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プロローグ
私には双子の兄がいる。兄といっても生まれた時間はほんの数分しか違わないのだけれど。でもずっと一緒に居たからだろうか、私にとって彼は兄妹であるけれど特別な存在だった。
それもこれもヤツが悪いと思う。ヤツは勉強もできスポーツも出来る。顔も…双子の私が言うのもなんだけど、悪くはないと思う。そして何より気に入った人はとても大事にする。
私はヤツにとても大事にされてきた。
どんくさくて男の子によくからかわれていた私をいつも守ってくれた。助けてくれた。いつからだろうか、ヤツに彼女が出来たら嫌だなと思い始めたのは。いつからだろうか、家の外では距離をとるようになったのは。
ねぇ。いつかあなたは私じゃない誰かを大切にするのかな?いつかは私にもそんな人が出来るのかな?知ってる?私の周りの女の子はみんなあなたが好きなんだって。たまに聞かれるの…彼って好きな人いるのかな?って、そんなの私が知りたいよ。でも、今までずっと聞けないでいるの。
あなたには大切な人がいますか?