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第81話 竜、自慢のペットを紹介する

「よく来てくれた、ヴァール王子!」

「お久しぶりですギリアム陛下」


 ディラン達が城へ到着すると、すぐにクリストは謁見の間へと案内をした。

 人数が多いのでまずはここで顔合わせと人数の把握をしたいという願いを受けて集まった形だ。

 早速ギリアムがヴァールを見て顔を綻ばせると、ヴァールがお辞儀をして挨拶をした。


「まあ、ひと月経たないくらいだけどな。親父さんと王妃は元気だろ?」

「そうですね」


 ヴァールは苦笑しながら頷く。

 ギリアムはそのままヴァールの後ろに居るディラン達へ声をかけた。


「ディラン殿にトワイトさん、先日はどうも」

「久しぶりじゃのう」

「その節はどうも」

「あー!」

「リヒトだったか? 相変わらず元気がいいな! それとヒューシとユリだったか?」

「はい。名前を覚えていただき光栄です」

「光栄です」


 一家がそれぞれお辞儀をする。リヒトも真似をすると、ギリアムが笑っていた。

 ヒューシとユリにも気づき、ギリアムが声をかけそれぞれお辞儀をした。

 そこでカーラが一歩前へ出る。


「ヴァール様とバーリオ様以外の方は初めまして。私は王女のカーラと申します。こっちは弟のギルファです」

「は、初めまして!」

「あい!」

「「「ぴよっ!」」」

「え、ひよこ!?」


 カーラとギルファの挨拶にリヒトが応えると、ポケットからひよこ達が顔を出して続いた。

 ギルファがびっくりしていると、今度はアッシュウルフ達が揃って鳴いた。


「「「わふ」」」

「うわあ! 魔物だ! お父さん魔物だよ!?」

「大丈夫だ。こいつらはディラン殿達の家族だから襲ってはこないって」


 きっちり並んでお座りをしているダル達を見て、ギルファは青い顔でギリアムの下へ飛んで逃げた。

 そんな彼を、ギリアムは背中を撫でて説明しているとディランが口を開く。


「うむ。言い聞かせておる。お嬢さんに坊ちゃん、初めましてじゃ。ディランという」

「トワイトです。息子のリヒトよ」

「あう♪」

「はい! みんな可愛いですね♪」


 カーラは物怖じせず、笑顔でスカートのすそを上げながらもう一度挨拶をした。

 ギルファも恐る恐る愛想笑いを浮かべて頭を下げる。そこでギリアムがもう一声出していた。


「ロクニクス王国の騎士殿もご苦労だった。二人一組で申し訳ないが、別宅にて部屋も用意してある。ヴァール殿が宿泊するルームと同じ建物なので安心して欲しい」

「承知しました。手厚い歓迎、ありがとうございます」


 その言葉にバーリオがヴァールの前に出て、膝をついてからお礼を述べた。

 ギリアムが頷くとバーリオに立つよう促す。


「さて、と。堅苦しい挨拶はこれくらいにするか。いやあ、すまんな呼びつけたりして。とりあえずヴァールとバーリオ、ディラン殿達はガーデンに来てくれ。茶を出す」

「ウチの騎士達はどうしましょうか」

「二十人は連れて歩けないし、五人だけ護衛につけて残りは一旦、別宅に行ってもらっていいか?」

「承知しました。では選別をしましょう――」


 バーリオが連れて行く騎士を指定し、別宅へ移動する騎士はクリストが案内を行い、残りの騎士やディラン達は庭へと移ることになった。

 程なくして到着すると、トワイトが目を輝かせる。


「まあ、キレイな庭ですね!」

「あーい♪」

「こけー」

「わ!? 今度はニワトリが出て来たよ!?」

「こやつで最後じゃ」

「いっぱいいるのですね……」


 そこへカバンに入っていたジェニファーが顔を出し、またギルファが驚いていた。

 カーラが呆れて笑っていると、用意されていたテーブルセットに到着する。


「ここだ。まあ、座ってくれ」

「ありがとうございます」

「我々は立ったままで大丈夫です」


 ギリアムが着席し、ヴァールが続く。カーラとギルファも座り、ロクニクス王国の騎士達はヴァールの背後、一メートルほどの場所に待機した。


「私達はお庭を散歩してもいいかしら?」

「それは構わないよ。だけどディラン殿には同席をお願いしたいんだけど」

「ふむ、承知したぞい。トワイト、リヒトとペット達を連れて遊んでやってくれ」

「わかりました。うふふ、キレイなお花が咲いているわ」

「あーい♪」

「わほぉん」

「あ、いいなあ」

「……」


 ギリアムがディランに席に居て欲しいと頼んだため、トワイトとペットを散歩に行かせることにした。

 ダルがついていくのを見て、ユリが羨ましそうに言う。ギルファも無言でそちらを見ていた。

 

「ふむ。ならカーラとギルファ、トワイトさん達と一緒に居てくれるか?」


 するとそこでギリアムがギルファを見て少し考えた後、カーラと共にトワイトへついていけと指示を出す。


「え? わかったわ」

「僕も?」

「ああ。魔物なんて滅多に見れないから撫でたりしてみりゃいい」

「……! うん!」


 そこでギルファが満面の笑みを浮かべて拳を握る。その様子を見てヒューシが手を上げて口を開く。


「なら、ユリもあっちに行っていいですか? 久しぶりにアッシュウルフ達と会ったので」

「おお、いいぜ。ウチのカーラと同じくらいだろうしな」

「ありがとうございます! ヒューシ、サンキュー♪」

「ユリさんね、カーラよ。よろしくね」

「はい、カーラ様!」

「様はいいわよ?」

「い、いやあ、さすがに……」


 ユリもトワイトと一緒に行くことになり、早速追いかけて行った。

 ギリアムは肩を竦めて笑いながらカーラとユリの背中を見送ると、話を続ける。


「すまない、待たせたな。お茶でも飲みながら近況を話そうぜ」

「まあ、ワシはそれほど面白い話はないがのう」

「ははは、ディラン殿ほど面白いことがありそうな人は居ないけどなあ」

「そうなんですか?」

「ギリアム様」

「おっと、ヴァールは知らなかったか。ま、それじゃお茶も来たことだし乾杯をしよう」

「こけ」

「うお!? ニワトリ!?」


◆ ◇ ◆


「ここならお花が見れるわね」

「あーい♪」

「うぉふ!」

「わん!」


 一方、散歩をしていたトワイトはいい場所を見つけて芝生に腰をかけた。リヒトが寄って来たヤクトとルミナスを撫でていると、ユリ達が追いついた。


「ダルぅ♪」

「わほぉん……」

「わ、お姉さん凄い! 魔物に抱き着くなんて」

「なんか迷惑そうにしている顔ね……」


 ユリは早速カーペットみたいに寝そべっているダルに抱き着いた。まだ信用できていないギルファはカーラの手を繋いだままどっきりしていた。

 カーラはダルの顔を見て嫌そうに見えていると呆れる。


「可愛いですよね♪ 私のお気に入りなんです」

「あーい!」

「「わふ」」

「あれ? 他の二頭が来るよ」


 ダルに頬ずりをするユリに、リヒトが手を上げて声を上げる。するとヤクトとルミナスがユリの方へ向かう。

 ギルファがきょとんとしていると二頭はユリの前に立つ。


「あ、ちょっと、どうしたの? あはは、そんなに頭をこすり付けて! なになに?」

「「わふ」」

「わほぉん」

「うふふ、ダルちゃんばかりじゃなくリヒトがヤクトちゃんとルミナスも構えって言っているみたいね♪」

「へえ、そうなんだ」

「あうー」

「ぴよー」

「え? 僕?」

「私も?」


 ギルファが感心するとリヒトがひよこ達をポケットから出して膝に乗せると、両手を振ってギルファとカーラを呼んでいた。

 首を傾げて二人が近づくと、リヒトが笑顔でひよこを差し出した。


「あい♪」

「撫でていいって言っているみたい」

「あは、可愛い♪ リボンがオシャレね」

「わあ、ふわふわだー!」

「ぴよー♪」

「ぴよ♪」

「ぴよぴー♪」

「あーい♪」


 ギルファが笑顔になり、カーラも可愛いと連呼する。ひよこ達は満足気に鳴き、リヒトも嬉しそうに手を広げて喜んでいた。


「みんな仲良しでいいわね♪」

「あい!」

「うぉふ!」


 そこでリヒトがまた声を上げると、ヤクトがやってきた。そしてギルファの前ですちゃっとお座りをする。


「え? 撫でていいの? 凄いなあリヒト君……あ、この子もふかふかだ」

「よく見るとあまり大きくないのね。あ、ホントにふかふかだわ」

「うぉふ♪」


 ひとまずロイヤード国に到着した一家は早速ペット達と共にカーラとギルファと仲良くなるのであった。

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