第236話 竜、家の周辺をがらりと変える
「あーい♪」
「アー……!」
「威嚇しておるのう」
「威嚇しているわね」
ひとまず朝食をとるため、ディラン達は家へと戻った。
ジェニファーやソオンはアブラムシを獲っていたが撤収となった。
戻った早々、リヒトがグラソンを見つけて遊戯室へ引っ張っていき、和解した土偶を見せる。グラソンは口をあんぐりあけて声を荒げていた。
「というかリヒトはドグウが大丈夫になったのか」
「目が覚めた後、宝箱から出してってお願いされたんですよ。そしたらああやってハニワと一緒に仲良くするように」
「まあ、ええことじゃ。ドグウも嬉しいじゃろ」
「そうですね♪」
二人はほほ笑みながらリヒトを呼んで朝食となる。
リヒトにミルクを飲ませ、ご飯とみそ汁に漬物、それと目玉焼きというシンプルなものだった。
「ジェニファーの卵は美味しいですね」
「元気に育っておるからじゃろうなあ」
「あーい」
「リヒトも早く食べたいみたいね。まだ歯も生えていないから先ですけど」
そんな会話をしながら食事を終えると、続いてペット達のご飯である。
お肉とそれぞれ好物の野菜をアッシュウルフ達へ。
ジェニファー達は相変わらずトウモロコシをバツバツとついばんでいた。
「トコトはともかく、ジェニファー達はアブラムシを食べておったのにのう」
「弱って食べられないよりはいいかも?」
「あー♪」
「アー♪」
ご飯中は邪魔をしないようにリヒトはグラソンと遊ぶ。
遊戯室のボールを気に入ったようで、頭でボールを押してリヒトとキャッチボールをしていた。
「わふわふ……」
「わほぉん」
「今日は外を改築するわい」
「あら、どうしたんですか? グラソンが居てもそれほど狭くはないと思いますけど」
「ワシらはええんじゃが、特にグラソンは倉庫に入っているだけだとダル達と遊ぶのが難しい。だから家の周辺を柵で囲い、ため池を広げて泳げるようにしようと思う」
「あ、いいですね」
良く食べるペット達を前に、ディランが今日のプランを提案した。内容を聞いたトワイトが手を合わせて頷く。
「砂場も欲しいですね。ギルファ君や海で楽しそうでしたし」
「ああ、ええかもしれん。スコップがあれば楽しめるからのう。柵を張れば庭遊びも出来るようになるか」
「色々作りましょうか」
指針を決め、ひとまず策作りからスタートすることにした。
自宅は岩壁に面しており、くりぬいた先が家の奥にある倉庫だ。そして外に出から左側に畑、その奥に水田がある。
さらに自宅から左側の岩壁に宿泊するための建屋があるのだ。ちなみに家から右へ行くと坂道になっており、村へと行ける。
「建屋の向こう、山へ登る方を開拓するか」
山の中腹であるこの場所は案外平地になっている部分が広く、それでこの場所を選んだ。
これからドラゴンの訪問も増えるかもしれないということもあり、拡張をすることにした。
「では丸太を伐採して柵にするかのう」
「あら、それでしたらネクターリンの木を買ったらどうですか? あの時、いっぱいあったと思いますし」
「お、確かに魔物除けになるか」
「ひとっ走り行ってくるか」
「たまには私が飛んでいきますよ。あなたはリヒトと開拓をしていてくださいな」
「そうか? ならついでに野菜でも売ってもらうか」
「はい♪」
そう言ってトワイトは支度を始める。モノが大きいため、リヒトは連れて行かないようだ。
「あーう?」
「お母さん、ちょっと出てくるからお父さんのお手伝いをお願いね」
「うー……あい!」
「わほぉん」
「わん!」
「うぉふ!」
リヒトはディランとトワイトの恰好を見比べて、お母さんはどこかへ行くのだと把握し、大きく手を上げて頷いた。
そして、あとは任せてくれと言わんばかりにアッシュウルフ達が鳴いた。
「気を付けてな」
「あーい!」
「ぴよー」
「アー」
トワイトは変身して王都へと飛んでいった。久しぶりにトワイトは一人で行動となる。トーニャにでも会ってたまにはリヒトから離れてお茶でもいいだろうとディランは急がないでいいといって見送った。
「さて、それじゃワシらも仕事をするか」
「あい」
「リヒトはダル達と遊んでいて良いぞ? ……この辺りから柵を作るか」
ディランはダル達と遊ぶように言い、自身は平屋で六人が寝そべられる部屋が五つできそうな広さの地面をならしていき、境界となる部分を決めていく。
地面を強靭な手で耕し、大きい石などを取り除いてから足で踏み固めるのだ。
「石はまとめてどこかに積んでおくか。使えるしのう」
「あい」
「わふ」
「む? 手伝ってくれるのかのう」
「あーい♪」
そして足元ではリヒトがスコップをもって地面を掘り返していた。出てきた石をダルが集め、ルミナスとヤクトが踏み固める動作をする。ディランの真似をしているらしい。
「相変わらず賢いのうお主ら。リヒトもスコップを上手く使うわい。よし、ではこの辺りをやってくれるか?」
「あい!」
「わほぉん」
「うむ」
ディランは端の方からそれをするように頼む。少しずつなので、遊び感覚でやってもらえればいいとほほ笑んでいた。
「あい」
「うぉふ……!」
「そういえばジェニファー達はどこへ行ったのじゃ? ……あそこか」
トワイトを見送った後、サッとどこかへ行ったのは知っていた。周囲を見渡すと、畑の方で四羽がうろうろしているのが見えた。
「虫をとっておるのか。ありがたいが、太らなければよいのう」
朝ごはんを食べたばかりなのに良く食べると苦笑するディランであった。