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第231話 竜、お土産をもらう

「酒は飲まんかディラン」

「ワシは皆を運ぶから酒は遠慮しておくぞい、コウ」

「あら、私が変身してもいいですよ?」

「大丈夫じゃ。今日の主役はコウであってワシではない」


 程なくして浜にテーブルセットや食材が置かれ、町の人やカッツの屋敷にいるメイドが準備を進めていた。もちろん動きやすい服装で。

 酒を勧められたがディランは丁重に断りを入れて水を飲む。


「はははは! 燃えろ燃えろ!」

「やめんか!」

「ぐへ!?」


 火を熾していた町人のテンションがおかしなことになっていたが、たまにある祭りみたいなものだと楽しんでいるようだった。

 

「さあさ、焼き魚ができましたよー!」

「あー♪」

「あ、まだこの子はミルクなの。ごめんなさいね」

「ありゃ、そうでしたか……大きくなったら食べに来てね」

「あい!」


 トワイトの膝の上で足をぷらぷらさせていたリヒトに、メイドが魚を持ってきてくれたがトワイトがいただくことにした。

 リヒトはまだお腹が空いていないようでミルクはいらないと首を振る。


「そういえばイトマキヒトデはどうしたの?」

「あう?」


 そこでバタバタしていてリヒトが持っていたヒトデが無いことに気づく。するとちょんちょんとダルが前足でトワイトを呼ぶ。


「わほぉん……」

「あー♪」

「あら、ダルの頭に乗せていたのね! 生き物はダメよリヒト。ハニワならいいけど」

「うー? あい」


 トワイトがヒトデを取るとリヒトは残念そうに唸るが、ハニワをダルの頭に乗せることで承諾したようだった。


「それじゃ海に返しに行きましょうね」

「あーう!」

「ぴよー」

「こけー」

「気を付けてな」


 まだ明るいので大丈夫かと、ディランはリヒト達を見送った。

 ディランの下にはジェニファーとひよこ達が残っていた。ワカメを被ったことで海に近づくのを止め、ひよこ達に被害が及ばないよう傍に置いているらしい。


「あーい」

「はい、よくできました♪」

「うぉふ」

「あい♪」


 ひとまず岩場へ戻ってからリヒトはイトマキヒトデを海へ帰した。食べたりもしないため無駄に干からびさせる必要はないからだ。

 トワイトが帽子をかぶっているリヒトの頭を撫でると、ヤクトも頬をぺろりと舐めて賞賛していた。


「それじゃ戻りましょうね」

「あーう」


 そこでリヒトはトワイトと手を繋いで戻るため歩きだす。しかし、リヒトはなにかを探すように周囲を見渡していた。


「どうしたの? さっきのペンギンさんを探しているの?」

「あーい」

「わんわん!」

「あー」


 どうも先ほどのカイザーペンギンが気になるようで、海に目を向けていた。

 ルミナスが探しに海へ向かい、リヒトもトワイトの手を引いて追いかけようとする。


「うふふ、元気ねえリヒト。それじゃあ行きましょうか」

「あい♪」


 軽い足取りでリヒトがよちよちと歩き、トワイトがそれに合わせる。ダルやルミナス、ヤクトが散開して走り回っているのが見える。

 岩場からカイザーペンギンの消えた海まではそれほど遠くないのですぐに砂浜へ到着した。


「あーう?」

「イルカも居なくなっているわね。お家に帰ったのかも?」

「あう」


 トワイトの手を離してまた波打ち際へと向かうリヒト。途中でヤクトに乗ってあちこち移動をするもカイザーペンギンの姿は無かった。


「あーい」

「わほぉん」

「うぉふー」

「わん」

「やっぱり帰っちゃったかしら?」


 野生の魔物ペンギンにしては風呂敷などを持っていたので、どこかで暮らしている可能性が高いかとトワイトは頬に手を当てて言う。

 するとその時、波打ち際にひょこっとイルカが顔を出した。


「きゅー♪」

「あーい♪」

「あ、リヒト抱っこするわ」


 可愛く鳴いたイルカに近づくようにヤクトの背中を軽く叩くが、イルカが浸かっているためヤクト達は海に入る羽目になってしまう。

 トワイトは慌ててリヒトを抱っこすると、スカートの裾を上げてから海へと入っていく。


「きゅー!」

「あーい!」

「きゅ♪」


 イルカはヒレを上げてから挨拶をする。リヒトがそれに応えると、嬉しそうに鳴いた。


「ペンギンさんは居ないのね?」

「きゅ」

「アー!」

「あー♪」

「まあ」


 そこでイルカの下からカイザーペンギンが顔を覗かせた。そのままばしゃばしゃと歩いていき、砂浜に出る。

 トワイトが追うと、また風呂敷を外してからその場に広げた。


「器用ねあなた♪」

「アー」

「あら、エビや貝、小さいお魚もあるわ。もしかしてリヒトに獲ってきてくれたの」

「ア」


 頷く。

 どうやら差し出した魚をリヒトが食べられないからと、小さい獲物をとってきたらしい。


「あーい♪」

「エビ、平気なのねリヒト」

「わほぉん……」


 うねうねと動くエビを掴もうと手を伸ばす。気持ち悪いとかはないようである。

 むしろダルがおっかなびっくりしながら前足でつついていた。


「うーん、ごめんなさいね。リヒトはまだ赤ちゃんなの。お魚はあなた達が食べて?」

「アー」

「きゅ」


 トワイトが困った顔でカイザーペンギンを撫でるとポカンと口を開けてリヒトを見ていた。

 だが、すぐに風呂敷の魚をトワイトへ差し出した。


「私にくれるの?」

「ア」

「うふふ、ありがとう♪ それじゃあなにか料理を作りましょうか。イルカさんは陸に上がれないから後で持って来るわね」

「きゅ♪」


 トワイトがそういうとイルカはヒレを振った後、潜っていった。呼べばまた来るのかしらと苦笑しながらみんなと戻っていく。

 

「アー」

「わん」

「うぉふ」

「アーアー」

「あーい」

「うふふ、いいわよ」


 アッシュウルフ達とてくてく歩いていく様子を見て、リヒトも一緒に歩きたいと降ろすようにせがんだ。


「あー♪」

「アー♪」

「わほぉん」


 似たような身長なので羽を掴んで歩くととても可愛い後ろ姿だった。


「賢い子ねえ。お父さんに任せて料理をしましょうか」


 ディランのところへ戻り、トワイトは料理をすることにした。

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