第2話 夏の夕方(1)
今回から第2話です。正直ほのぼのとしていて大きなイベントなどはありません。
家に帰ると誰もいなかった。
「ただいま~」
そう言ったが何の返事もない。まあ、当たり前だ。父と母は他県に住んでいる。この家に住んでいるのは俺秋吉奏と妹秋吉美代の二人だけだ。正直部屋が余って仕方がないのだが、その分物置き代わりになるから助かっている面もある。
「誰もいないのか」
俺はそう呟くとリビングに向かう。今日は冷蔵庫にアイスがあるな。俺はそのことを思い出した。こんな暑い日(今は七月である)にはアイスがあると思えば自然と足取りが軽くなる。
この家では玄関からすぐのところの最初にある部屋がなぜか妹の部屋である。この家に引っ越してきたとき、当時六歳だった俺と五歳妹は自分の好きな部屋に思い思いに私物を広げてしまったため、そのまま二人の部屋が決まってしまったのだ。そのせいで俺の部屋は二階にある。なので妹が帰ってきてもそのまま部屋に入ってしまいいつ帰って来たのかが分からないまま夜になってしまったということがザラなのだ。
台所は夕日が差し込んでいるせいか、わずかに橙色に染まっていた。何とも幻想的な光景である。
「冷蔵庫っと」
俺は既に上機嫌だった。その場ではこれ以上の幸せはないと思えた。ほかの場所なら知らない。例えば学校で家にあるアイスのことを思い出したって、その時自販機の前にいるのなら話は別だ。え?よく分からない?すまない。言っただろ?俺は日本語が苦手なんだって。俺が得意なのは…そうだな、奏語だ。すまん。この言語は俺しか分からないな。ほんと、自分でも何言ってるのか分からなくなってきた。
この話は次に続きます。よかったら次もよろしくお願いします。感想、ポイント等も待っています(笑)