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エピローグ

 夏休みの終わりに空の円舞曲ワルツが解散してから――同時に、perpetual nocturneが活動を再開してから、しばらくが過ぎた。

 季節は冬。十二月も半ばを過ぎ、学生達には冬休み目前、世間ではそろそろクリスマスといったところだ。

 すっかりクリスマスムードとなっている商店街にその姿はあった。なんとも珍しい組み合わせで。

「マスターがクリスマスにはログイン出来るって連絡が来てたよ」

「そっか。それじゃ、何か考えとかないとな」

 遥歌と樹だ。

 大抵はこの二人に湊斗や咲希、あるいは両方が居るという状態だ。二人だけというのは実はかなり珍しい。放課後、買い物があるということで、こうして二人で行動しているのだった。

 因みに、エルナのことを未だマスターと呼ぶのは一種の癖のようなものだ。一度決めた呼び方はなかなか変えられず、結局“マスター”いうあだ名の様になってしまっている。

「しかし、あの人達ゲームしてて大丈夫なのか?」

 樹の言うあの人達とはエルナとリシュリーのことだ。二人は、受験生ということで、夏休みの終わりにギルドを解散させ休止中となっている。

 十二月の末も近いクリスマスの時期ともなると、そろそろ追い込みも掛けていかなければならないような時期ではないのだろうか?そんな疑問が浮かんでくる。

「元々余裕はあったみたいだし、少しぐらいなら問題ないんじゃないかな?」

 遥歌の言葉に「そういえば、それで夏までやってたんだっけか」と納得する。

これまでほとんど意識する事無く――しかし、確かに認識はしていた。それが無意識に、だったせいだろう。そんなことはすっかり忘れていたのだった。

話題は他愛も無い話に移っていき、買い物も済ませてしまう。互いに目的のも買え、後は帰るだけとなったのだが、その時、丁度いつものバーガーショップの前に差し掛かる。

「腹も減ったし、なんか食っていくか?」

「ふぇ!?」

 樹の提案に遥歌は訳のわからない返事を返す。心なしか顔が紅潮しているようにも見える。

 遥歌からすれば、同年代の男子と二人だけという状態すら逃げ出したい状況だ。相手が普段から仲のいい樹だからこそ、特に問題なくすごせてはいるが。だが、こういった状況は流石に戸惑ってしまう。

(落ち着け私。神代君のことだから、絶対に言葉通りの意味しかないんだから……)

 そう考えて落ち着こうとする。だが、同年代の男子に異性として全く見られていないと思うと、それはそれで悲しくなってくる。

 一方、そんな様子を見ている樹の頭の中は疑問符で埋め尽くされていた、なにかマズイことでも言っただろうかとも思うが、心当たりはない。少し考え、一つの答えの辿り着く。

「金なら心配しなくていいぞ。オレが誘ったんだし奢るよ」

 遥歌の心情とは全く無関係の答えに辿り着いたのだった。

 そんな樹の様子を見ていると、変に意識している自分がバカらしくなってくる、そして、小さく溜息を吐いた。

「大丈夫だよ。私もまだ持ち合わせはあるし」

 どうやら吹っ切れたようで、遥歌の様子はすっかり元通りとなっていた。

「行こっ!」

 そう言って一足先に、店内へと入っていく。

 慌しく様子を変化させる遥歌の様子に、やはり疑問符しか浮かばない樹だった。樹がその疑問を解明することは恐らく無理だろう。地震の疑問をするには、彼は余りにも鈍すぎる。

「まぁ、いいか」

 いくら考えても答えは出ないという結論に達すると、そう呟き遥歌の後を追うのだった。

「そういえば」

 いつもの様に注文を済まし、いつもの様に四人席を陣取り、しかしいつもとは違い二人だけで来ているバーガーショップ。

 何か話題をと、思いを巡らせていた所に以前から聞きたかった事があったのを遥歌は思い出す。

「神代君達って前に……その……騒ぎを起こしてるじゃない?」

 少し言い難そうに、言葉を選びながら話を切り出す。

 空の円舞曲が解散してから、遥歌や咲希は樹達が起こした騒ぎについて調べていたのだった。perpetual nocturneに入る時に樹が「厄介ごとに巻き込まれるかもしれない」と、言っていた意味が漸く理解出来た。

 人が言いと言われている遥歌でさえ「大変かも」という感想を抱いたぐらいだ。咲希に至っては、遥歌と延々とこの話題で話していたほどだ。

 事が事だけに、話題に出すのは少し躊躇われる。

「ああ。それがどうかしたのか?」

 気を使い、言い難そうな遥歌とは対照的に、全く気にする様子のない樹。

 そもそも樹からすれば、件の騒ぎはもう過ぎた事であるし、経緯がどうであれ原因を作ったのは確かな事実である。自身から話を出す事は無いが、指摘されたところで気にするほどでもない。結局はその事実が変わる事はないのだから。

そう考えているからこその態度だった。

「神代君が最初に“厄介ごとに巻き込まれるかもしれない”って言ってた割には意外となにもないから、もしかして裏で色々と動いてくれてたのかなって」

 perpetual nocturneに空の円舞曲のメンバーが入るとき、確かに樹は厄介ごとに巻きこむだろうと予想していた。実際それを伝えもした。

 だが、実際には掲示板などで話題に上がったぐらいだ。あとは、それに合わせて話しかけられることがあるぐらいだろう。

 中にはネット上での噂を鵜呑みにするものや、少なからず悪意を持って接してきた者も居るので、平穏無事というには些か無理があるが、平和に時が過ぎているのは間違いない。

「まぁ、結構時間も過ぎてたってのもあるんだろうけどな……」

 そこで一旦区切ると、小さく溜息を吐く。恐らく何か心当たりがあるのだろう。

「お節介なギルドのマスターが一枚噛んでるってとこだろうな」

 そうは言うが確信はない。そもそも、掲示板などもほとんど調べてすらいない。だが、この考えが間違っているという気もしない。

 周囲からも話を聞くことはないので、全くの的外れなのか、それとも水面下でうごいているのか――ともかく、必要以上に騒ぎが大きくならないなら、樹自身も動きを見せるつもりはない。

 そう話をしている内に、トレーの上は空になった容器とくしゃくしゃに丸められた包み紙だけになっていた。

「さて、そろそろ出るか。遅いと文句垂れるヤツも居るしな」

 冗談っぽくそう言いながら、樹は立ち上がる。

 遥歌はそんな樹の言葉に、思わず咲希の顔が浮かび吹き出しそうになる。

「もう、そんなこと言っちゃ可哀想だよ」

「特定してる時点で楠木も同罪だって」

 どちらからともなく笑い出す。そして、わかりやすい性格の咲希が悪いという結論に達するのだった。


 遥歌と別れ、家に着くと早速パソコンを立ち上げ、ファンタジアナイツを起動する。IDとパスワードを入力しログイン。この瞬間、樹はギルドperpetual nocturneのマスター、ユグドへと変わる。

 初めにモニターに映し出されたのはどこかの建物の中。かつて空の円舞曲が、そして今ではperpetual nocturneが溜まり場として使用している、すっかり見慣れた場所だ。

 先ほど別れた遥歌も既にログインしている様で、出かけているものもいない。空の円舞曲のメンバーを引き取ったことによりすっかり増えたメンバーは、受験勉強で入れない二人を除き、今日も全員ログインしている様だった。

「お、全員揃ってるな。丁度いいから告知するぞ」

 ユグドの言葉に、全員の視線がユグドに向けられる。

「クリスマスってことで何かするから、とりあえずクリスマスらしくプレゼントを用意しておいてくれ」

「何かって何するのさ?」

 半ば告知とは言えない内容に、当然の様にこんな声が上がる。

「まだ何も決めてない。リクエストがあるなら今なら受け付けるぞ」

 若干投げやりな内容だが、文句は出ないようだ。ユグドが時期的なイベントをするのが珍しいのか、今から何かリクエストをするために考えを巡らせているのか――ともかく、何もないのを確認すると更に続ける。

「あと、マスター達も戻ってくるみたいだから、あの二人に押し付けるものも準備しておくこと」

 マスターであるユグドがマスターと言うとなんともややこしい。尤も、メンバー達は誰のことかわかっているらしく、混乱している様子もない。

 特に意見もなさそうなので解散すると、いつの間にかすっかり出来上がっていたグループ同士が集まる。

 グループは二つ。と言っても、よく組んでいるというだけで、常にこのメンバーという訳ではない。

 一つはアルタス、ウィシュナ、ルシフィス、ファティマの四人組。

 アルタスの無鉄砲ぶりに、人に教えるのが好きなルシフィスとファティマがくっついた形で出来たチームだ。

「アルタス、ウィシュナ。早速行くか」

「お前らと行くとスパルタだからな~……」

 ファティマの誘いに溜息混じりに答えるアルタス。

「ビシビシ鍛えてあげてね」

「リクエストも受け付けたことだし、今日は三割増しだね」

どうやら、アルタスを擁護する者はいないらしい。尤も、これがいつものやり取りなのだが。

いつものやり取りに、いつもの様にアルタスは溜息を吐くのだった。

もう一つのグループは、ユグド、ハルカ、ソレル、イーリス、ミュシャの五人。

どういう訳か、ミュシャはユグドのことを気に入っているらしく、真っ先に合流して来た。そこに、元々組んでいたイーリスも加わり、いつの間にかすっかりこのメンバーで動く事が増えたのだった。

「私達も早速行こう」

「ちょっとは落ち着きなさいって」

 早速、出かけるルシフィス達を見て、ミュシャが声を上げる。そして、それをイーリスが宥める。これもいつもの光景だ。

「ユグド、どうしたのアンタ?」

 何の反応も見せないユグドを不思議に思ってか、ソレルが問い掛ける。

「ん~、ちょっと調べ物」

 そう短く答えると、新たに開いたウインドウを閉じる。どうやら必要な情報は手に入れたようだ。

「それじゃ、オレらも早速行くか」

 ユグドはそう言うと、漸く立ち上がる。

「アンタが一番遅いんだって」

 そんなユグドにソレルが突っ込む。何か一言返してやりたい衝動に駆られるが、キリがなさそうなのでここは堪えておく。

「それじゃ、行こっか」

 ハルカが纏め、彼女の言葉をきっかけにするかのようにユグド達も溜まり場を後にした。


 かつてファンタジアナイツ中を騒がせたギルドは、新たなメンバーを迎え、以前よりも賑やかに、そして、以前よりも少しまったりとした空気の中で、この日もファンタジアナイツの世界を駆け巡るのだった。

ハルカ(以下ハ)「あの~……なんでエピローグまで私達がここにいるんでしょうか?」

ラシル(以下ラ)「ん~……あとがきだから?」

ハ「いや、そうじゃなくて……。最後ぐらい作者さんがここを書かないんですか?」

ラ「あとキャラ紹介も控えてるしな。ヤツはそっちで書くらしい」

ハ「はぁ~、そうですか」

ラ「そうそう。ってな訳で気を取り直していくか」

ハ「なんか釈然としませんが、そうですね」

ラ「そんな訳で……ここまで見てくださった皆さん、今までありがとうございました」

ハ「最初に投稿したのが、2008年の3月だから二年もやってたんですね~」

ラ「一時期書けない時期もあったから実質もうちょっと短いけどな」

ハ「なにはともあれ、無事終わってよかったですね~」

ラ「ホントにな。よく途中で停止しなかったもんだ」

ハ「ここまで付き合ってくださったみなさん、本当にありがとうございました」

ラ「では最後にお知らせを」

ハ「冒頭にも少し書きましたが、本編と私たちのあとがきコーナーは今回で終了です」

ラ「次回キャラ紹介をアップして更新も終了となります」

ハ「キャラ紹介はこのコーナーで紹介した分を少し真面目に書いた分と、紹介してない人たちを書いただけの物になります」

ラ「あとは、普通のあとがきがあるだけなので、期待しても何もありませんよ~」(笑

ハ&ラ「それでは皆さん、さよーなら~」

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