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老竜は死なず、ただ去る……こともなく人間の子を育てる  作者: 八神 凪


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第82話 竜、お祭り参加をちょっと渋る

「というわけでロクニクス王国の城下町でも似たような事件が起こっています。父からもギリアム殿下に原因など無いか聞いてくるように言われています」

「なるほどなぁ。それでもこっちより規模は小さそうだが、似た感じか」

「先ほどのギリアム様のお話からするとそのようですな」


 トワイト達がほのぼのとペット達と遊んでいる中、ディラン達は重要な話を交えていた。

 もちろんメインは『暴力事件』であり、祭りの最中に起こりうるという話から掘り下げた形だ。


「ディラン殿はどう思われますか?」

「ぐう」

「こけ!」

「お、おお……すまんすまん」


 ヴァールに話を振られたがディランは腕組みをして船を漕いでいた。それをジェニファーに叱られ慌てて目を開ける。

 

「ま、まあ、ディラン殿には本来関係の無い話ですから退屈な話で申し訳ありません」

「うむ。しかし、友人が困っておるなら協力はするぞい。祭りは思い切ったことを考えたのう」


 ヴァールが困った顔で笑いながらディランへ言うと、首を鳴らしてジェニファーを手元に引き寄せてから協力すると答えた。


「助かるよディラン殿。この案を思いついたのはいくつか理由があってな。町の人間がギスギスしているのが良くない。こういう時だからこその楽しいイベントをする。ギルファの誕生日も近い。……そして、この祭りでなにかをしている者が居れば動きがあるのではないかと考えているのさ」

「なるほどのう」

「それで民が危険に晒されるのは良くないのでは……?」


 ギリアムの意見にディランが頷く。だが、ヴァールは眉を顰めてそれはやりすぎではと疑問を呈する。


「ま、そこはなんともってところだな。今のところ人死にが出ていない。本当にただの偶然ならそれでいい。これから先、人死にが出ないようにするために必要な措置さ」

「相変わらずですな」

「俺はモルゲンロートみたいに『良い王様』ってやつじゃあねえ。こうやって民やお前達を利用するし、少しくらい汚いことも辞さん。結果が良ければってやつだ」

「そ、そうなんですね……」


 バーリオに言われてギリアムはくっくと肩を震わせながら自分のやり方というものをヴァールに伝えた。

 若く、モルゲンロートを見て育ったヴァールからするとやり方が強引すぎると引き気味に答えた。


「犯人なんてものが居るかもわからねえ。適当に祭りを楽しんでくれりゃいいよ。とはいえ、調査はしたい。ヴァールは城や祭りで顔を出すための馬車で俺と一緒に居るだろうからなしだ。それよりも町を闊歩するであろうディラン殿やバーリオに頼みたいと考えている」


 もちろんウチの兵や騎士も町に出すがと言いながらギリアムが笑う。


「どうしてワシらを?」

「外の国の人間だからさ。慣れちまった俺達より、他の視線での意見を聞いてみたいってところかね?」

「なるほど……しかし、ワシもあまり外に出たくはないのじゃが……」

「ええー……? どうして」


 ギリアムは割と消極的なディランに口を尖らせる。

 内容を尋ねられたディランは、前に話したことのある何かの拍子で人間を傷つけてしまいそうなのが嫌だと進言した。


「あー、まあ確かにアレだもんな」

「そういうことじゃ。城で遊ばせてもらえれば助かるんじゃが」

「アレ?」

「事件は置いといても楽しんで欲しいんだけどなあ。責任は俺が取るし、散歩と思って行ってみてくれよ」

「むう」

「アレとはなんです?」


 ギリアムは正体を知っているため言葉を選びながら頭を掻く。ヴァールが度々口を挟む。


「ヴァール様は知らなくても大丈夫ですぞ」

「酷くないですかバーリオさん!?」


 そこでバーリオがフッと笑いながら窘めていた。もちろん納得するはずもなくヴァールが驚いて叫んでいた。


「ならば五日行う内、少しだけ町を見させてもらおうかのう。すまんな、小心者でな」

「分かった。助かるぜディランさん。というわけで聞いたなお前達も。彼が移動しているのを見かけたら周囲の状況に注意だ」

「……小心者……あの時の剣幕でか……」

「シッ、聞こえるぞ」

「だ、大丈夫です」


 当時、ギリアムへ激高した時のディランを見た騎士が集まっているため、訝し気な顔を向けたり、冷や汗をかいていたりとディランに対する視線は様々だった。


「と言う訳で頼むよ。ペット達がはぐれないようにだけしてもらえると助かる」

「まあ、ひよこ以外は大丈夫じゃろ」

「こけ」

「お前が頷くんだ……」


 話はまとまったということでギリアムはディランのペット達に気遣いをして終了となった。

 ジェニファーが承知したとばかりに頷くのを見てヴァールが不思議そうな顔をする。

 祭りの間、ヴァールは馬車で町を回り、ディランやバーリオが町の人と同じく回ることになった。

 しかし、ヴァールはそこで手を上げて口を開く。


「ギリアム殿下、私も自分の足で見て回りたいのですがいかがでしょう?」

「なに? お前はモルゲンロートから預かった身だし、それは許可したくないところだな」

「そこをなんとか。バーリオさんと騎士数人が一緒ならなんとかなるかと。私も剣は使えますし、成人してもいますからね」

「そうだなあ……」

「おとうーさーん!」

「んあ?」


 ヴァールの提案にギリアムが唸っていると、彼のところへヤクトに乗ったギルファがやってきた。ぎょっとする一同だが、ギリアムはそんな息子の頭を撫でて笑う。


「おー、魔物に乗っているのか。やるじゃないかギルファ」

「うん! ヤクト、凄いんだよ! 僕を乗せても全然ふらふらしないんだ」

「うぉふ」


 ヤクトにまたがって興奮気味にギルファが語ると、ドヤっとした顔でヤクトが鼻を鳴らしていた。


「そやつもまだ子供じゃが、鍛えておるからのう」

「そうなんだ!」

「ぴよ」

「こけ?」

「レイタも居たのか」

「ぴよー♪」


 そこでひょっこりヤクトの頭の毛からレイタが顔を出してジェニファーとディランが声を出した。


「うん、リヒト君が触っていいよって貸してくれたんだ」

「ギルファ、戻ってきなさいー」

「あ、お姉ちゃんが呼んでるからまた行くね! 僕もこれくらいできるんだってちょっと嬉しかったよ」

「良かったな」

「気を付けて乗るのじゃぞ」

「はーい! 戻ろうヤクト」

「うぉふ!」


 カーラに言われてギルファが嬉しそうにヤクトの背中を撫でて戻っていく。ギリアムは苦笑しながら見送る。


「そういえば土産は娘のと言っていたが、息子もいたのじゃな」

「……あー、そうだな。その辺はまた……と思ったが一応聞いてもらうか。ディラン殿は知らないしな」

「ん?」

「もしかしたら気づいたかもしれないが、ウチには王妃……つまり俺の奥さんがいねえ」


 そこでギリアムが語ったのは自分の妻のことであった。

 昔から身体があまり強くなかった彼女は、息子であるギルファを産んでから程なくして亡くなったという。


「……産まなければ長生きができた可能性はあったんだよ。だけど、あいつは『カーラが嫁いだら国を継ぐ者がいなくなる』とか言ってギルファを産んだんだ」

「なるほどのう。それは、残念なことじゃ」

「だな。俺は息子も生まれたし、仕方がないと思っていた……思っていたんだ」


 ギリアムはそこで自嘲気味な笑顔になり、続ける。


「この前、ドラゴンを追った時に陥った時、俺はギルファを疎んでいる……と感じていたんだよ」

「無意識に妻を殺した、とでも思っておったということじゃな」

「ああ。ディラン殿のところから戻って以降そういった感情はすっかりない。あいつを怯えさせちまったから構うようにはしているよ」

「なら大丈夫じゃろ。さっき、ヤクトに乗った坊主はいい笑顔をしてお主の下へ来ておった」

「そうかな? ……っと、辛気臭い話になっちまったな! とりあえず祭りは明後日からだ。それまでゆっくりしていってくれ」


 後はそれぞれ部屋へ行ってもらうだけとなり、ギリアムは一旦この話し合いを終了させる。祭りの概要はまた夕食時にでも伝えると告げた。


「承知しました! 私もギルファ君やアッシュウルフ達と遊びたいな」

「ディランさんと僕がお供しますよ」

「じゃな。良いか?」


 しかしヴァールは部屋にいかず、折角なのでギルファ達と遊ぶと言い出した。

 話を聞いてギルファに構おうという魂胆である。


「おう、もちろん! 俺も加わるかな」

「私も行きましょう」

「なら騎士達は全員別宅だな!」

「「「ええー……!?」」」


 そんな調子でロイヤード国へと足を踏み入れたディラン達一家。

 そして二日後、カーニバルが始まる――

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