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第4話「転生者の覚醒」

これは、前世の記憶なのか?

その問いに、答えが出た。

三年前のあの日。

全てが、始まった。

十五歳の誕生日。

春分の日。

私は、向日葵畑にいた。

まだ芽吹いたばかりの、小さな緑の葉たち。

夏になれば、ここは一面の黄色に染まる。

でも、今はまだ春。

芽が出たばかりの、向日葵畑。

私は、その真ん中に座っていた。

膝を組んで、目を閉じて。

瞑想。

侍女のマルタが教えてくれた。心を落ち着けるには、瞑想がいいと。

最近、変な夢ばかり見る。

知らない場所。知らない人々。知らない言葉。

でも、なぜか懐かしい。

なぜか、涙が出る。

八歳の時もあった。

ここ、この向日葵畑で。

満開の花を見て、突然思った。

「この花、知ってる」

既視感。

でも、すぐに忘れた。

十三歳の時もあった。

父上の書斎で、歴史書を読んでいた時。

ある戦争の記述を見て、思った。

「この戦争、前にも見た」

違和感。

まるで、別の世界で経験したような。

でも、それも忘れた。

そして今、十五歳。

また、あの感覚が来ている。

だから、瞑想。

心を、空にする。

呼吸を、整える。

風が、吹いた。

暖かい風。

春の風。

そして、香りが運ばれてきた。

向日葵の香り。

まだ花は咲いていないのに。

去年の向日葵が残した、土の香り。

種の香り。

懐かしい香り。

その瞬間。

頭の中に、光が差し込んだ。

眩しい。

熱い。

何か、来る。

何かが、押し寄せてくる。

映像。

大量の映像。

止められない。

病院のベッド。

赤ん坊の泣き声。

「おめでとうございます、元気な女の子ですよ」

誰かが笑っている。

女性の声。優しい声。

母親?

でも、私の母親は、私が生まれてすぐ亡くなったはず。

これは、誰?

映像が、流れる。

止まらない。

幼稚園。ランドセル。教科書。

「田中陽子、ちゃんと宿題やってきた?」

田中陽子。

その名前が、頭に響く。

それは、私。

でも、私はアリア。

アリア・フォン・アイゼンブルク。

違う。

これは、夢。

ただの夢。

でも、映像は止まらない。

加速していく。

小学校。中学校。高校。

勉強。部活。友達。

受験。大学。就職。

そして、NGO。

サンフラワープロジェクト。

向日葵の、プロジェクト。

途上国の子どもたちに、教育を。

アフリカ。東南アジア。

笑顔の子どもたち。

学校を建てる。教師を育てる。

それが、私の使命。

田中陽子の、使命。

でも、疲れていた。

毎日、遅くまで働く。

休みもない。

過労。

体が、悲鳴を上げている。

でも、止められない。

子どもたちが、待っている。

プロジェクトを、完成させなければ。

オフィス。

夜の十時。

パソコンの画面を見つめる。

頭が、痛い。

胸が、苦しい。

めまい。

倒れる。

床が、冷たい。

誰かが、叫んでいる。

「田中さん!」

視界が、暗くなる。

ああ、これは。

死。

私は、死ぬ。

三十歳で。

プロジェクトを、完成させられないまま。

ごめんなさい。

子どもたち、ごめんなさい。

暗闇。

でも、光が見えた。

眩しい光。

そして、声。

「あなたの想いは、無駄にならない」

誰?

「別の世界で、プロジェクトを完成させて」

別の、世界?

「向日葵を、咲かせて」

向日葵。

そう、向日葵。

私の、使命。

「行きなさい。新しい人生で」

光が、私を包んだ。

そして。

赤ん坊の泣き声。

また、生まれた。

別の世界で。

アリアとして。

「ああああああああっ!」

私は、叫んでいた。

向日葵畑で、頭を抱えて、叫んでいた。

記憶が、止まらない。

三十年分の記憶が、一気に流れ込んでくる。

田中陽子の記憶。

日本。東京。21世紀。

パソコン。スマートフォン。電車。

学校。会社。NGO。

友達。同僚。上司。

全部、全部。

鮮明に。

まるで昨日のことのように。

いや、違う。

これは、前世。

私は、転生した。

田中陽子として三十年生きて、死んで。

アリア・フォン・アイゼンブルクとして、生まれ変わった。

「嘘、嘘よ」

私は、頭を振った。

「そんなこと、あるわけない」

でも、記憶は消えない。

あまりにも鮮明すぎる。

ただの夢では、ありえない。

これは、本物。

本当の記憶。

私は、二つの人生を持っている。

田中陽子の三十年。

アリアの十五年。

合わせて、四十五年分の記憶。

「私は、誰?」

わからない。

田中陽子なのか。

アリアなのか。

どっちが、本当の私?

涙が溢れた。

怖い。

自分が、わからない。

何のために、生きているのか。

何のために、生まれてきたのか。

全部、わからない。

「アリア様!」

遠くから、マルタの声。

でも、答えられない。

ただ、向日葵畑で、丸くなって、震えていた。

三日間、部屋から出なかった。

ベッドで、ただ丸くなって。

記憶が、頭の中を駆け巡る。

田中陽子の記憶と、アリアの記憶が、混ざり合う。

どっちが、どっちだかわからなくなる。

日本語が、頭の中で響く。

でも、口から出るのは、この世界の言葉。

混乱する。

私は、誰?

どこにいる?

何をしている?

マルタが、心配して何度も扉を叩いた。

父上も、来た。

「アリア、大丈夫か」

優しい声。

でも、答えられない。

私は、あなたの娘なのか。

それとも、別の世界から来た、よそ者なのか。

わからない。

何も、わからない。

四日目の朝。

私は、ようやくベッドから起き上がった。

窓を開ける。

朝日が、差し込んできた。

暖かい。

外を見る。

向日葵畑が見える。

あの日、記憶が蘇った場所。

私は、そこへ向かった。

使用人たちが、驚いた顔で見ている。

気にせず、歩く。

城を出て、向日葵畑へ。

まだ芽吹いたばかりの、緑の葉。

私は、その真ん中に立った。

そして、空を見上げた。

青い空。白い雲。

太陽が、輝いている。

風が、吹く。

土の香り。種の香り。

向日葵の香り。

私は、目を閉じた。

深呼吸。

そして、考えた。

私は、誰なのか。

田中陽子か。

アリアか。

答えは、すぐに出た。

両方だ。

私は、田中陽子でもあり、アリアでもある。

二つの人生を持つ、存在。

それが、私。

田中陽子として、三十年生きた。

サンフラワープロジェクトに、人生を捧げた。

でも、完成させられなかった。

過労死した。

その想いを、神様が見ていてくれた。

だから、もう一度チャンスをくれた。

別の世界で。

アリアとして。

ここで、向日葵を咲かせろと。

子どもたちに、希望を届けろと。

それが、私の使命。

前世から引き継いだ、使命。

そして、今世で果たすべき、使命。

私は、目を開けた。

涙が、流れていた。

でも、悲しい涙じゃない。

決意の涙。

私は、諦めない。

田中陽子が果たせなかった夢を、アリアが叶える。

向日葵を、咲かせる。

子どもたちに、教育を届ける。

平和な世界を、作る。

それが、私の使命。

二つの人生を持つ者の、使命。

「私は、転生者だ」

初めて、声に出して言った。

風が、答えるように吹いた。

向日葵の芽が、揺れる。

いつか、ここは黄色に染まる。

一面の、向日葵畑になる。

そして、いつか。

この国全体を、向日葵で埋め尽くす。

希望の花で。

私は、それを成し遂げる。

前世の知識を、使って。

田中陽子の経験を、活かして。

NGOで学んだこと。

組織運営。交渉術。教育理論。

歴史の知識。民主主義。科学技術。

全部、この世界で役立つ。

私には、武器がある。

三十年分の、知識という武器が。

それを使えば。

「この知識で、国を救えるかもしれない」

その言葉が、自然と口から出た。

そう。

救える。

いつか、必ず。

今は、まだ十五歳。

でも、いつか。

機会が来たら。

私は、動く。

この国を、守るために。

民を、救うために。

向日葵を、咲かせるために。

私は、向日葵畑を後にした。

足取りは、軽かった。

心は、晴れていた。

迷いは、消えた。

私は、私。

アリアであり、陽子でもある。

転生者。

二つの人生を持つ者。

そして、使命を背負う者。

城へ戻る。

マルタが、驚いた顔で迎えた。

「アリア様、大丈夫ですか」

「ええ、大丈夫よ」

私は、笑った。

「もう、大丈夫」

マルタは、涙ぐんだ。

「良かった。本当に、良かった」

私は、マルタを抱きしめた。

優しい人。

いつも、私を心配してくれる。

この人も、守りたい。

この城の人々も。

この国の民も。

全員、守りたい。

そのために、私は生まれてきた。

田中陽子の想いを継いで。

アリアとして。

父上の部屋へ向かう。

扉をノックする。

「入れ」

父上の声。

私は、扉を開けた。

父上が、執務机から顔を上げた。

「アリア」

「父上」

私は、深く頭を下げた。

「ご心配をおかけしました」

「体調は、もういいのか」

「はい」

私は、顔を上げた。

「もう、大丈夫です」

父上は、私を見つめた。

その目が、少し驚いているように見えた。

「お前、何か変わったな」

「え?」

「目が、違う」

父上は、立ち上がった。

「以前より、強い目をしている」

私は、少し驚いた。

気づかれた?

いや、まさか。

転生したことなど、わかるはずがない。

「何かあったのか」

父上が聞いた。

私は、少し考えて、答えた。

「はい。自分の使命に、気づきました」

「使命?」

「向日葵を咲かせること。人々に希望を届けること」

私は、真っ直ぐ父上を見た。

「それが、私の使命だと」

父上は、しばらく黙っていた。

そして、優しく微笑んだ。

「そうか。お前は、本当に向日葵のようだな」

「父上」

「太陽を向いて、真っ直ぐに生きる。それがお前だ」

父上は、私の頭に手を置いた。

その向日葵色の瞳で、私を見つめた。

「その目。向日葵色の瞳」

「はい」

「王家の眼を持つお前なら、きっと何かを成し遂げるだろう」

父上の言葉が、胸に響いた。

「立派になったな、アリア」

その言葉が、胸に染みた。

私は、涙をこらえた。

父上。

あなたを、守りたい。

この国を、守りたい。

そのために、私は。

でも、まだ言えない。

前世の記憶があることも。

転生者であることも。

いつか、話す日が来るかもしれない。

でも、今じゃない。

今は、ただ。

この知識を、密かに磨く。

この力を、蓄える。

そして、その時が来たら。

私は、部屋に戻った。

机に向かう。

紙とペンを取り出す。

そして、書き始めた。

前世の知識。

覚えている限りの、全てを。

歴史。政治。経済。科学。

教育理論。組織運営。交渉術。

農業技術。医療知識。公衆衛生。

全部、書き留める。

忘れないように。

この知識が、いつか役立つ日のために。

ペンが、紙の上を走る。

時間を忘れて、書き続けた。

三権分立。選挙制度。義務教育。

見慣れない言葉が、紙の上に並ぶ。

この世界にはまだない、概念たち。

でも、いつか必要になる。

気づけば、夜になっていた。

窓の外は、暗い。

星が、輝いている。

私は、ペンを置いた。

手が、痛い。

でも、心地よい痛みだった。

机の上には、何枚もの紙。

前世の知識が、ぎっしりと書かれている。

これが、私の武器。

いつか、この国を救う、武器。

私は、窓の外を見た。

遠くに、向日葵畑が見える。

月明かりに照らされて、ぼんやりと。

まだ芽吹いたばかりの、小さな葉たち。

でも、いつか。

いつか必ず。

あそこは、一面の黄色に染まる。

向日葵が、咲き誇る。

そして、この国全体も。

いつか、向日葵で埋め尽くす。

希望の花で。

私は、決めた。

私は、転生者だ。

二つの人生を持つ者だ。

そして、使命を背負う者だ。

田中陽子の夢を、アリアが叶える。

向日葵を、咲かせる。

人々に、希望を届ける。

平和な世界を、作る。

それが、私の使命。

私は、ベッドに横になった。

疲れていたが、心は充実していた。

目を閉じる。

明日から、また新しい日々が始まる。

転生者として。

使命を背負う者として。

私の、本当の人生が。

今、始まる。

この知識で、国を救えるかもしれない。

その希望を胸に。

私は、眠りに落ちた。


全てが、始まった。



十五歳の誕生日。


春分の日。


私は、向日葵畑にいた。


まだ芽吹いたばかりの、小さな緑の葉たち。


夏になれば、ここは一面の黄色に染まる。


でも、今はまだ春。


芽が出たばかりの、向日葵畑。


私は、その真ん中に座っていた。


膝を組んで、目を閉じて。


瞑想。


侍女のマルタが教えてくれた。心を落ち着けるには、瞑想がいいと。


最近、変な夢ばかり見る。


知らない場所。知らない人々。知らない言葉。


でも、なぜか懐かしい。


なぜか、涙が出る。


八歳の時もあった。


ここ、この向日葵畑で。


満開の花を見て、突然思った。


「この花、知ってる」


既視感。


でも、すぐに忘れた。


十三歳の時もあった。


父上の書斎で、歴史書を読んでいた時。


ある戦争の記述を見て、思った。


「この戦争、前にも見た」


違和感。


まるで、別の世界で経験したような。


でも、それも忘れた。


そして今、十五歳。


また、あの感覚が来ている。


だから、瞑想。


心を、空にする。


呼吸を、整える。


風が、吹いた。


暖かい風。


春の風。


そして、香りが運ばれてきた。


向日葵の香り。


まだ花は咲いていないのに。


去年の向日葵が残した、土の香り。


種の香り。


懐かしい香り。


その瞬間。


頭の中に、光が差し込んだ。


眩しい。


熱い。


何か、来る。


何かが、押し寄せてくる。


映像。


大量の映像。


止められない。


病院のベッド。


赤ん坊の泣き声。


「おめでとうございます、元気な女の子ですよ」


誰かが笑っている。


女性の声。優しい声。


母親?


でも、私の母親は、私が生まれてすぐ亡くなったはず。


これは、誰?


映像が、流れる。


止まらない。


幼稚園。ランドセル。教科書。


「田中陽子、ちゃんと宿題やってきた?」


田中陽子。


その名前が、頭に響く。


それは、私。


でも、私はアリア。


アリア・フォン・アイゼンブルク。


違う。


これは、夢。


ただの夢。


でも、映像は止まらない。


加速していく。


小学校。中学校。高校。


勉強。部活。友達。


受験。大学。就職。


そして、NGO。


サンフラワープロジェクト。


向日葵の、プロジェクト。


途上国の子どもたちに、教育を。


アフリカ。東南アジア。


笑顔の子どもたち。


学校を建てる。教師を育てる。


それが、私の使命。


田中陽子の、使命。


でも、疲れていた。


毎日、遅くまで働く。


休みもない。


過労。


体が、悲鳴を上げている。


でも、止められない。


子どもたちが、待っている。


プロジェクトを、完成させなければ。


オフィス。


夜の十時。


パソコンの画面を見つめる。


頭が、痛い。


胸が、苦しい。


めまい。


倒れる。


床が、冷たい。


誰かが、叫んでいる。


「田中さん!」


視界が、暗くなる。


ああ、これは。


死。


私は、死ぬ。


三十歳で。


プロジェクトを、完成させられないまま。


ごめんなさい。


子どもたち、ごめんなさい。


暗闇。


でも、光が見えた。


眩しい光。


そして、声。


「あなたの想いは、無駄にならない」


誰?


「別の世界で、プロジェクトを完成させて」


別の、世界?


「向日葵を、咲かせて」


向日葵。


そう、向日葵。


私の、使命。


「行きなさい。新しい人生で」


光が、私を包んだ。


そして。


赤ん坊の泣き声。


また、生まれた。


別の世界で。


アリアとして。



「ああああああああっ!」


私は、叫んでいた。


向日葵畑で、頭を抱えて、叫んでいた。


記憶が、止まらない。


三十年分の記憶が、一気に流れ込んでくる。


田中陽子の記憶。


日本。東京。21世紀。


パソコン。スマートフォン。電車。


学校。会社。NGO。


友達。同僚。上司。


全部、全部。


鮮明に。


まるで昨日のことのように。


いや、違う。


これは、前世。


私は、転生した。


田中陽子として三十年生きて、死んで。


アリア・フォン・アイゼンブルクとして、生まれ変わった。


「嘘、嘘よ」


私は、頭を振った。


「そんなこと、あるわけない」


でも、記憶は消えない。


あまりにも鮮明すぎる。


ただの夢では、ありえない。


これは、本物。


本当の記憶。


私は、二つの人生を持っている。


田中陽子の三十年。


アリアの十五年。


合わせて、四十五年分の記憶。


「私は、誰?」


わからない。


田中陽子なのか。


アリアなのか。


どっちが、本当の私?


涙が溢れた。


怖い。


自分が、わからない。


何のために、生きているのか。


何のために、生まれてきたのか。


全部、わからない。


「アリア様!」


遠くから、マルタの声。


でも、答えられない。


ただ、向日葵畑で、丸くなって、震えていた。



三日間、部屋から出なかった。


ベッドで、ただ丸くなって。


記憶が、頭の中を駆け巡る。


田中陽子の記憶と、アリアの記憶が、混ざり合う。


どっちが、どっちだかわからなくなる。


日本語が、頭の中で響く。


でも、口から出るのは、この世界の言葉。


混乱する。


私は、誰?


どこにいる?


何をしている?


マルタが、心配して何度も扉を叩いた。


父上も、来た。


「アリア、大丈夫か」


優しい声。


でも、答えられない。


私は、あなたの娘なのか。


それとも、別の世界から来た、よそ者なのか。


わからない。


何も、わからない。


四日目の朝。


私は、ようやくベッドから起き上がった。


窓を開ける。


朝日が、差し込んできた。


暖かい。


外を見る。


向日葵畑が見える。


あの日、記憶が蘇った場所。


私は、そこへ向かった。


使用人たちが、驚いた顔で見ている。


気にせず、歩く。


城を出て、向日葵畑へ。


まだ芽吹いたばかりの、緑の葉。


私は、その真ん中に立った。


そして、空を見上げた。


青い空。白い雲。


太陽が、輝いている。


風が、吹く。


土の香り。種の香り。


向日葵の香り。


私は、目を閉じた。


深呼吸。


そして、考えた。


私は、誰なのか。


田中陽子か。


アリアか。


答えは、すぐに出た。


両方だ。


私は、田中陽子でもあり、アリアでもある。


二つの人生を持つ、存在。


それが、私。


田中陽子として、三十年生きた。


サンフラワープロジェクトに、人生を捧げた。


でも、完成させられなかった。


過労死した。


その想いを、神様が見ていてくれた。


だから、もう一度チャンスをくれた。


別の世界で。


アリアとして。


ここで、向日葵を咲かせろと。


子どもたちに、希望を届けろと。


それが、私の使命。


前世から引き継いだ、使命。


そして、今世で果たすべき、使命。


私は、目を開けた。


涙が、流れていた。


でも、悲しい涙じゃない。


決意の涙。


私は、諦めない。


田中陽子が果たせなかった夢を、アリアが叶える。


向日葵を、咲かせる。


子どもたちに、教育を届ける。


平和な世界を、作る。


それが、私の使命。


二つの人生を持つ者の、使命。


「私は、転生者だ」


初めて、声に出して言った。


風が、答えるように吹いた。


向日葵の芽が、揺れる。


いつか、ここは黄色に染まる。


一面の、向日葵畑になる。


そして、いつか。


この国全体を、向日葵で埋め尽くす。


希望の花で。


私は、それを成し遂げる。


前世の知識を、使って。


田中陽子の経験を、活かして。


NGOで学んだこと。


組織運営。交渉術。教育理論。


歴史の知識。民主主義。科学技術。


全部、この世界で役立つ。


私には、武器がある。


三十年分の、知識という武器が。


それを使えば。


「この知識で、国を救えるかもしれない」


その言葉が、自然と口から出た。


そう。


救える。


いつか、必ず。


今は、まだ十五歳。


でも、いつか。


機会が来たら。


私は、動く。


この国を、守るために。


民を、救うために。


向日葵を、咲かせるために。


私は、向日葵畑を後にした。


足取りは、軽かった。


心は、晴れていた。


迷いは、消えた。


私は、私。


アリアであり、陽子でもある。


転生者。


二つの人生を持つ者。


そして、使命を背負う者。


城へ戻る。


マルタが、驚いた顔で迎えた。


「アリア様、大丈夫ですか」


「ええ、大丈夫よ」


私は、笑った。


「もう、大丈夫」


マルタは、涙ぐんだ。


「良かった。本当に、良かった」


私は、マルタを抱きしめた。


優しい人。


いつも、私を心配してくれる。


この人も、守りたい。


この城の人々も。


この国の民も。


全員、守りたい。


そのために、私は生まれてきた。


田中陽子の想いを継いで。


アリアとして。


父上の部屋へ向かう。


扉をノックする。


「入れ」


父上の声。


私は、扉を開けた。


父上が、執務机から顔を上げた。


「アリア」


「父上」


私は、深く頭を下げた。


「ご心配をおかけしました」


「体調は、もういいのか」


「はい」


私は、顔を上げた。


「もう、大丈夫です」


父上は、私を見つめた。


その目が、少し驚いているように見えた。


「お前、何か変わったな」


「え?」


「目が、違う」


父上は、立ち上がった。


「以前より、強い目をしている」


私は、少し驚いた。


気づかれた?


いや、まさか。


転生したことなど、わかるはずがない。


「何かあったのか」


父上が聞いた。


私は、少し考えて、答えた。


「はい。自分の使命に、気づきました」


「使命?」


「向日葵を咲かせること。人々に希望を届けること」


私は、真っ直ぐ父上を見た。


「それが、私の使命だと」


父上は、しばらく黙っていた。


そして、優しく微笑んだ。


「そうか。お前は、本当に向日葵のようだな」


「父上」


「太陽を向いて、真っ直ぐに生きる。それがお前だ」


父上は、私の頭に手を置いた。


その向日葵色の瞳で、私を見つめた。


「その目。向日葵色の瞳」


「はい」


「王家の眼を持つお前なら、きっと何かを成し遂げるだろう」


父上の言葉が、胸に響いた。


「立派になったな、アリア」


その言葉が、胸に染みた。


私は、涙をこらえた。


父上。


あなたを、守りたい。


この国を、守りたい。


そのために、私は。


でも、まだ言えない。


前世の記憶があることも。


転生者であることも。


いつか、話す日が来るかもしれない。


でも、今じゃない。


今は、ただ。


この知識を、密かに磨く。


この力を、蓄える。


そして、その時が来たら。


私は、部屋に戻った。


机に向かう。


紙とペンを取り出す。


そして、書き始めた。


前世の知識。


覚えている限りの、全てを。


歴史。政治。経済。科学。


教育理論。組織運営。交渉術。


農業技術。医療知識。公衆衛生。


全部、書き留める。


忘れないように。


この知識が、いつか役立つ日のために。


ペンが、紙の上を走る。


時間を忘れて、書き続けた。


三権分立。選挙制度。義務教育。


見慣れない言葉が、紙の上に並ぶ。


この世界にはまだない、概念たち。


でも、いつか必要になる。


気づけば、夜になっていた。


窓の外は、暗い。


星が、輝いている。


私は、ペンを置いた。


手が、痛い。


でも、心地よい痛みだった。


机の上には、何枚もの紙。


前世の知識が、ぎっしりと書かれている。


これが、私の武器。


いつか、この国を救う、武器。


私は、窓の外を見た。


遠くに、向日葵畑が見える。


月明かりに照らされて、ぼんやりと。


まだ芽吹いたばかりの、小さな葉たち。


でも、いつか。


いつか必ず。


あそこは、一面の黄色に染まる。


向日葵が、咲き誇る。


そして、この国全体も。


いつか、向日葵で埋め尽くす。


希望の花で。


私は、決めた。


私は、転生者だ。


二つの人生を持つ者だ。


そして、使命を背負う者だ。


田中陽子の夢を、アリアが叶える。


向日葵を、咲かせる。


人々に、希望を届ける。


平和な世界を、作る。


それが、私の使命。


私は、ベッドに横になった。


疲れていたが、心は充実していた。


目を閉じる。


明日から、また新しい日々が始まる。


転生者として。


使命を背負う者として。


私の、本当の人生が。


今、始まる。


この知識で、国を救えるかもしれない。


その希望を胸に。


私は、眠りに落ちた。

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