「桃太郎の種」
また流れてきた大きな桃とお婆さんの対峙
「おばあさん!おばあさん!」
「なんだい桃太郎」
洗濯で忙しいお婆さんは、
桃太郎を見もせず答え、
「あれ見てあれあれ」
「なんだいなんだい洗濯で忙しいんじゃ。
何をそんなに声を荒げて…?」
「あれは桃ですか?
あんな大きな桃初めてです!」
桃太郎はまだ遠くに見えるが、
かなり大きなそれに大はしゃぎ。
「え?
(嘘だーまた来た~~
まさかの兄弟姉妹?!)」
お婆さんは当然、
それの正体を知っていて、
桃太郎に真実を告げぬまま、
自らの子として育てていたので、
曖昧に答えるしかありませんでした。
「取って食べませんか?
あれは不老長寿の桃かもしれません!」
「食べる?!
(おいおいそりゃ駄目だ)
あ。いやそれは…」
「僕、何か取る物を探して来ます!」
「桃太郎やめなさ~い」
でも、桃太郎は家へ飛んで行ってしまい、
おろおろするばかりのお婆さん。
「このまままた弟とか妹とか、
もしくは別の何かが生まれてきたら
今ですらカツカツな台所事情なのに
また家族が増えでもしたら…
しかもお爺さんは子どもが大好きで
絶対育てるとか言い出すはずで、
桃太郎にも真実を話さなければならん…
桃から生まれた者はきっと妖怪、
物の怪の類…人では無いんじゃ…
真実を知ったあの子の気持ちも考えると
恐ろしく怖い…
やばいやばいやばい!」
桃太郎を想いながら焦りまくるお婆さん。
「やばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい」
大慌てで流れてくる桃へ一目散に駆け出し、
「お婆さんロープとこの荷台で…あれ?」
用具を持って戻ってきた桃太郎は、
お婆さんを探すとものすごい跳躍で、
桃に飛びかかる瞬間を目にし、
口をあんぐり開け何が起こっているのか
理解が追いつきませんが、
巨大桃と格闘してるとしか
見えないその様子に桃太郎は、
ずっと優しいお婆さんの初めて見る、
凄まじい形相に怖さも覚え、
「これは一大事だー!」
っとお婆さんの下へ駆け寄りました。
「はぁはぁぜいぜい…ふぅ~」
肩で息をしているお婆さん。
着てる物も水浸しで川底の泥に塗れ大変な様子に、
「大丈夫ですか?」
「はぁはぁ大丈夫じゃ…」
「なぜこんな事を?!」
「桃太郎よくお聞き。
たった今見ていた桃は魔物の化身じゃ。
わしらは前にも遭遇して
えらい目にあったんじゃ。
だからお前に危害が出る前に討伐…
ハァハァ…」
お婆さんの咄嗟の嘘。
「あぁお婆さんなんとお優しい。
そうだったのですか、
何も知らず食べようなんて馬鹿なことを
ゴメンなさい。
家へ戻って風呂の支度をします。
さぁ帰りましょう」
桃太郎はお婆さんを支え戻りながら、
『子を思う親は時に鬼に…』
などと思い涙ぐんでましたが、
そしてお婆さん。
その時何をしたかと言うと、
必死で果肉を剥がし、
大きな種だけにすると
『これじゃ!
この種さえ流してしまえば
何も無かった事になるんじゃー!!』
そうです。
桃太郎はこの種から生まれたのですが、
さすがに種は固く壊せず、
山一つ越せるくらいの勢いで遠くへ
放り投げました。
すると山向こうの別のお婆さんは
空から不思議な種が降って来たと、
それを抱え一目散に家に戻り、
お爺さんと割りました。
そして生まれた種太郎。
それはもう立派な赤子で、
別のお婆さんたち夫婦はそれに名を付け
天界からのありがたい授かり物だと、
大事に大事に育て、
やがて15年後。
種太郎は元服の年となり
立派な大人として育った種太郎は
お婆さんたちに言いました。
「憎き鬼を退治しに向かいとうございます」
と。
さぁ果たしてどうなる!
兄弟のような桃太郎との対峙そして、
あの日自分を捨てた鬼ばばあへの
はらわた煮えくり返る種太郎の執念。
その顛末はまたいつかの機会。
おしまい
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