
「そういう訳で大丈夫だ」
遥歌が言うなら問題はないだろう。そう思い、引き受けるのだった。
「なになに?デート?」
「違うっての」
即答で咲希の言葉を否定する。どうやら今のやり取りで、全く別の方向に興味が行ってしまったらしい。
実際に何もないのだが、咲希にとってそんなことは関係ない。あれこれと質問攻めに合うことを考えると、なんとも憂鬱になってくる。
(・・・・諦めるしかないか)
丁度、そう思ったときだった。休み時間の終了を知らせるチャイムが鳴り響く。そして、それを合図に席を立っていた生徒達は、次々に自分の席へと戻っていく。樹達も例外ではない。
「じゃぁ、あとで待ち合わせ場所メールしとくから」
そう言って、咲希も自分の席へと戻るのだった。
放課後。樹は早々に家へと帰っていた。
部屋に荷物を置き、征服の上着を脱ぐと、パソコンの電源を立ち上げる。そしてそのまま台所へ。
樹の両親は共働きだ。しかも、夕暮れぐらいまで帰ってくることはない。その為、両親が家にいることは少ない。それは土曜でも変わらず、せいぜいいつもより早く帰ってくるという程度だった。なので、土曜の昼食は樹が自分で調達する必要がある。
尤も、料理をする事はあまり嫌いではなく、最悪カップメンの一つでもあれば十分な樹としては、大した手間は感じていない。以前、母親に昼食の作り置きを提案された時も、それを断ったくらいだ。
冷蔵庫の中を物色し、適当に見繕うと、そのまま昼食を作り始める。間もなくして、昼食は完成し、それを二階の自分の部屋へと持っていく。
持って来た昼食を、机に置き、そのままファンタジアナイツを起動する。昼食を置いたため、打ちにくくなったキーボードをなんとか打ちながら、ログインする。
ラシルが居たのは、いつもの溜まり場だった。周囲に人が居る様子はない。ギルド用のメニューウィンドウを呼び出してみるが、まだ誰もログインはしていないようだ。時刻は十二時四十五分。休みの日にログインするには少し早いように思えた。
ラシルをその場で座らせ、先に昼食を片付ける樹。その後、食器を片付け部屋に戻り、気付けば既に三十分近くが経過していた。それでも特に変化はなく、誰もログインしてくる様子はなかった。咲希からも連絡はなく、ただ、待ちぼうけを食らっている状態である。
(よくよく考えたら、休日の昼間っからネトゲーってにもなんだかな・・・)
今の自分の状況を見て、ただ苦笑するしかなかった。
その時、丁度携帯電話が鳴る。咲希からのメールだ。
『ちゃんと家に居る?アルメリアって町の道具屋の前に居るから』
用件だけの、なんとも短い文章だった。とりあえず返信だけでもと思い、メールの作成画面を呼び出す。が、そこで手が止まる。
(まぁ、いいか。めんどいし)
結局そのまま終了させ、パソコンをへと向き直る。すると、いつの間にログインしていたのか、ハルカとソレルの名前があった。軽く挨拶だけして、ラシルはアルメリアへと向かうのだった。
ギルドの施設から一気にアルメリアまで飛び、そのまま道具屋へ向かう。
昨日に来たときは、案内していたということもあり、あまり町を見ることはなかったが、久しぶりに訪れ、こうして一人で歩いていると、随分前にここを拠点にしていたこともあるせいか、どこか懐かしい気分になる。
アルメリアの北口。そこからまっすぐ東に向かった先の町の角。その場所に道具屋はある。
ラシルは道具屋前に着くと、咲希らしきキャラクターを探してみるが、それらしいキャラクターどころか、だれも居ない。見知った二人のプレイヤーを除いてはだが。
そこに居たのは、先程ログインしたハルカとソレルだった。てっきり既にダンジョンに行っているものだと思っていたので、こんな所で会うのは意外だった。
「よう、まだ行ってなかったんだな」
「はい。これからなんです」
ハルカが答える。準備でもしていたのだろう。自分の中でそう納得し、特別深くは追求しない。
「そういうあんたこそなにやってんの?」
「待ち合わせだ」
今度はソレルが聞いてくる。
ラシルが答えると、パーティー加入要請のウィンドウが現れる。なぜかソレルから誘われている。とりあえず承諾し、文句の一つでも言おうかと考えていたら今度は、ボイスチャットの設定をオンにされる。直接話せということだろうか?樹はインカムを装着してみる。
「で、誰と待ち合わせだっけ?かみしろくん」
この一言で、樹は全てを理解した。
「・・・・お前か・・・」
ほんの一時間ほど前に聞いたクラスメイトの声だ。間違えるはずはなかった。
「ったく、それなら最初っから言えっての」
「ごめんなさい、神代君も驚かせようって言ってたから」
樹は呆れながら、遥歌は苦笑気味に、そして後ろでは咲希の笑い声が聞こえるのだった。この様子では、どうやら十分に満足出来る結果だったようだ。
「それじゃ、十分満足もしたし、そろそろ行くとしようか」
咲希はそう言って、先に一人歩き出す。
「あ、咲希。待ってよ〜」
慌てて遥歌が追いかけ、小さく溜息を吐きながら、二人の後ろを樹も追うのだった。
ラシル(以下ラ)「ファンタジアナイツなんでもQ&A〜!」
ハルカ(以下ハ)「と、普段ならこうなるんですが・・・」
ラ「突然ですがなんでもQ&Aは終了です」
アルタス(以下ア)「ってなんでオレらが来た途端そんなことになってるんだ」
ウィシュナ(以下ウ)「本編でもあまり出番がないのに、ここでも切られるんですね」(泣)
ラ「いや、単純にネタがなくなっただけだから」
ハ「でもあとがきは相変わらずこんな感じのままで行くので大丈夫ですよ」
ア「あ、そうなんだよかったよかった」
ウ「まだ出番はあるんですね」
ラ(出番気にしすぎだろ・・・)(汗
ハ「そう言えば、ゲストが2人って初めてですよね」
ラ「そーいや、そうだな。ってかお前らいつも一緒だな」
ア&ウ「コンビですから!」
ハ「えっと・・・そういうものなんですか?」
ラ「オレに聞かれてもしらん」
ウ「でもQ&Aがなくなったらなにするの?」
ア「たしかに。ほかにすることないじゃん」
ハ「折角だし本編でも振り返ってみましょうか」
ラ「本編と言えば、作者がすごく気にしてることがあってな」
ハ「なんなんですか?」
ラ「学校って今土曜は休みだよな?と・・・」
ア「知らずに書いたのか・・・?」
ラ「お前作者が高校出てもう何年になると思ってるんだ。アイツが卒業したときはまだ土曜は隔週で休みだったような時だぞ」
ハ「ラシル君、あんまり言うと作者の歳がバレますよ」(汗
ウ「そんな時は困ったこm・・・」
ラ「そのネタはもういいって・・・」
ア「そーいえば今回はあんまり話が進んでないよな〜。ただでさえ、あんま進んでないのに」
ハ「たしか、最初の予定では、試験の半分ぐらいは終わる予定だったんでしたっけ?」
ウ「私達ももっと出番があるはずだったのに、切られちゃいました」(泣
ア「ラシルも今回はかなり影薄いしな」
ラ「ソレル中心の話だし、仕方ないだろ」
ハ「そう言えば次回はもう2話の最後ですね。ちゃんと終わるんですか?」
ラ「終わるというか終わらせるというか/・・・今回引っ張りすぎたせいでちょっと本編もあやしいらしい」
ア「で、次の更新はいつぐらいなんだ?」
ウ「今回かなり時間掛かったもんねぇ」
ラ&ハ「・・・・・・・・・・」(汗
ウ「ってなんで2人とも黙ってるの?」
ア「司会が黙るな〜」
ラ「詳しくはまえがき参照ってことで」
ハ「そ、それではまた次回〜」
ア「え?ちょ!なに?もしかして地雷?オレ地雷踏んだ!?」