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第224話 竜、ガリア国へ立つ

「鳥か……?」

「グリフォンか?」

「……! ドラゴンだ!?」


 ガリア王都近くの土地へと降下していく。

 もちろん空から何かが降りてきていると見えていた騎士や兵士、冒険者達が町から出てきて見上げながら驚いていた。


「驚かせたのう。話は通っていると聞いておるが……」

「あ、ああ……そういえば陛下がドラゴンが来るぞと言っていた」

「さすがに嘘はつかないだろう。私はクリニヒト王国の王、モルゲンロートである。申し訳ないが、城まで案内してもらえるか?」

「頼むわい」

「おお、人の姿に……!? そしてモルゲンロート様!?」

「こちらへ……!」


 ディランが人の姿になったのと同時にモルゲンロートが自身の肩書を口にしたので、もうどっちから驚いたものかという騎士。

 別の者がすぐに頭を下げて案内をしてくれた。兵士や冒険者達は安堵の表情でぞろぞろと戻っていく。


「ふむ、土が柔らかいな」

「湖が多いとモルゲンロート殿が話しておったたが、よく見れば川も多かったな」

「そうだなコウ」


 ボルカノとコウは歩きながらそんな話をしながら後ろを歩く。炎と雪のドラゴン達は思うところがあるように周囲を見ながら進んでいた。


「うぉふ」

「あー?」

「あら、ワニね。まだ小さいけど」


 そこで近くの草むらからワニが顔を覗かせていた。体長は小さく、トワイトがまだ子供だと認識していた。


「小さくてもリヒトは食べられちゃうかもしれないから近づいたらダメよ」

「あい」


 抱っこされているリヒトはワニを見ながら左手でトワイトの襟をぎゅっと握る。

 そして思い出したかのように笛を取り出してぴーと鳴らした。


「……!」

「どこかへ行ってしまったか」


 子ワニは音を聞いてサッと身を隠していた。ボルカノは遠くへ行ったようだと口にしていた。


「近くに親ワニが居たら危ないし、人間の町が近いから追い払っても問題なかろう」

「そうね。ギンタの時もそうだったけど、ウチだとひよこ達が一番危ないもの」

「あう」

「わん」

「ぴよ」


 トワイトが頬に手を当てて言うと、リヒトが頷き、ルミナスと頭の毛からひょこっと顔をだしたトコトが鳴いた。こうやって守っているのでこっちは大丈夫だと言いたいようだ。

 そのまま周囲を警戒しながら進み、町の中へと入っていく。


「そういえば王様用に馬車くらい載せてくれば良かったのう」

「ははは、気を使ってくれてすまない。まあ、たまには歩くのもいいだろう」

「穏やかな感じの雰囲気だのう」

「暮らすにはいい環境だ」

「あーい♪」


 騎士たちが進んでいくなか、町の人たちがなにごとかと集まってきていた。

 特に緊張した様子もなく、穏やかな顔をした人たちばかりで、リヒトに手を振ってくれていた。

 やがてお城へ到着すると、大臣か宰相らしき人物が慌てて駆けつけてきた。


「おお、これはモルゲンロート様! 事前に連絡をいただければお迎えに上がりましたのに!」

「いや、こちらこそ急な訪問で申し訳ない。例の件について話に来た」

「ほほう、ではそちらのどなたかが……? 承知しました、すぐに陛下へお伝えします。すまないが部屋へお連れしてくれ」

「ハッ!」

「頼む」


 話が通じる人のようで、例の件だけで察したらしい。初老といった感じの偉い人は騎士へ注文を促した後、また元の道を引き返していく。


「ここの王は性格が穏やかでな。奥さんの王妃もそうなのだ。王子が一人いるが、今は十六歳とかだったか」

「いい方なのですね」

「まあ、いい人すぎるというのもあるが……」


 トワイトの言葉にモルゲンロートが苦笑する。

 どういうことかと首を傾げていると、パーティ会場のような広いところへ案内された。


「やあやあ、モルゲンロート殿! この度はご足労いただきありがとうございます!」

「ガリア国へようこそ!」

「初めまして!」

「あーう♪」


 会場には王族一家が待っており、入って早々に歓迎を受けた。笑顔で拍手を受けたり、魔法で小さい花火のようなものを出していた。

 リヒトがそれに目を輝かせてから太鼓を振り回す。


「相変わらずだなフェルダ王」

「せっかく来てくれたのだから歓迎は十分にしたいではないか」

「あーう!」

「さっきの面白かったの?」

「おお、赤ん坊がいるな! よし、エメラダもう一度花火を見せてやるのだ」

「ええ!」

「あーい♪」


 王妃のエメラダが指先からパチパチと火花がきれいに散った。リヒトはポコポコと太鼓を叩いて興奮していた。


「リヒトが楽しそうね、私も覚えようかしら」

「ぜひ!」

「こんなに喜んでもらえると嬉しいなあ。あ、僕はフェイルと申します」

「ディランじゃ。賑やかでええのう」

「ウチはそういう感じでやっているからな。知っているかもしれないが、この国は湖や湿地帯が多い。それゆえに気分も下がり気味になるのだよ」


 じめっとした空気感が顕著に精神へ影響を与えるから、火魔法を改良して花火を出すなどできるようにしたのだと言う。


「それで、ドラゴン殿はどなたかな?」

「俺とこっちのコウだが、ここは俺が住まわせてもらいたい」

「おお、それはどうしてかな? 選んでくれるというのは光栄だが」

「それは――」


 ボルカノはコウを差し置いて自分が住むと口にした。ノータイムで決めたその真意を彼が話し出す。

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