第1話 二人の日常(1)
秋吉奏…秋吉家の兄。高一。
秋吉美代…秋吉家の妹。中三。
「……」
「……」
ひたすら沈黙が続く。響き渡るのは箸と茶碗が触れ合う音のみ。
「なあ」
「何」
俺の前にいる少女はぶっきらぼうに答える。
「いや、何も…。」
「あ、そう」
そう言われると再び流れる沈黙の時間。この沈黙は先程から五回ほど繰り返されている。俺が何か声を掛ける。それに対する二、三語の返答。俺が何もないと言う。「あ、そう」と返ってくる。決まりきったそのローテーションが徐々に少女を苛立たせているのは明らかだった。
「昨日のテレビ見たか」
「私の部屋にテレビないの知ってるくせに」
「そ、そうか…。」
何とか話を繋げようとするが、これといっていい話題が見つからない。もともとボキャブラリーが少ないせいもあってか、俺は日本語には滅法弱い。ちなみに英語は偏差値68。一応得意科目だ。俺が唯一自慢できるものでもある。偏差値45の国語と比べたら一目瞭然だろう。
ここまで来てまだ自己紹介なしとはなんとも非常識な奴である。俺の名前は秋吉奏。高校一年。以上。それ以外に俺の特徴などあるわけがない。
このお話はまだ続きます。短編と言っておきながら何話にも分かれてしまっていてすみません。今後もよろしくお願いします。