とある聖剣
「はぁ……退屈だ……」
聖域と呼ばれた古の土地の最奥に意志を持つ剣がポツンと刺さり時を過ごす
「忘れ去られる運命なのか、魔王の脅威は繰り返されると言うのに、私は忘れられていくのだな」
幾度となく自分を振り、共に旅を繰り返し魔王の脅威から世界を救った勇者と呼ばれた者達を思い返す聖剣
「あの頃は良かった」
聖域と呼ばれ聖剣を崇め敬ったエルフ達は世代が交代、外界との交流も深め今では多人種共々栄える森林都市を形成している
街の中心にそびえ立つ巨大な聖樹の根元に眠る聖剣を知る者はもう居ない、聖域の道は根に閉ざされそこに空間があるという事さえ知る者はいないだろう
「大体勇者の価値が著しく下がったのが元凶だな」
自身の存在意義が著しく低下したのは、勇者と呼ばれながら不甲斐ない者達が悪いと彼は小言を漏らす
「最近はどこにでも居そうな能力で倒してしまうし、勇者は当て馬扱い、挙句の果てにはレプリカが聖剣だと国宝扱い」
時代のニーズが彼を求めていない事は薄々彼も感じているのだろう、清廉潔白、純真無垢な勇者は過去の伝説、彼の役目はもう来ないのかもしれない。
「勇者ハーレムの時は良かった、覗き放題だったからな」
傍らに置かれ、勇者とヒロイン達の夜の営みをしっかり記憶に焼き付けて鼻の下を伸ばす、聖剣はムッツリだった。
見る為に意志を持つ事を黙り、無機質な剣であると偽った事が後に聖剣の価値を貶めた事を彼は気づいていなかった。
伝承が途絶え、彼が忘れ去られたのが聖剣の下心が原因で、自業自得と気づくのはいつの事になることやら
昔は意志を持つ剣、破邪の剣は付き物でしたね、今でもちらほらあったりしますが、魔剣の方が多い気がする作者です。