02
目を覚ましたらそこは異世界だった・・・なんて本当に夢みたい。
夢を見ていた気がする。とても暖かくて優しい…懐かしくてけれど胸を締め付けるような、そんな夢だった。
ふいに耳元でガサガサ物音がして目を覚ました。いつもならかけているはずの毛布を被ろうとするけど手は空を切った。
「?」
寝相で毛布を蹴飛ばしてしまったのだろうか?私は不思議に思いながらも、寝返りを打とうとして背中に伝わる感触でベッドで寝ていないことに気づいて、あわてて上体をおこした。
「っはぁ?」
目の前に広がるのは真っ青な海だった。
南国のような白い砂浜にキラキラと太陽の光が反射している真っ青な海。
どれくらい固まっていただろうか?
腰まである髪の毛が風に吹かれ頬を撫でる。いつもはウザったいけれどそれすら気にならないくらい私は目の前の光景に目を奪われていた。
「…きれいな海。」
いや、本当はそんなこと感じている場合じゃない。
そんなことはわかっていたけれど、他のことは考え付かないくらい目の前の海がきれいだった。
―ガサガサ
木の葉がこすれあう音が聞こえて振り返ると、そこには毎日顔を合わせていたヤツがいた。
「やっと起きた?よくこんな地面でのんきに口開けて寝てられたね」
「口っ!?」
「…冗談。」
本気にするな、と言いながら私の隣に一メートルくらいの距離を開けて座る。
秋弘…私の双子の兄。身長は私より頭一個分大きいコイツは座っても私より大きい。チラりと横目で様子をうかがうとボーっと海を眺めていた。
―まつ毛私より長いかも…
「ね。ここどこだか知ってる?」
「…っは!…知らない」
「うん、期待はしてなかった。」
コイツの返答にイラっとしつつ海とは反対のほうを見てみる、こちら側には森と山が広がっていた。
「ちょっと周りを見てきたけど…だめだわ、全然見たこともないっていうか…そもそもこんなきれいな海見たことないし…日本かどうかも疑わしい。」
「おきなわとか?」
「は?なんで家で寝てたのにいきなり沖縄?つーか沖縄だったらとっくに人に会ってるし。おれアンタより一時間以上起きて回り見てきたけど、民家も道路も何にもなかったけど。」
真顔で言われてちょっと凹む私を無視して、秋弘はゴロンと横になる。
「なぁ、」
「ん?」
「…久しぶりにしゃべったな」
胸が暖かくなる、頬が緩むのが分かったけれど、私はコイツに顔を見られるのが嫌でそっぽを向いた。
「そうだね」
目を覚ます前に見ていた夢を少しだけ思い出した。
まだ小さい私たちは野原でピッタりくっついて寝転んでいた。
今は一メートル離れてしまった私たち。