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老竜は死なず、ただ去る……こともなく人間の子を育てる  作者: 八神 凪


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第229話 リヒト、海でなにかと出会う

「あーい!」

「はいはい、行きましょうね」

「ぶるるる……!」

「ぴよっ!」


 リヒト達は水を掛け合いずぶ濡れになった。

 いつもお着換えを常備しているので、リヒトは水魔法で体を洗ってもらい再びきれいな服になった。

 ダル達はぶるぶると体を震わせて水を弾き飛ばしていた。ソオンだけは優雅に波に乗っていたりする。

 砂浜に戻ったリヒトはトワイトの手を引いて別の場所へ移動を促す。


「……元気だなあ」

「おお、モルゲンロート殿。散歩は終わったのかのう」


 そこで遠巻きに遊ぶ様子を見ていたモルゲンロートがディランの近くへとやってきた。周辺は人も居なかったのでその辺を歩いていたのだ。


「ええ。こう広いと気分がいいですな。たまには家臣たちから離れてのんびりしたいところです」

「まあ、国を背負うというのは大変じゃからのう。察するわい」

「ところで、ディラン殿。リヒト君を追わなくていいのかな?」

「お主を護衛してくれる者がおらんじゃないか」


 久しぶりに羽を伸ばせているとモルゲンロートが笑う。そこで岩がある場所へ移動したトワイト達を追わなくていいのかと尋ねた。

 ディランはモルゲンロートが騎士を連れてこず、一人で来ていたので護衛をすると返した。


「なるほど。それはありがたい。たまにはゆっくり話でもしますか」

「そうじゃな。おーい、ワシらはここで待っておるぞ」

「はーい!」

「あーい!」

「わんわん!」


 モルゲンロートは頬を緩めてからその辺で話でもしようと言い、ディランはトワイトとリヒトへ待つことを告げた。

 二人はディランに手を振り、少し岩肌がある場所へやってきた。


「なにかいるかしら?」

「あーう?」

「ぴーよー?」


 小さい水たまりを覗き込んでみると、小さい魚が泳いでいた。底の方で海と繋がっているようですいーっと優雅に泳いでいるのが見える。


「お魚さんがたくさんね」

「あー♪」

「……」


 トワイトが指を向けて言うと、リヒトは笑顔になる。その横にはヤクトがお座りしていた。


「うぉふ……!」

「あー!」

「あらあら」


  動く魚を見てヤクトがうずうずを我慢できずに前足を突っ込んだ。その瞬間、魚たちはサーっと散ってしまいあっという間になにも居なくなった。


「うー」

「うぉふ……」

「まあまあ。ヤクトも遊びたかったのよ」


 リヒトはヤクトの背中をぺちぺちと叩き、抗議する。当のヤクトは尻尾を下げていた。


「わほぉん」

「あーう?」

「ダル、どうしたの? あ、リヒト転ばないようにね」


 他のペット達もあちこち散開して鼻を鳴らしたり、くちばしでつついたりしていた。その中でダルが岩に前足を置いて鳴く。

 リヒトが興味深げに近づいていき、トワイトとヤクトが追う。


「わほぉん」

「あい」


 ダルが前足を置いているところを見ると、岩にべったりとヒトデが張り付いていた。赤い斑点が特徴的な感じを見せる。


「あら、イトマキヒトデね。生き物よ」

「あーう……!」

「わほぉん……」

「うふふ、触っても大丈夫なのよ♪」


 ひょいっとトワイトがヒトデを持ち上げたので、リヒトがびっくりして叩き落とそうとした。しかし、トワイトは手のひらに乗せて大丈夫だと言う。


「ほら、こうやって」

「あーい♪」

「わほぉん……」

「ぴよー」


 トワイトが指でつつくとヒトデはもぞもぞと動き、リヒトが感動していた。

 動きが嫌なのかダルは前足でちょんとつつくばかりである。

 しかしトワイトの腕に飛び乗ったレイタは容赦なくつつきまくった。


「ダメよそんなにつついたら」

「ぴよー?」

「それじゃここに置いていきましょう」

「あー」


 トワイトが岩に戻すとリヒトが袖を引いてディランの居る場所を指す。


「お父さんに見せたいの?」

「あい♪」


 どうやらこの珍しい生き物を見せてあげたいと言っているらしい。するとトワイトは小さく頷いてから言う。


「干からびちゃうからすぐに戻さないといけないの。すぐ行きましょうか」

「あーい!」

「わん!」


 トワイトが言うと、リヒトが手を上げて返事をし、ヒトデを手に取った。恐れず無造作に掴んでいた。

 それじゃあ行こうかと思った矢先、岩陰からジェニファーの声が聞こえてきた。


「こ、こけー……」

「うー?」

「ジェニファー?」


 なんとなく苦しそうな声なのでトワイトとリヒトは周囲を見る。しかし声はすれども姿は見えず。


 すると――


「こけー……」

「あう!?」

「まあ」

「わんわん……!」

「ぴよー!?」


 近くにあった海藻がごそっと動き、リヒトが驚いてトワイトに抱き着く。怪しい魔物かと思ったが――


「どうしたのジェニファー、ワカメをかぶって」

「こけっこ……」

「あーう」


 その海藻はジェニファーだった。

 なぜか全身にワカメをかぶり、テンションがだだ下がりで項垂れていた。トワイトが取り除いてあげた。


「こけー!」


 その瞬間、ジェニファーは怒りをあらわにしてワカメをズタズタにした。なにがあったのか分からないが彼女にとって嫌だったようだ。


「ジェニファー、お父さんのところへ行くわよ」

「こけー!」

「うぉふ……」


 あまりの興奮状態に、ヤクトが戦慄していた。怒らせたらいけないのだと感じたようだ。

 そのままトワイトとリヒトは手を繋いで砂浜を歩く。そこで今度は海の方からなにかがやってきた。


「……」

「あーう?」

「え? あれはペンギンかしら? どうしてこんなところに?」


 それはリヒトと同じくらいの大きさのペンギンだった。海からペタペタと砂浜に降り立つと、海へ振り返り顔を覗かせている生物にお辞儀をした。

 どうやらイルカらしく、これにのってやってきたようだ。


「アー」

「あーい!」

「アー?」

「こっちに気づいたわ」


 なんとなくリヒトが声を上げると、ペンギンはリヒトの方に向いた。

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