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第241話 竜、庭に招く

「こんなものでええじゃろ」

「そうですね。皆さん、来てくれるといいですけど」

「モルゲンロート殿は忙しいからどうかのう。各国の交渉で世話になったし、お礼をしたいのじゃが」

「あーい♪」

「わんわん♪」

「こけー!」


 庭の拡張から二晩ほど過ぎた。

 あれからさらに、ディランは納得いくまで手を入れていた。一番大きいのはドラゴンの髭で編んだ網を天井に見立てて上へかぶせたことだろう。

 ひよこ達やリヒトは大型の鳥に攫われる可能性もあるため、遊ばせる不安を払拭するため取り付けた。

 そのため、リヒトは今、ペット達と元気に太鼓を振り回しながら追いかけっこをしている最中である。

 ちなみに 埴輪と土偶は砂場の山に鎮座してなんとなくリヒト達を見守っているような感じだ。

 山へ続く道には鍵付きの出入口を備え、洗濯ものを干しに行く際はここからの道を使う。

 折角だからと一日費やして山頂までの道も歩きやすく切り開いた。


「他の王様たちはまた今度にして、今回はモルゲンロートさんとガルフ君達よね。居場所が分かればハバラ達も来てもらうんだけど」

「とりあえず昨日、声をかけに行ったトーニャは来るじゃろうから明日を楽しみにするかのう」

「わほぉん……」


 食材は用意しており、お肉はグレードオックスやレッドディアといった魔物を狩って調達。野菜と肉、それと川魚も庭で獲れるため、労せずに宴の準備は出来ている。

 ダルは大丈夫だろうという感じであくびをすると、地面に座っているディランの足に顎を置いて目を瞑った。


「あーい!」

「わほぉん……!?」

「うぉふ!」


 しかし、リヒトに背中から抱き着かれてぎょっとさせられた。リヒトはダルの前足を掴んで上下に振る。ダルも遊ぼうと誘っているのだ。


「たまには動いておくのじゃ」

「わほぉん……」

「うふふ、あの乗れる馬車もいいわね」


 ジェニファーとひよこ達を乗せた小さな馬車の荷台をリヒトが引っ張って庭を駆け回る。ダルはそれをてくてくと追いかけていく。呼ばれれば付き合いのいいダルであった。


「アー!」

「あー♪」

「お、涼んできたか」


 そこでグラソンも新しい池を満喫して飛び出してきた。いきなり深くなるのではなく、水の中に階段もあるので万が一の時も安心だ。

 そんな広々となった庭に、翌日来客がやってきた。


「ディラン殿、トワイト殿、お招きいただき光栄だ」

「今日はよろしくお願いしますわね」

「ようこそ」

「モルゲンロートさんにローザさん、こんにちは♪ こちらへどうぞ」


 翌日。

 国王夫妻がトーニャに乗ってやってきた。来れないかもしれないという懸念は『ヴァールを置いてきた』という話で一蹴されていた。


「ただいま、パパ、ママ。リヒト、おねえちゃんですよー♪」

「あーい♪」

「わんわん!」


 続いてみんなを乗せてきたトーニャが姿を見せ、ディラン達の足元に居たリヒトを抱っこして頬ずりをする。そこから続々と知った顔が入って来た。


「お邪魔するぜディランのおっちゃん!」

「こんにちは、先日はありがとうございました」

「お、新婚さんじゃな」

「や、やめてくれよ……!」

「あはは」

 

 ガルフとレイカが顔を出してきたのでディランが珍しく揶揄う。庭が完成したことで少しテンションが上がっているようだ。


「こんにちはー! 久しぶりに来たわね! ダルは?」

「わほぉん」

「アー」

「あ、来た来た久しぶりー! ……って、なんか知らない動物がいるわ!?」

「ほう、こいつは見たことがないな……?」

「ア」

「あ、お辞儀をするんだ。こんにちは、ユリよ!」


 続いてユリとヒューシがやってきてダルを呼んでいた。しかし、ダルの背中にグラソンが乗っており、ユリが驚きヒューシが興味深げに見る。


「ヒューシだ。ディランさん、こいつは?」

「カイザーペンギンのグラソンじゃ。れっきとした魔物じゃぞ」

「魔物……呑気な顔をしているのに」

「アー!」


 ヒューシが抱き上げて目線を合わせると、なんとなくグラソンが抗議の声をあげた気がする。しかしヒューシは気に入ったのかそのまま抱っこして色々と観察を始めた。


「おお……カイザーペンギン……」

「知っているのエメリ?」

「かなり北の方に生息する魔物だとおじいさんから聞いたことがある。実物をみたのは初めてだが、まさか竜神様のところで見れるとは……」

「フレイヤさんとエメリさん、こんにちは!」

「ユリも来ていたのだな」


 そこでフレイヤとエメリも登場し、賑わう。ダルを抱っこしたユリと握手をしていると、さらに後ろから声が聞こえてくる。


【我は入れなくないか……】

「デランザか。屋根の網を取ってやるからこっちから入れ」

【ありがたい】


 そこにはデランザもいて、大きな身体を小さくさせて困惑していた。すぐにディランが網を外して招き入れた。


「あーい♪」

【おお、リヒト坊。久しぶりだ……って早速髭で遊ぶのだな……】

「ぴよー♪」


 デランザが広い庭に降り立つと、トーニャに抱っこされたままのリヒトが声を上げた。

 そしてデランザ寝そべると、ひよこ達が髭をもてあそび始めるのだった。

 一通りそろったところで宴が始まる。

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