第7話 仲間集結と黒い影
政府との会談を終えた翌朝――
陽斗の家は、まるで作戦本部のような空気に包まれていた。
「よし、今日から本格的に“基金プロジェクト”を始動するわよ」
リビングのテーブルにノートPCを並べ、資料を広げる美咲。
その手際はまるで企業コンサルタントのようだった。
「お、おう……」
陽斗はまだ寝ぼけ眼だ。
しかし、玲奈はもう制服姿でキリッと座っている。
「寝ぼけてる場合じゃないでしょ、陽斗。今日から“仲間集め”よ」
「仲間……って、そんな簡単に集まるのか?」
「簡単じゃない。でも、あなたには“人を引き寄せる力”がある」
美咲がにっこり微笑む。
「……なんか恥ずかしいこと言うなよ……」
「とにかく、家族にも協力してもらうからね」
美咲の視線が陽斗の両親へ向く。
「俺たちが?」
父・剛が目を丸くする。
「ええ。お父さんには交渉担当として地方自治体との窓口を。お母さんには医療・福祉関係のアドバイザーをお願いしたいの」
「えっ、そんな大役を!?」
母・由紀が慌てるが、美咲は真剣だった。
「国が動く規模のお金を扱う以上、家族の信頼と専門性が大事なの。……佐藤家は“象徴”になる」
その言葉に、剛と由紀は顔を見合わせ、うなずいた。
「やるしかないな」
「陽斗を支えるのが親の役目だものね」
その日の放課後。
陽斗たちは学校の空き教室に集まっていた。
「ここを……仮の“作戦室”にするわ」
美咲がホワイトボードを立て、ペンを走らせる。
玲奈は教室の扉に立ち、「怪しい奴が来ないように見張っとく」と腕を組んだ。
「まず、必要な人材を整理しましょう」
ホワイトボードに書かれたのは――
経済・金融系 → 専門知識を持つ人材
IT・セキュリティ → 情報管理と防衛
医療・福祉 → 社会支援プロジェクト
地域再生 → 地方との連携担当
広報・メディア → 世論対策
「……まるで、国の省庁だな……」
「それだけの規模になるってことよ」
「やっほー、噂聞いて来ちゃった〜!」
突然ドアが開き、派手な金髪にピアスの女子が入ってきた。
クラスでも有名な陽斗の同級生、桜井 結衣だった。
「桜井……お前、なんでここに」
「なんでって、面白そうだからに決まってるでしょ〜。あんた、今や“伝説の高校生”なんだから!」
「伝説はやめろって……」
結衣はスマホを取り出し、陽斗たちを撮り始めた。
「で、私、広報担当とかどう? SNSの拡散なら得意だよ〜」
「……意外とありね」
美咲が真顔でうなずく。
「マジ!? よっしゃ〜! あたし、“伝説のチーム”の一員になる〜!」
教室内が一気に明るくなった。
続いて現れたのは、眼鏡をかけた地味な男子。
「……あの、呼ばれてないけど……セキュリティとか、ちょっと自信あるんで」
情報処理部の天才・**木島 慎**だった。
「木島……!」
「君が協力してくれたら、システム面はかなり心強いわ」
「……うん、面白そうだし。政府のデータベース覗いたことあるし」
「ちょ、それ犯罪じゃん!!」
「……未遂だから」
「未遂でもアウトだろ!?」
こうして、続々と個性豊かな仲間が集まり始めた。
夜。
陽斗の家の二階で、彼は一人、資料を見ながら呟いていた。
「……本当に、俺にできるのかな……」
その背中に――
そっと寄り添ってきたのは、玲奈だった。
「お前、いつの間に……」
「心配で。……でも、ちゃんと進んでるじゃん」
「俺なんか、みんなに引っ張られてるだけだよ」
「それでも、陽斗が中心だからみんな集まってるんだよ」
玲奈は小さく笑いながら、肩をポンと叩いた。
一方その頃――
都内の高層ビルの一室。
薄暗い部屋で、数人のスーツ姿がモニターを見つめていた。
「……高校生が基金? 馬鹿馬鹿しい」
「だが、金は本物だ」
「“あの金”を握れば、この国を裏から動かせる……」
モニターに映るのは、陽斗と仲間たちの姿。
その中央にいる氷室副総理の写真が赤く囲まれていた。
「……始めるか」
「はい、“計画”を」
闇の勢力が、静かに動き出した――。




