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第225話 竜、改善のために動く

「それはこの土地の環境にある」

「環境? 湖が多いなら水系のコウの方が良くないかのう?」

「いや、ディラン湿地や湖があるからこそのフレイムドラゴンだ」


 土地が湖などに囲まれているため火を司るボルカノは相性が悪いのではとディランが首を傾げる。しかしボルカノは逆だと言う。


「水が豊富なのはいいことだ。生きる限り必要なものだからな。だが、行き過ぎるとこの国のように土地が大変なことになる」

「なにか手があるの?」

「見てもらった方が早いか。外へ行こう」


 ボルカノはそう言うと、一同は顔を見合わせてからついていく。

 王都から出ると、すぐそばには川があり、その周辺は湿地帯となっていた。


「どうするんじゃ?」

「まあ慌てるない。国王殿、この辺りは地盤が緩い。改善をしようとは思わないのか?」

「それはやりたいと考えている。しかし、掘り進めると泥に当たる。そこに砂利などを入れて改善を図るのだが、泥が崩れて堆積してしまうのだ」

「だな。普通の川沿いなどならそれでいいのだが、ここまでぬかるんでいると難しいと思う。だが、俺が居れば話が変わるのだ」


 その瞬間、ボルカノはフレイムドラゴンの姿に変化して地表にブレスを放った。


「あーう!」

「おお!?」

「一言告げてからやらんかい!」

「わんわん!」


 リヒトはその姿に太鼓を振りまわして喜んでいたが、急なことでフェルダ王たちが驚いていた。コウは熱さに弱いので怒鳴り声を上げた。


「すまんすまん。さて、炎を吐いた地面を見てくれ」

「えっと……あ、凄い! 乾いて普通の土になっていますよ父上!」

「なんと!? ハッ!? さてはボルカノ殿、これを繰り返して土壌を安定させようと!?」


 フェイルが地面を踏んで硬くなっていることを確認し、フェルダはその意図にいち早く気づいた。


「飯さえ食えればブレスはいくらでも吐ける。作業は任せるが、住まわせてもらう代わりに手伝いをしよう。だから俺がこの国に居ようと考えた。いいか、コウ?」

「もちろんじゃ。この短時間でそこまで考えていたとはやるわい」

「まあ、初めてじゃないからな」

「では、ガリア国はボルカノ殿が残るということで良いか?」

「ああ! これは畑が大きくできるチャンスかもしれない! ボルカノ殿よろしく頼む」

「こちらこそ」

「良いドラゴンさんでよかったですね」


 自身の有用性を伝えた後、モルゲンロートが問題ないか尋ねた。

 そこでフェルダとボルカノが握手を交わし、ひとまずお試しで暮らすことに承諾を得ることができた。


「話がすぐにまとまるから助かるのう。ボルカノがそこまで考えてくれるとは思わんかったわい」

「一応、俺達はその国の特色なんかを聞いて、そこからなにが出来るかを考えて誰が居つくか話し合うつもりだったんだ」

「なるほどのう」

「だけど意外にすぐ役に立てることが見つかったというわけね♪」

「フラウはちょっと違うと思うが……」


 住まわせてもらう対価は出すつもりだったらしい友人たちを見て、ディランとトワイトが感心していた。


「その内、妻も連れて来ると思うが構わないか?」

「もちろん! 奥さんがいるのですね、楽しみだわ」

「パライズドラゴンという麻痺が得意なドラゴンだ。麻痺毒は薬に使えると、昔出会った人間が言っていた」

「色々と興味深い。ボルカノ殿、歓迎する! よし、今日は宴だ! 皆さんも是非参加していただきたい」


 ガリア国王一家は興奮気味に声を高らかに上げて宴をすると口にする。モルゲンロート達はそれを聞いて申し訳なさそうに返した。


「すまない、後はコウ殿をエンシュアルドへ連れて行かねばならないのだ。またの機会にしてくれ」

「むう、そうか……」

「残念ですね……それにしてもドラゴンさん達は静かで賢いですわ。もっといかつい感じだと思っていたので、実は警戒をしていたんですよ」

「はっはっは。まあ、ドラゴン形態だと凶悪に見えるから仕方ない」


 やはりドラゴンを受け入れるというのはいくら穏やかな国とはいえ警戒はしていたと口にする。

 特に小さい国なのでドラゴンが暴れたらひとたまりもないからである。


「俺達は話せる。ならばまずは力ではなく言葉を使うべきだ……暴れていいことなど、極わずかだ。なあ、ディランよ」

「……まったくじゃ。ではモルゲンロート殿、次へ行くとしようか。また様子を見に来るわいボルカノ」

「茶菓子でも用意して待っているぞ。コウもいい環境だといいな」

「ま、行ってみるわい」

「ではこのまま行くとするか。皆、乗るのじゃ」

「おお!」

「あーい♪」


 丁度外だからとディランが変身し、フェイルが拍手をする。男の子はやはりカッコいいものが好きなようだ。


「次で最後か。選ぶとか選んでもらうとかあまり無かったのう」

「まあ、わしらはどこでもなんとかなるから大丈夫じゃろ」

「そうですね。私達もキリマール山で過ごせていますし」

「人型になれるからこちらとしても対応しやすいですからな。では、繰り返してから西へお願いしたい」

「またね! 花火を教えてあげたいし」

「はい!」

「あーう!」


 王妃のエメラダが手を振りながらそう言ってくれた。結局、教わる機会がなかったが、次に来る楽しみにしようとトワイトとリヒトは手を振るのだった。


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