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第242話 竜、人間と宴をする

「あい!」

「上手ね、リヒト君」

「さすがはリヒト様!」

「あーい♪」

「ぴよー♪」

『あはは、トコト達も可愛いよー』

 

 たくさんの人が自分のおうちに来て興奮状態のリヒトが、おもちゃを持ってきてはみんなの前で披露する。

 もちろん面倒くさがる者はおらず、皆が可愛いと絶賛してリヒトとペット達を褒めちぎる。

 ドラゴンの揺り椅子にも乗り、フレイヤが拍手をしていた。リーナもリヒトの太鼓に合わせてひよこ達のダンスを絶賛する。


「モルゲンロート殿、ロクローからもらった酒じゃ」

「どれ……これは美味い……!?」

「ローザさんも来られたのですね」

「それはもう! ドラゴンの住処なんて下手をすると一生来れないですもの」

「普通のお家ですけど、嬉しいですよ♪」


 ディランも自宅ということで珍しくお酒を多めに飲んでいた。そしてローザも来るとは思っていなかったので、トワイトも嬉しそうであった。


「おう、焼けたぜ!」

「おっと、すまんのうガルフ。客人に任せてしもうた」

「気にするなって! 新しいことのお披露目に俺達を呼んでくれるなんて嬉しいからな」

「そうですよ。陛下や王妃、騎士さん達に交じって平民の我々が居るのは恐縮ですが」

「ここは若い者に任せてよ!」

「わほぉん」

「ダルも返事をするんだ。はい、お肉よ」

「わん♪」

「うぉふ♪」

「あ、もうリヒト君のところへ行くんだ」

「大好きだからなあ、あいつら」


 ガルフはバーベキューの焼き担当として串を裏返したりしていた。ヒューシも同じく食材を切り分けるなどをする。そこでユリやレイカも手伝っている形だ。

 お肉を貰うと咥えてからリヒトのところへ戻っていくアッシュウルフ達であった。


「はっはっは、お前たちとは縁があるようだからな。これからもよろしく頼む」

「レイカさん、おめでただと言っていましたわね。おめでとう」

「あ、はい。ありがとうございます! 王妃様に祝ってもらえるとは思いませんでした……」

「陛下と王妃様は楽しいことがあればすぐに駆け付けますからな」

「なにをいうかバーリオ。お主も飲め。騎士たちも」

「ロクロー作、竜殺し(ドラゴンスレイヤー)という酒じゃ」

「辛口ですなこれは……!」


 モルゲンロート夫妻は王族だが、そこまで厳格に差をつけていない。レイカを祝うと、申し訳なさそうに頭をさげていた。

 もちろん一緒にいるバーリオが苦笑するが、言うべき時は言うので騎士たちも気を引き締めて仕事をしている。

 軽くということで騎士たちも兜を脱いでお酒を一杯いただいた。


「わほぉん♪」

「おや、いつもだるそうにしているダル君が活動的だわ」

「かぼちゃ好きなのか……」

『お肉も食べてるよ! ダルはお肉も野菜も好き嫌いが無いんだよね』


 かぼちゃを食べるダルを見てフレイヤとエメリが珍しいものを見る目をしていた。

 リーナは知っているので背中を撫でながらよしよしと笑う。


「あーう?」

「うぉふ」

「わん」

「あい……」

「リヒトはミルクよ。こっちへいらっしゃい」

「あーい」


 お肉を食べているルミナスとヤクトの前にしゃがんで首を傾げるリヒト。しかし、食べてはいけないと前足で隠した。

 次々と肉や野菜、お魚が焼け始めたので一旦お食事タイムとなり、それぞれが会話を楽しみながら食べる。

 トワイトが呼ぶとリヒトはおもちゃの馬車を引きながら駆け出し、抱っこされた。


「賢いですわね、相変わらず♪ こんにちは」

「あい♪」

「ええ、手がかからないしペット達もよく遊んでくれるから元気いっぱいなんですよ」

「どんな風に育つか楽しみですわねえ」

「んぐんぐ……」


 ローザが目を細めていると、リヒトは一生懸命ミルクを飲み始めた。まるで早く大きくなってみんなとご飯を食べたいといった感じである。


「こけー」

「あーう」

「来年はお肉もトウモロコシも食べられると思うけどね」


 ジェニファーが焼きとうもろこしを咥えてリヒトのところへ来るが、まだギリギリ食べられない。

 すると少し離れたところへ移動してひよこ達と一緒についばみ始めた。


『トウモロコシが足りないみたい。デランザも食べるでしょ?』

【うむ。この香ばしい匂いがたまらない】

「変なキマイラだ」


 エメリが呆れて芯までかじるデランザの髭を引っ張っていた。そこでディランが酒を飲みながら言う。

 

「畑から獲ってきていいぞいリーナ」

『はーい!』

「あーい!」

「あら、リヒトも行くの?」

「あい」

『それじゃあおねえちゃんと行こうか』

「あたしも行くわ。レイカ、お肉取っておいて!」

「もちろん! ウチの稼ぎ頭だもん」


 トウモロコシやナスを収穫しに行くリーナにリヒトがついていく。暗いからとトーニャも付き添いになった。

 

「わほぉん」

「あ、ダル」


 そこでダルもサッと移動し、ついていった。ここは兄の顔を立てるためルミナスとヤクトは見送っている。


「仲いいんだからもう」

「ならユリ、こいつと遊ぼう。意外と面白いぞ」

「アー……!」

「グラソンだっけ? なんか汗かいてない?」

「そやつは寒いところに住んでおるから、バーベキューはちと暑いかもしれん」

「ダメじゃない!? ほら、池に入ろう」

「アー♪」


 足元でパタパタと羽を上下させていたグラソンに、ヒューシが魚を与えていた。

 ユリにもやってみるよう言うと、ディランが衝撃発言をした。

 慌てて池へ連れていき、水につけるとお風呂に入った人間のような声を上げていた。


「まったく、我慢しているんじゃないわよ」

「うぉふ」

「わん」

「アー」


 ユリの言葉に、いつの間にか近くに来ていたヤクトとルミナスが『迷惑をかけるな』とグラソンの背中を前足でぺちぺちと叩いていた。

 そのまま楽しく話が進み、モルゲンロート夫妻が持ってきたお土産も食する。


「もうお酒はいらない方はお味噌汁とおにぎりがありますからね。お漬物とジェニファーの卵で作った卵焼きもどうぞ」

「うおお、これがおにぎり……!」

「陛下とコック長が絶賛していた卵焼きか……」

「わたくしにもくださいな」

「コウさんの行った国で海鮮を買って海鮮汁を作ってもいいかもしれませんねえ」

「そ、それは私から調達しよう。ぜひ城で作ってくれ」


 すっかり日が暮れたころ、騎士たちはお酒よりもご飯へと向かう。空に月が出たところでユリが庭にある扉に気づく。


「ディランさーん! この扉ってなんですか?」

「む? それは山頂に続いておる扉じゃ」

「山頂! もしかしていけるんですか?」


 ユリの言葉にディランは上りやすくはしたと返す。すると彼女は散歩をしたいと言い出した。


「夜は危ないぞい」

「大丈夫だよ、わたし達って冒険者だし。ディランさんかトワイトさんもついてきてくれるとなお安心♪」

「ほう、山頂か。興味があるな」

「陛下、その状態で登るのは危ないですぞ」


 モルゲンロートも乗り気だが、飲んでいるので山登りは危険だとバーリオに止められた。


「月がキレイだしいいかもしれんな。よし、ワシが乗せていくから山頂で少しだけ休むか」

「やったー!」

「あーい♪」


 そこでトウモロコシを抱えてリヒトが戻ってきた。リーナとトーニャもトマトやナスを持っていてつまみが増えたような感じだ。


「トマトは池の水を桶にいれて冷やしていきましょうか」

【我も行くぞ】

「おう、今の肉とトウモロコシを焼いたら頼むぜ!」


 ガルフもお肉を食べて酒を飲みながら承諾する。しばらくしてからディランが変身し、全員を乗せて飛び立つ。


「うわあ、凄いきれい……!」

「あたし達ドラゴンは里が山にあったから慣れているけど、やっぱりきれいね」

「凄いわね」

「上を見ていると吸い込まれそうだ……」


 山頂に到着するときれいな星空に女性陣が目を輝かせていた。ヒューシもグラソンを抱っこしたまま目をぱちぱちさせる。


「デランザでたまに夜飛ぶけど、こんなに高い位置にはこないもんね」

【危ないからな】

「気を使えるのは偉い。ウチの山より雲が少ないから月も目立つな」


 フレイヤ達もデランザを背にして空を見上げてほほ笑んでいた。


「うむ。平和でなによりだ。なあローザ」

「ええ」

「国の平和は、陛下の手腕のおかげです」


 モルゲンロートやバーリオも月見酒をしながらフッと笑いあう。苦労はあるが、使命だと言いながら。


 そして――


「あーい!」

「あら、流れ星。よく見つけたわねリヒト」

「あー♪」


 そこでリヒトが流れ星を指さしていた。トワイトが凄いと頬をくっつけて笑う。


「そういえば流れ星に願いを言うと叶うというのう」

「こけー」

「わほぉん」

「うぉふ」

「わん!」

「ぴよー」

「ぴよぴー」

「ぴよっ!」

「あらあら」

「あーう?」

「えー、ダル達がお願いをしたの?」


 ディランがそういうと、ペット達が一斉に空に向かって声を出していた。

 一体なにをお願いしたのか? 一同はそんな話をしながら笑いあうのだった。

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