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第93話 竜、日常へ戻る?

 ロイヤード国へ行っていたディラン達とは別に依頼をこなしていたガルフ達も仕事を終えていた。

 彼等も屋敷でヒューシ達と合流し、報告をし合えっていた。


「へえ、ロイヤード国ではそんなことがあったのか。大変だったな」

「そうなの。最悪、なにかあっても死人が出るほどじゃなさそうだったけどね。だけどディランさんがサッと解決してくれたの」

「流石パパね!」

『ディランお父さんなら間違いないです!』


 ガルフとユリが顛末について話していると、横からお土産のお茶を飲みながらトーニャとリーナがドヤ顔で頷く。さらにユリが話を続ける。


「犯人をこっちへ連れて帰ることになったから一日で往復することになったけどね」

「あー、ドレス着れなかったから残念ね」


 レイカが仕方ないと苦笑すると、ヒューシが眼鏡の位置を直しながら言う。


「……色々と理由はあるけど、コレルに仲間が本当に居ないのかどうかを確認するのが一番だったんだ。あいつを助け出そうとする人間がいないかとかだな」

「なるほどなあ。まあ、俺たちはおまけみたいなもんだったしいいじゃねえか」

「まあね! そっちはどうだったの?」

「えっとね――」


 ユリの質問にレイカが答えた。

 ギルドから出されていたのは魔物が活発になっているところへ調査に行くというものだった。

 喧嘩などのいざこざ事件が発生した時期と被っていた依頼である。

 

「結局トーニャが強いからすぐに解決したけど、喧嘩していた人間みたいに狂暴になっていたわね」

「ブルファング同士がぶつかり合っていたんだぜ? あれが街道にでたら困るから倒したけど、いつもより強かった」

「あたしはあれくらいの個体なら全然余裕だけど、確かに強かったかもね」

『初めて魔物を見たけど、怖かった……』


 レイカとガルフが肩を竦めて面倒だったと口にし、トーニャは唇に指を当てて、確かに狂暴だったかもと言う。リーナも精霊化が出来るため木の上かはらはらしなが見ていたらしい。


「ふむ……恐らくだが、それもコレルのせいだったかもしれない」

「そうなの?」


 ヒューシがそれに対してコレルのコンフュージョナーという魔法ではないかと言う。


「ヴァール様と同じ学院に通っていたころには知らなかったみたいだけど、どうもコレルはドルコント国出身らしい。コレルが言うにはこのクリニヒト王国とロイヤード国がぬるいということで今回のことをやらかしたんだと」

「うわ、凄い迷惑……自分が王族でもないのに放っておけって話よね……」

「まったくだ」

『でもその人、王子様が引き取ったんですよね?』

「ああ。両親は向こうに居るらしいが、あんまり帰っていないから構わないようだ。本人もそれでいいと」

「……仲、悪いのかな?」


 コレルの処遇は甘いものであったが、案外うるさく言うこともなく大人しくしているとヒューシが告げた。

 すると両親と仲のいいトーニャがポツリと漏らす。


「その辺りは話してくれなかった。刑を受ける代わりに仕事をするとだけ言って、今は色々と覚えさせられているんじゃないかな?」

「ま、確かに甘いけど……よく黙ってやっているわね」

「よく分からないが根は真面目みたいなんだよ。それにあの魔法も独自開発したオリジナル……らしい。ある種の天才かもしれない」

「すげえな。悪いことに使わなければお金いくらでも入りそうだ」


 コレルはすでに失敗した計画について反逆する気も無さそうだとヒューシが語り、ガルフはお茶を飲んでから使い道次第でお金が入るのではと言う。


「そうでもないわよ。精神に作用する魔法って使いどころが難しいもの」

「トーニャの言う通りね。相手を怒らせるだけの魔法でどうやって稼ぐのよ」

「あー、確かにそうだな……」


 トーニャとレイカに言われてガルフは頭を掻きながら思いなおしていた。

 ヒューシもそれに頷いた後、話を締める。


「他にもできそうだが、そこは語らなかったな。なんにんしても狂暴化する魔物の件も収束するだろう」

「私達のおかげでね♪」

「お前は遊んでいただけだろうユリ……」


 なぜか笑顔でユリがウインクをするがヒューシが顔をしかめて小突いていた。

 

「で、少し話が変わるんだが……僕は今、ヴァール様に城で仕事をしないかと誘われている」

「「「ぶっ!?」」」

「うわ!?」

『汚いよー!』


 ヒューシがとんでもないことを口にし、ガルフとレイカ、そしてユリが噴き出した。


「なんでそんなことに!?」

「私も今知ったんだけど!?」

「僕も良く分からないんだが、祭りの時に仕事ができそうだと感じたらしい」

「それで……どうするの? 冒険者、辞めちゃうってこと……?」


 妹のユリが珍しく不安気に尋ねる。

 するとヒューシは眼鏡の位置を直しながら口を開く。


「……保留してもらっている。給金の話も聞いていて魅力的だが、僕はやはりこのパーティメンバーだからな」


 フッと笑うヒューシにガルフが頭の後ろに手を組んで言う。


「別にここに帰ってくるならいいんじゃねえ? 金が入るならおじさん達も助かるだろうし」

「そうね。こっちに呼べば?」

「あ、それいいかも!」

「なんと……!?」


 村出身組は肯定的で、にひるに決めたヒューシはガクッとずっこけた。そこでトーニャが苦笑しながらまあまあと言う。


「ひとまず保留だし、もっとよく話し合いましょ♪ あたしもパーティに入ったばかりだし、魔法もまだ教えてないしね」

「トーニャ……! そう、そうだよな!」

『ふふ、ヒューシお兄さんがお城でお仕事するのもかっこいいと思いますー!』

「……考えておこう」


 どう転ぶか分からないが、ヒューシが貴族に認められたのは喜ばしいことなので今日はパーティをしようとユリが提案しそれに乗ることにするのだった。

 

◆ ◇ ◆


「ダル、また山芋か?」

「わほぉん♪」

「うぉふ」

「わん」


 ディラン達も日常に戻っており、洗濯物を干すがてら散歩をしていた。

 てくてくと山を歩いていると、ダルが好物を探り当てて興奮していた。いつもダウナー気味のダルが活発になる珍しい瞬間である。

 ヤクトとルミナスもそんな兄を手伝い、もりもりと土を掘る。


「育てるの難しいんでしたっけ?」

「できなくはないが、この細長いのは難しいのう」


 自然薯という山芋は長さが必要なため難しかったはずだとディランが返していた。

 

「まあ、山にはあちこちあるじゃろうし、たまの御馳走ということにしておけばいいえ。まだ山の裏側には行っておらんからのう」

「そうですね」

「わほぉん!」

「あー♪」


 ディラン達は米もあるしこれ以上栽培は増やさなくてもいいだろうと結論付けて、たまに狩りと一緒に掘るかと決めた。

 そこで掘り終えた、ながーい自然薯を三頭で咥えてリヒトへ見せていた。尻尾を立てたダルが嬉しそうである。


「ぴよー」

「ぴ!」

「ぴよっ!」


 するとポケットからひよこ達が飛び出し、それぞれの頭に乗って毛づくろいをする。労っているらしい。


「あらあら、お鼻が真っ黒ね。帰ったら洗ってあげないと」

「これだけが難点じゃのう」


 そのまま背中に背負った籠へ自然薯を入れて再び山頂を目指す。


「あーい♪」

「こけー」

「うむ、天気がええわい」


 洗濯物を干してそのまま下山して家路に着く。ウサギ型の魔物を狩るなどして到着すると、家の前に馬車があった。


「あら?」

「来客か?」

「うぉふ!」

「こけっこ!」


 ヤクトとジェニファーが近づいていく中、荷台を背にしてぐったりしている人間を発見した。


「む、こやつは……ザミールじゃ」

「そういえばお馬さんも見たことありますね。随分疲れているわ、休ませてあげましょう」

「おお、そうじゃな。寝ているようじゃが、一体なにがあったんじゃろうな」


 急な来訪者は商人のザミールだった。

 最近、姿を見ないとガルフ達が言っていたが、随分とボロボロになって発見された。

 馬も本人も生きているのでディラン達は早速介抱することにするのだった。

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