お題もの、その三
ずずず・・・。
品の欠片もない音を立てて、しじみの味噌汁を啜る。
朝食は何時も和食と決めている。
だし巻き卵美味しいなー。
『○○山から近隣の市街地に野生の狼が降りてきているようで、
被害者は重・軽傷合わせて数十名に上り──』
熊本県の県内ニースを聞き流す。
近所じゃないことを確認して電源を落とす。
一応コンセントから。
最近は電気代があがってきているのを意識していかないと。
生活費をドンドン切り詰めていかないと生きていけないのだから。
バイト代の使い道は電気代以外にもあるのだ。
余分があればいいが、その逆は笑えない。
「ぶっそーな世の中だな」
誰もなにもいわない部屋。
大学に行く、と決めたのはいい。
県内の大学では僕の知的好奇心を満たしてはくれなかった。
それゆえ、今一人で寂しく朝食をすませていたのだった。
彼女?そんなのいるわけない。
この部屋に訪れるのは僕と、母と郵便だけだ。
寂しい、とはっきり思ったのは最初だけ。
今はただ穏やかだ。
部屋を小さい世界と見立てて、快適な生活を営んでいる。
この世界では僕が主だ。
何にも縛られることはない。
「あぁ、天気がいいな。布団を干そう」
この日は太陽光をたっぷり浴びた布団の海で眠りについた。