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第61話 竜、もてなされる

 ガルフ達と町を見ながら城へ向かい、程なくして城門へとたどり着いた。

 顔見知りの門番ということもあり、ディランを山の管理者だと告げたらすぐに通してくれた。


「便利なもんじゃ」

「それだけ重要ですからね。あ、受付は僕がしてきますよ」


 山の管理者証を手にしながらディランが感心する。ドラゴンの一家は存在自体が重要だからとヒューシが言い、そのまま受付へと向かった。


「まあ、パパは竜王と言われてもおかしくないからね」

「これ、ここでその話はやめんか」

「はぁい」

「この子は……本当に分かっているのかしらね」


 そういうところを気を付けるんだとディランに軽く小突かれ、トーニャはちょっと嬉しそうに顔を綻ばせた。

 レイカが呆れていると、受付に行っていたヒューシが戻ってくる。


「三組の謁見があった。一時間ほどで順番が回ってくると思う」

「すまんな。勝手がわからもんじゃから」

「一時間かあ。お昼を食べて来ても良かったわね」

「確かに……腹が減ったな……」

「あはは、気づくとそうなるよねー」


 また町に戻って食堂を探すのは時間がかかるため、このまま待っていた方がいいだろうと判断して馬車を駐車場となる厩舎に連れて行くことにした。


「ハリヤーには水と野菜をあげて待っている間に食事にしてもらおう」


 ガルフはそう言って用意してやり、首を撫でてから食べるように示唆してあげた。


「うー?」

「お馬さんはお休みするのよ」

「あーう」


 柵に入れられたハリヤーに触ろうとリヒトが手を伸ばす。だが、トワイトが眠る仕草をしたらなんとなく通じたようで、少し名残惜しそうにバイバイと手を振っていた。


「ぴよー」

「別にずっとお別れじゃないから大丈夫だって」

「ぴ♪」


 ひよこ達も水を飲むハリヤーを見てどうして一緒じゃないのといった感じで鳴いていた。そこはユリがふわふわの羽毛を撫でながら大丈夫と諭す。


「リヒト君、動物好きですよね」

「なんだかふさふさした毛とかが好きみたいなのよ。お父さんが抱っこすると髭をよく触っているの」

「そんなに長くないんじゃがのう」

「あー♪」


 ディランが顎髭を触るとリヒトも触りたいと手を振るが、それはさせなかった。

 厩舎を出て再び外へ戻り、一行は謁見の時間まで適当に待つことにした。


「今のうちにおむつを替えて、ミルクを飲ませておこうかしら」

「手伝いますよ!」

「あたしもー!」

「ありがとう、レイカちゃん、トーニャちゃん」


 リヒトのおむつを替えるためベンチに寝かせ、ディランが背負っていた大きなカバンから冷えたミルクを出していると、ふいに声をかけられた。

 

「まあ、可愛い赤ちゃんですわね!」

「わかりますか♪ ウチの子、可愛いんですよ」

「ウチの子も小さい頃はこんな感じでしたわ。懐かしいです」


 穏やかな話し方をする女性がおむつを変えられているリヒトを見てそんな感想を口にする。

 そこでレイカがぎょっとして叫んだ。


「って王妃様!?」

「あら、モルゲンロートさんの奥様でしたか」

「夫を知っているの? そういえばあなた達は最近、夫に気に入られている冒険者さんですわね!」

「きょ、恐縮です」

「お久しぶりです」


 ローザがガルフ達を確認すると、手を合わせて知った人達だと口にする。

 ガルフ達が膝をついて礼をすると、続けて夫婦が頭を下げた。


「初めまして王妃様、私はトワイトと申します。この子はリヒトです。おしめを変えているところ申し訳ありません」

「ワシはディランという。モルゲンロート殿には世話になっておる」

「これはご丁寧に。わたくしはローザ。モルゲンロートの妻ですわ。それにしても夫の友人なのにどうしてこのような場所に?」

「謁見を申し入れたのです。ディランさんがお話したいことがあると山から出て来たのです。まさかローザ様が来られるとは……」

「わたくしは少しお散歩をしていたの。それより、事情がおありなら入っていただいていいのに」


 お付きのメイドと騎士を連れたローザが目を見開いて驚いていた。

 ディランのことは名前で知っており、山の管理者でそういう人が居る、というのは聞いたことがあった。

 そのため従者やメイドに声をかけてくれれば入れると言う。


「それは他の者に示しがつかぬじゃろう。ありがたいが時間はあるし、気長に待たせてもらうわい」

「しかし……」

「あと1時間もないですし、大丈夫ですよ。この子にミルクでもあげながら待ちますから」

「あーい♪」

「ぴよー♪」


 ディランが用意したミルクを受け取り、トワイトが微笑みながら大丈夫ですと答えていた。抱っこされたリヒトはお昼ご飯に歓喜する。

 そこでガルフのお腹が鳴った。


「おっと……リヒトの飲みっぷりでお腹が空いてきたな」

「謁見が終わったら食べに行きましょ。我慢我慢!」

「だなあ。それにしてもよく飲むぜ」


 ガルフが顔を赤くして頭を掻き、レイカが苦笑しながら後でレストランにでも行こうと話す。しかしそこでローザの目がキラリと光り、笑顔で言う。


「お昼はまだのようですわね? わたくしのお客様、ということでお食事に招待させていただけませんか?」

「む、しかし……」

「それは申し訳ないですよ」

「いえ、小さい子をこのまま野ざらしで待たせる方がいけませんわ! ぜひ、屋根のある場所へ行きましょう。そういえばバーリオはあなた方をご存知ですわね、連れてきてもらえるかしら?」

「かしこまりました」


 ローザは傍にいたメイドにそう言うと、バーリオを呼ぶために駆けだしていく。

 一同は顔を見合わせたあと、待つことにした。

 

「あら、ポケットに三羽も? 可愛いですわね~」

「お互い、お気に入りなんです♪」


 その間、奥様同士が仲良く会話をする。子供はこのころが一番手がかかるが可愛い、最近首が座ったといった話で盛り上がっていた。

 やがてメイドと一緒に見慣れた男が現れた。


「ディラン殿……!? 山から下りて来られたのか」

「うむ。ちと娘のことでな。それで謁見に来たのじゃ」

「トーニャ殿の? 謁見……の必要はないと思いますぞ。今、本日ラストの謁見をしておりますので、もうすぐ終わるかと」

「お昼を食べていないそうなので来客用の席へ連れて行ってくださいな」

「かしこまりました。ではこちらへ」

「むう、すぐ帰るぞい」

「まあまあ、彼等もお腹が空いているようですし」


 ディランは話だけでいいと言うも、食べていきましょうとバーリオが言う。

 ガルフ達が腹を空かせているため、ここで断ると彼等が折角のご馳走にありつけないと小声で提案された。


「……確かに、ここまで連れて来てくれたのにワシらが断って台無しにするのも悪いか」

「そういうことです。では行きましょう」

「ふふ、どうぞこちらへ♪ お話してみたいと思っていたのですよ」


 ローザは微笑みながら、モルゲンロートが山へ行った後に話すディラン達に会ってみたかったと語った。


「いいのだろうか……」

「ま、まあ、折角だし……」


 ヒューシとユリが困惑しながら呟く。そのまま一行は城の中へと案内された。

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