Chapter2-2
いつも読んでいただきありがとうございます。
毎度ながら遅筆で申し訳ないです。
次回以降ですが、諸事情により、更に更新が遅れると思われます。
見てくれている方々にはホント申し訳ないです。
それでは本編の方をどぞ〜
ライラックの街の中心地を囲むかのように建てられた、様々な店。更にその店を囲むかのように建てられている様々な建物。基本的に入ることの出来ないが、全てがそうと言う訳ではない。数少ない進入可能な建物の内の1つにその場所はあった。
ギルド『空の円舞曲』の溜まり場である。
建物内では、ギルドマスターのエルナ、そしてメンバーのリシュリー、アルタス、ウィシュナの4人が談笑している。現在外出している、ラシルとハルカの2人を除けばこれで全員だ。
わずか6人で構成されたギルドの溜まり場としては、この建物は少し広すぎる。だが、建物内ということで、他のギルドと溜まり場か被らないことと、他のプレイヤーがこの場所を訪れるころはまず無いため、他者に聞かれたくない話などもそのまますることが出来るため、溜まり場としては最適と言えるだろう。尤も、建物内なので、どこかに行く、もしくは帰ってくる度にロード画面を挟む煩わしさを気にしなければという条件が付いてくるのだが。他者があまり寄り付かない理由もそこにある。
とはいえ、そんなことにはすっかり慣れてしまったメンバー達の間では中々に好評の場所だった。
「ただいまー」
「ただいまです」
エフェクトと共に2人のプレイヤーが現れる。ラシルとハルカだ。
これでギルド空の円舞曲のメンバー全員集合ということになる。
「お帰り、お二人さん。モノは無事買えたかい?」
まず2人を出迎えたのはエルナだった。そして、それに続くかのように、残りのメンバーが「おかえり」と声を掛けてくる。
「はい。マスター、みなさんありがとうございます。大事に使いますね」
お辞儀が出来ないかわりに、エモーションコマンドを使って、礼を言うハルカ。そんなハルカに、やはりそれぞれから返答が返ってくる。
「あ、マスター。それとですね、えっと・・・」
話を切り出すハルカだが、どうも歯切れが悪い。次の言葉を待つエルナだったが、その時だった。
「どうも、こんにちは〜」
まるでタイミング計っていたかのように、1人のプレイヤーがエフェクトと共に現れる。女性型商人のプレイヤーのようだ。エルナは見慣れない商人にカーソルを合わせ、キャラクター名とギルドをチェックする。名前はソレル。どうやらギルドには未所属のようだ。
最近もこんなことがあったような気がする。そんなことを考えていると、後ろから声がかかる。
「ラシルくん、また拾ってきたの?」
「いや、今回はオレじゃねぇっす」
リシュリーだ。それでエルナも思い出す。前回、しかもつい最近ラシルがハルカを連れてきたときと状況が似ているのだった。尤も、似ているのは突然新メンバーの候補を紹介されたということだけだが。
それで、エルナ自身も状況を理解する。
「とりあえず、なんでこうなったか説明してもらえるかい?」
「それが・・・」
ハルカが、買い物の帰りの出来事を説明する。
それを聞いたエルナがそのまま黙り込んでしまう。
「あの・・・やっぱりダメですか?」
そんな様子のエルナを見て、ハルカが心配になってくる。ハルカが問いかけるが、それでもエルナは答える様子はない。
と言ってもエルナ自身、メンバーが増えるのは問題ない。むしろ、人が入ってくれるのは大歓迎だ。普段なら二つ返事で了承しただろう。だが、今回はどうしても気になることがあった。
「試験どうしよ?」
少しの沈黙のあと、エルナから発せられた言葉に全員がずっこける。と言っても、ゲームにそんな仕様はないので、雰囲気上のものでしかないが、少なくとも、ラシルのプレイヤーである、樹は確実にそんな状態だった。
「いつも通りでいいんじゃないんですか?」
ウィシュナだ。
空の円舞曲では、このゲームでは珍しく、入団試験を行っている。と言ってもギルド内でのイベント程度のもので、大層なものではない。実際、1週間前にハルカが受けたときも、初心者であるにも関わらずクリア出来たほどだ。これにはラシルの協力があってこそなのだが、クリアが厳しいようならギルドのメンバーによる協力が問題ない辺り、この試験がさほど大きな意味を持っていないことが窺える。
そして、ウィシュナが「いつも通り」と言う様に、入団試験には毎回同じ内容のものが行われていた。その為、入団拒否の可能性は誰も―――厳密にはハルカ以外は、だが―――気に留めることすらしていなかったが、エルナが試験の内容を迷っているとは誰も思っていなかった。
「いや、こないだやったばっかだしねぇ。あんまり同じものを続けてってのもね」
エルナは短期間に同じ内容の試験をすることを懸念していたのだった。と言っても、なにか理由があるわけでもなく、単純にエルナ自身が最近やったことをまたやりたくないというだけなのだが。
因みに、他のメンバーはと言うと、いつも通りでも特には気にはしないが、エルナが反対するのなら、それに異を唱えるつもりもないようで、エルナの次の言葉を待っている。良く言えば、エルナのことを信頼しているということになる。逆に悪く言ってしまえば、ただのエルナ任せなのだが・・・。
「えっと、ソレルって言ったっけ?レベルは?」
「30です」
ようやくエルナが口を開く。ソレルのレベルを確認し、再び沈黙が訪れる。
だが、今度の沈黙は先ほどのような長さはない。
「よし、じゃぁ、ソレルにはルーンソードを取ってきてもらおうかな?」
エルナが試験の課題に出したルーンソード。これは、ランク3の武器、つまりは敵からのドロップ(落とす)専用のアイテムになる。同じランク3の武器でも、先ほどラシル達が購入したシルバーボウよりもワンランク上の武器であるため、それよりも入手は若干難しくなる。
武器としての性能は、実は中々に優秀だ。攻撃力だけを見ればそこそこに強いという印象だ。だが、この武器の真価はその特殊能力にある。それは、自身の魔力値の5%を攻撃力に変換出来るというものだ。これにより、設定された数字以上の攻撃力を発揮し、魔力を高目に設定したキャラクターを使っているプレイヤーや、魔法関係のクラスからこれを装備出来る前衛系のクラスにクラスチェンジしたプレイヤー達に重宝されている。
「期限は10日以内、どうする?」
「エルナ、ちょっと厳しくない?」
リシュリーだ。
確かに、彼女の言うように、レベルだけを見るならば、このアイテムを取りに行くには、若干無謀と言えるだろう。尤も、キャラクターのパラメータや、装備などでも随分変わる上に、プレイヤースキル次第では絶対に無理という訳ではないのだが。だが、ほとんどの場合において、レベル以外の要素を考慮されるということはあまりない。初対面の者なら尚更この傾向が強いと言えるだろう。リシュリーの意見はもっともだ。そして、それは他のメンバー達も同様のようだった。
更に言うならば、10日で手に入るものなのかと言われるとかなり微妙なところだったりする。こればかりは完全に運任せなのでなんとも言えないのだが、ドロップ率は当然として、モンスターの強さ、1マップ辺りに出現する数などにも左右される。そこに、自身の経験や、他のプレイヤーの体験談も交えると、なんとも際どい期間と言えるだろう。だが、それに関して、不満を挙げる者はいなかった。期間を延ばせば確かに確実性は増すだろう。だが、その分面白味はなくなっていく。それに、微妙な期間と言うことは、見方を変えれば試験での入手期間には絶妙な期間と言えるだろう。それに水を差すようなことをするものは誰もいないのだった。
「わかってるって。だから、今回もメンバーの協力は有りにするよ」
そこで、一旦区切り、再び口を開く。
「じゃぁ、細かいルール説明ね。まず、メンバーによる協力は1人1日のみ。但し、ハルカは別。あんたが連れてきたんだ、きっちり面倒みること」
「わかりました」
周囲からの反対や質問がないことを確認し、次に進む。
「で、次。入手方法は問わない。って言ってもあとは買うぐらいしかないだろうけどね」
「金銭的な援助はなしだよな?」
ラシルが確認をする。これが有りならば、それこそ、今すぐにギルドのメンバーの誰かが、購入してそのままソレルに渡してしまえばその時点で試験は終了だ。勿論そんなことをしてしまえば、試験の意味はなくなってしまうので、そんなことがあるとは思っていないのだが、念のための確認だった。
「当然。あと、ソレルとの狩り以外でウチのメンバーが手に入れたアイテムも無効」
ラシルの意図を察してか、金銭面以外の援助もきっちりと否定するエルナ。これで、ソレルの入手方法は自身での購入か、モンスターからのドロップに限られる。いや、厳密にはそれ以外にもなくはないが、ここでは割愛する。
「期間はさっきも言った通り10日。それまでにアイテムを見つけて、ギルドのメンバーに報告するか、期限が過ぎれば試験は終了。それでもやるかい?」
「やります」
一通り説明し、問いかけるエルナに迷うことなく答えるソレル。その様子に、エルナはモニターの前で薄っすらと微笑むのだった。
エルナはマウスを操作し、ソレルをギルドへの入団申請を出す。突然の、しかも予想外の展開に戸惑うソレルだが、少しの思考の後、それを了承する。
「あの、まだ試験受けてないんですけど・・・」
ギルドには入ったが、釈然としない気持ちもあった。今更ながらに、本当に入ってしまってよかったのかとすら思えてくる。
「毎度のことだから気にすんな」
ラシルが答える。そして、それに続くかのように次々と、
「よろしく〜」
「よろしくね」
「よろしく」
「よろ〜」
「よろしくお願いします」
と、それぞれが、それぞれの言い方で返してくるのだった。
そんな様子に一瞬戸惑うソレルだったが、先ほどの心配は杞憂だったのだと気付く。
「はい。試験がんばりますんで、よろしく」
(ここはいいギルドだ)
ソレルは心の底からそう思えたのだった。
「ハルカ、早速行こうか」
夕食のため、席を離れていたハルカが戻ってくると、ソレルは早速彼女を誘うのだった。
ギルドの入団試験の話が纏まったころ、丁度夕食時だったこともあり、一人、また一人と次々に席を立って行った。勿論、ソレルもその一人だったが、比較的早い内に席を立ったこともあり、戻ってきたときにはまだ誰も戻ってないという状態だった。
待つこと10分ほど。そこでようやくハルカが姿を現し、今に至っているという訳だ。
「いいですけど、行く前に買い物に付き合ってほしいかな。矢の補充したいですし」
「うん、おっけー」
アーチャー―――厳密には弓を使用するキャラクターだが―――は弓の他に矢も装備しなくてはいけない。しかも矢は消費アイテムだ。1本の値段は安いとはいえ、それが毎回数百から数千本単位で消費されるのだ。ラシルと組んでいるから随分マシとはいえ、ゲームを始めたばかりのハルカにはとても買い置きしておく余裕などない。そのため、ハルカは毎回外に行く前に矢の補充をしているのだった。
早速、目的のアイテムを探しに行こうと立ち上がる2人。だが、そこで、ソレルが肝心なことに気付く。
「そういえば、ルーンソードってどこで取れるの?」
「ソレルさん知ってるんじゃないんですか・・・?」
2人とも肝心のアイテムを落とすモンスターの居場所を知らないのだった。
ハルカは始めて半月ほど、そしてソレルも始めて1月半ほどと、どちらも初心者プレイヤーだ。そんな2人が目標とするモンスターの居場所を知らないのも無理ないことだった。
大抵のプレイヤーなら、そんなときは攻略サイトとなるのだが、やはりこの2人にはそんな発想が出るはずもなく、延々と途方に暮れるしかなかった。
「とりあえず先に買い物済ませてきますね」
「ん、りょーかい」
そう言って出て行くハルカ。再び、溜まり場で一人待つソレルだった。
「しょうがない。誰か来るのを待ちますか」
モニターの前で一人、そう呟くのだった。
それから5分ほど。
買い物に出ていたハルカも戻り、すっかり2人で待ちぼうけ状態だ。未だ他の誰も帰ってくる様子もなく、2人でどうしたものかと途方に暮れていた時だった。
「ただいま〜」
ラシルだ。どうやら夕食から帰ってきたようだった。
「ちょうどいいところに!」
「ラシル君、帰ってきてくれてよかったです」
「なんなんだよ、おまえら・・・」
帰ってきていきなりの歓迎ムードに気圧されるラシル。帰ってきたばかりで状況は一切飲み込めないが、どうやらなにか問題が発生しているということだけは、汲み取ることが出来た。
「とりあえずログ読むからちょっと待ってろ」
そう言ってチャットのログを読み始めるラシル。
2人のチャットモードはオープンだ。その為、周囲に居たラシル達にもチャットのログも残る。なので、わざわざ説明させなくてもそれで原因はわかるのだった。
「つまり、ルーンソードを落とすヤツを教えて欲しいと」
2人でコクコクと頷く。といってもそんな動作をさせることは出来ないので、やはりエモーションで代用している。
「攻略サイト見ろよ・・・」
「そんなのあるんだ」
「ネットゲームにもあるのねぇ」
2人の反応に愕然とするラシル。ハルカが初心者なのはわかっているので、この反応なのも頷ける。だが、ソレルまで同じようなものだとは思っていなかった。現在では、極端なゲーム人口の増加というのはほとんどない。そのため、初心者というのはかなり珍しいのだ。
実際、ソレルのことも、転生したレベル30だと思っていたぐらいだった。まさか、こんな短期間に初心者、それも2人に関わることになるとは思いもよらなかった。
「また今度探しといてくれ。場所はオレが連れて行ってやるよ。戦闘はどうする?」
「とりあえずはいいよ。私とハルカでやってみるから」
若干レベルの足りない、いや、2人ならほぼ適当なレベルと言うべきだろうか。だが、それは通常のプレイヤーの場合だ。初心者2人となると、なかなか厳しいものがあるだろう。
更に言うなら、ハルカはほとんどラシルと組んでいるせいもあって、レベルの割にプレイヤースキルはほとんどない。アドバイスは色々としているものの、一朝一夕で身に付くものでもない。まして、ハルカはこの手のゲームはかなり苦手なようなので、尚更だ。もう少し補足するなら、ラシルが結構助けているせいでという部分もある。
一方、ソレルの方はラシルにはわからないが、今までギルドにも入っていなかったことや、パーティーに入っている様子もないことから、ハルカの様な状態ではないと思える分、まだ良いほうだろう。ハルカのことを考えると、ほぼ完全にソレル頼みとなることが予想される。
そんな2人組みに一抹の不安を覚えるラシル。だが、ソレル自身が自分の手伝いはいらないと言っているので、必要以上の申し出は、逆にただのお節介だ。それに、ラシルが手伝えるのは1日だけだ。今、自分の都合で手伝ってしまっては、後々彼女達が必要としたときにどうにもならなくなってしまう。
ラシルは自分の中でそう納得し、2人に任せることにするのだった。
「とりあえず徒歩でいいな?」
ラシルがこのようのな確認を取るのは勿論理由がある。
街から街へと移動する場合、2種類の方法がある。
1つは、ラシルが提案したように徒歩での移動。そしてもう1つは、ギルドの施設や、スキル『トランスゲート』を使用して、一気に行く方法。
当然、後者の方が、断然早く着く事が出来る。
だが、初心者2人を連れていくのならマップを覚える意味も含めてこの方法を提案したのだった。
「おっけー」
「うん、大丈夫」
特に不満の声が上がらないのを確認すると、「じゃ、行くか」と声を掛け、溜まり場を後にするのだった。
ライラックの街の東側。そこから街の外に出て更に東に進むと、森林地帯に入る。その森林の中にその場所はあった。『アルメリア』。そう呼ばれる町にラシル達は居た。
アルメリア。大陸東部に広がる森林地帯の中にある町だ。一応町となっているが、どちらかと言えば村と言った方が正しいかもしれない。のどかという言葉がなんとも似合う。そんな雰囲気を気に入り、ここを拠点とするプレイヤーも少なくはない。
「ここが目的地?」
「正確にはここのダンジョンだけどな」
ソレルの問いにラシルが答える。
アルメリアに限らず、それぞれの町には町中、もしくは町周辺にダンジョンが存在する。ラシルとハルカが出会った、教会地下のダンジョンもそれに該当する。そして、それらのダンジョンは正式名称とは別に、町名のダンジョン、例えば、教会地下ならライラックダンジョンといった具合に呼ばれることが多い。
勿論アルメリアにあるダンジョンも、森林遺跡と呼ばれるダンジョンだが、通称ではアルメリアダンジョンだ。ラシルが『ここのダンジョン』と言うのは、やはり通称の方が意識しやすいせいだろう。
ラシル達が町を北に抜けると、それはようやく姿を現す。森林遺跡。前述の通りアルメリア周辺にある、通称アルメリアダンジョン。ラシル達の目的地だ。
ダンジョンに入り、マップを確認すると、普段とは違う様子なのに気付く。次の階層に行くためのワープポイントが2つあるのだ。勿論、自分達が入ってきた出入り口を除いてだ。
「あれ?これどっち?」
「地下だから北東の方だな」
そのことに気付いたソレルが問いかける。
このダンジョンは、このゲームには珍しく、地上と地下の2つから成っている。共に3階ずつで構成されていて、計6階層のダンジョンだ。
地上と地下ではモンスターの強さが全然違い、1階層目は初心者向け、地下は、中級者、地上2階層目以上は中から上級者向けとなっている。
「しかし、意外と覚えてるもんだな」
先頭を歩くラシルがそんなことを呟く。
マップ表示があるので、そうそう迷うことはないが、初めて来るダンジョンや、滅多に来ないダンジョンはなかなかに戸惑うものだ。このダンジョンはかなり入り組んでいるので尚更だ。だが、ラシルにそんな様子はなく、すいすいと進んで行くのだった。そんな様子にラシル自身も驚いている。
「よく来てたんだ」
「まぁな」
ハルカに答えるラシル。
今でこそあまり来ることはないのだが、以前はよくここに通っていたのだった。当時は、モンスターにやられたり、アイテムの補充だったりと1日に何度も通っていたので、すっかり道は覚えてしまっていたのだが、その頃の記憶はどうやら未だ健在のようだ。
道中に出会ったモンスターを倒しながら、進んで行き、ようやく地下への入り口に到着する。ラシルは全員付いてきているのを確認すると、そのまま地下へと降りていく。
少しのロード画面を挟み、画面が切り替わる。森林遺跡地下1層。ここが目的地だ。
周囲にモンスターの姿はない。とりあえずは安全だろう。そんなことを考えていると、ソレルとハルカが姿を現す。
「ここが目的地だ」
ラシルがそう言うと、丁度1匹のモンスターを発見する。
アーマーソルジャー。それがこのモンスターの名だった。剣を持った鎧の抜け殻といった風貌のモンスターだ。
ラシルはそのモンスターに1発攻撃し、自分をターゲットに向けさせる。そして、そのままハルカとソレルの元へと戻ってくるのだった。
「で、これが目的のモンスター」
モンスターの存在を気にせず説明するラシル。当然、横ではモンスターが攻撃しているが、表記はMISS。ラシルは基本的に避けることに重点を置いているため、回避能力は高い。その為、装備品や転生したことも相まって、自身のレベルでは少し厳しいようなモンスターが相手でも戦うことが出来る。尤も、そのせいで、攻撃力や防御力などの他のパラメータは犠牲になっているのだが、そのことは本人はあまり気にはしていないのだった。
目的のモンスターを2人に見せると、ラシルはそのまま倒しにかかる。いくら回避出来るといっても、せいぜい6〜7割ほどだろう。流石に放置しておくのは危険だった。
今回はいつものように回避に専念した戦い方はせずに、そのまま力押しで戦っていくラシル。そんな戦い方をしなくても、攻撃が当たることがあまりないためだ。
4発目、5発目と攻撃を繰り出した頃だ。モンスターの攻撃が命中する。ラシルが受けたダメージは軽く3桁に届き、自身のHPの6分の1近くを持っていかれる。だが、それでも気にすることはなく、更に攻撃を続け、そのまま倒しきる。倒しきるまでにそれほどかかりはしなかったものの、運悪く、更に2発のダメージを受け、ラシルのHPは既に半分以下となっていた。
普段なら、そんな戦い方をすることはないが、ここで分かれるからこその戦い方だった。
(やっぱ無理な気がしてきた・・・)
ラシルは改めて、不安に駆られる。ラシル自身決して自分が強いとは思ってはいないが、少なくとも、目の前の2人よりは強いという自信はある。それなら、やはり無理矢理にも手伝おうかと考えるが、やはりその意見を押さえ込む。
「じゃぁ、後はがんばってくれ」
「うん、ありがとね」
「ラシル君、ありがとう」
最後に2人に支援魔法を掛け、ラシルは引き返していくのだった。
ラシルが溜まり場に戻った時、その場に居たのはアルタスとウィシュナだけだった。
「あれ?2人だけ?」
「マスターとリシュリーさんなら狩りに行ったよ」
ウィシュナが答える。
エルナとリシュリーは大抵の場合、行動を共にしている。今回もそうなのだろうと、特に気にすることもなく、その場に座り込む。
「ラシルは早速手伝いに行ってたんじゃないのか?」
今度はアルタスが問いかけてくる。
「いや、道案内だけ。今はいいってさ。そういえば、お前らはどっか行かないのか?」
「丁度、どこに行くか話してたところだよ」
アルタスとウィシュナもコンビを組んでいるような状態だ。その為、よく一緒に行動している。
そして、ラシルとハルカもまた、すっかりコンビのような状態だ。だが、決してそれぞれのパートナー以外の繋がりがないかというと、そういう訳でもない。ギルドのイベントの一環で、メンバー全員で狩りに出ることもあるが、それ以外にも、行動を共にすることはよくあることだった。勿論、レベル差はあるので、経験値の分配などは出来ないし、行き先も、レベルが高い者には大して経験値も入らないような場所になることが多いのだが、それすらも楽しんでいるのが、空の円舞曲というギルドのメンバーだった。
「なぁ、今回の試験成功すると思う?」
アルタスの言葉に考え込むラシルとウィシュナ。
なんとも難しい問いかけだった。武具のドロップ率は、総じて高くはない。だが、10日という期間は、決して無茶という訳でもない。
「私はわかんないけど、成功はしてほしいかな」
ウィシュナが答えるが、ラシルは未だ考えたままだ。
確かに無茶ではない。だが、それはまともにあの場所で戦闘が出来ればという前提の元だ。ではあの2人はどうなのだろうか?
先ほどの戦闘を振り返る。正直、ラシル自身でも厳しいと言わざるを得ないだろう。勿論、あそこで戦闘を続けるというのなら、それなりの戦い方をするが、それでもやはり厳しいものはあるだろう。だが、それはあくまでラシル自身の話だ。では、あの2人はどうか?
アクション性の強いこのゲームにおいて、プレイヤースキルというのはかなり重要になってくる。それは、自身のレベルより上位のモンスターを相手にするなら、その重要度は更に大きくなる。だが、初心者2人にそれを求めるのは、厳しいものがある。
「無理だろうな」
それがラシルの出した答えだった。
「で、そういうアルタスはどうなんだ?」
「ん〜、成功するだろ」
深く考える様子もなく、答える。なんともアルタスらしい答えだった。
一方、ラシルが去って、2人になったソレルとハルカは、ダンジョンの探索を進めていた。
未だ戦闘はしていないものの、意外と楽に戦える。ソレルはそう楽観していた。先ほどのラシルの戦闘を見る限りでは、ラシルより自分の攻撃力が高そうなこと、それと自分達は2人居る。このことが、不安を取り除く材料となっていた。
少し進み、モンスターを発見する。丁度いいことにアーマーソルジャーだ。
「ハルカ、早速いくよ」
そう言ってモンスターに向かって行くソレル。
「うん」
ハルカも短く返事をして、ソレルに続くのだった。
ラシル(以下ラ)「はぁ〜、困った困った」
ハルカ(以下ハ)「のっけからなに言ってるんですか?あの人が来ちゃいますよ」
ラ「げ、それは困る。って作品違うのに来るわけないだろ」
ハ「あ、それもそうですよね。で、何が困ったんですか?」
ラ「作者が相変わらず小説を書く時間がないんだ」
ハ「まだ1日12時間とか言ってるんですか?ってそれとラシル君が困ってるのとどういう関係が・・・?」
ラ「いや、ただの作者の代弁」
???「お困りですか〜?」(どこか間延びした声で)
ラ「キター。困ってません困ってません」(焦
ハ「大丈夫ですから、どうかお引取りください」
エルナ(以下エ)「あんたら意外と酷いな」
ラ「ってマスターか。脅かさないでくれ」
ハ「よく考えたら全然声が違いますよね」
エ「そんなことよりタイトルコールしなくていいのかい?」
ハ「あ、そうでした」
ラ「ファンタジアナイツなんでもQ&A〜!!」
ハ「で、マスターがなぜここに?」
エ「前回から毎回ゲストで1人出られることになったって聞いたけど」
ラ「そんな話聞いてないですよ」(汗
エ「まぁ、細かいことは気にしない。それより質問質問」
ハ「はぁ・・・。では早速。このゲームはアクション性が強いってずっと言われてますが、どんなゲームかイマイチ想像出来ないので詳しくお願いします」
ラ「う〜ん・・・聖○伝説(2とか3とか)とかイー○(6以降)を想像してもらうとわかりやすいかも」
エ「えらい差があるねぇ・・・」(汗
ハ「逆に難しい気が・・・」(汗
ラ「はい次」
エ「もうゲームネタはしないって言ってたのに相変わらず使いまくってるのはなぜですか?だって」
ラ「このページは作者がノリと勢いのみで書いてるから、気付くとこうなってます」
ハ「次は・・・って今回はもう終わりですね」
ラ「短!!」
エ「前振りがながすぎるからだよ」
ハ「そんな訳で次回もよろしくお願いしますね〜」