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老竜は死なず、ただ去る……こともなく人間の子を育てる  作者: 八神 凪


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第220話 竜、いっぱい来る

「あい!」

「うぉふうぉふ♪」

「わん♪」

「リヒト君上手だねー」


 リヒトが町にある砂場で山を作り、ヤクトとルミナス、それとギルファが褒めたたえていた。

 例のドラゴンスコップを使うことでなんの抵抗もなくサクサクと掘れるのである。

 

「帰ったらお風呂ねえ」

「ペット達も洗わせてもらえんじゃろうか」


 少し離れたところで見守っているディランとトワイトがそんなことを口にする。

 ロイヤード国に泊っているわけだが、部屋へダル達を連れていくため汚いままでは申し訳ないのだ。


「トンネルを作ってあげるね」

「ぴよー♪」

「あー♪」

「あらあら、トコト達も砂で真っ黒になったわね」


 山にトンネルを掘ると、そこへひよこ達が入っていき通り抜けていく。

 その様子が楽しいのか、トンネルを何度も潜り抜けるひよこ達をリヒトは太鼓を鳴らしながら見守っていた。


「あう!」

「わ、ハニワ」

「うぉふ!」


 そして山のてっぺんにハニワを置いてリヒトの山は完成した。

 トンネルを作った後、自分の制作をしていたギルファが笑っていた。

 ちなみにブラッドリィベアの親子はすでに町へ移住しており、ギンタもここには居ない。

 ギルファは少し残念そうだったが、いつでも会えるのとヤクトもいるためそこまで気を落とすことはなかった。


「わほぉ……ん」

「大きなあくびねえダル。混ざらなくていいの?」

「わほぉん」


 トワイトの膝に寝そべっているダルがあくびをし、苦笑されていた。遊びには混じらなくていいと一声鳴き、再び頭を下げようとしたところで、ダルは空を向いた。


「わほぉん?」

「どうした? お、あれは――」


 ダルの視線を追って空を見上げると、大きな翼をしたなにかが降りてくるところだった。ディランはすぐに気づき、ベンチから立ち上がる。


「ロクローが帰って来たようじゃ。ギルファ、すまぬが迎えに行ってくる。騎士と城へ戻ってくれ」

「はい!」

「承知しました」

「リヒト、みんな。行きますよ」

「あーい!」


 ディランがギルファとお付きの騎士へ声をかけると頷いて撤収の準備を始めた。

 トワイトはリヒト達を呼ぶ。リヒトはカバンにスコップやハニワを入れ、ひよこ達をポケットへ丁寧に入れた後、よちよちと歩いて両親の下へ辿り着いた。


「うむ」

「あー♪」

「よくできました♪ 今日は抱っこして連れて行くわね」

「うぉふ」

「あら、どうしたのヤクト?」

「あはは、ヤクトはリヒト君を乗せたかったみたいだね。それではお城で待っています!」


 トワイトがお片付けをちゃんとできたことを褒めてキスをしてあげる。そのまま抱っこしていると、ヤクトが前足をトワイトの足へ乗せていた。

 ギルファが代弁すると、トワイトがほほ笑んでからしゃがむ。


「じゃあ今日はヤクトも抱っこするわね♪」

「うぉふ♪」

「あーい♪」

「ぴよー♪」


 トワイトはヤクトを抱えて両手にリヒトとヤクトを持つことになった。目線が合っているリヒトやひよこ達が大喜びだ。


「ならダルとルミナスとジェニファーはワシが連れていくか」

「わん♪」

「わほぉん」

「こけ」


 それを見ていたディランも担いでいくかと言い、両脇にダルとルミナスを抱えた。

 ジェニファーはだらりと四肢を投げ出したダルの頭へ鎮座し、準備完了だ。

 ドラゴンである二人はそのまま町を歩いていく。

 途中、可愛いといった声があり、リヒトが手を振っていた。

 そして町を出ると、目視していた着陸地点へと足を運ぶ一家。すでに大きな翼をもった者はおらず、草原に四人立っている姿が見えた。


「ロクロー、戻ったか」

「む? ディランか! おう、連れてきたぞ!」

「あらフラウさん!」

「トワイトさんお久しぶり!」

「あーう?」

「ぴよー」


 早速ディランが声をかけると、ロクローが手を振ってくれた。

 一家が近づいていくとトワイトがフランに気づき、顔を綻ばせた。リヒトやペット達は初めて見るため首をかしげていた。


「ボルカノと……後はコウが来たのじゃな」

「ああ、すまないが世話になる。あやつらめ、年寄りの俺たちより頑固で困るわい。なあボルカノ」

「まったくだ。自分たちでやれるというから出て行ってやるとしよう。で、その狼たちとニワトリはどうした? 晩飯か?」

「わほぉん!?」

「わん!?」

「こけー!?」


 ディランはフロストドラゴンのコウと、フレイムドラゴンのボルカノと話をする。若者達が言っても聞かないなら離れるまでと里を出る決意をしてきたらしい。

 それはそれとしてダル達を見てボルカノが歓喜の声を上げ、アッシュウルフ達が怯えていた。


「こやつらはウチのペットじゃから食うなよ? 息子が泣く」

「お、拾った子とやらか。男の子か? 可愛い子じゃないか」

「そうじゃのう。俺はコウだ、よろしくな坊主」

「あう? あい♪」

「あ、怖がらないのね。可愛いわ」


 白髪頭のコウがほほ笑みながら握手を求めると、リヒトは目をぱちぱちさせた後、にっこり笑って小さい手でコウの人差し指を握った。

 フラウも左手を握って軽く上下させてあげていた。


「そうだ、坊主に土産があるんだ」

「うー?」

「なんじゃボルカノ、わざわざ用意してくれたのか?」

「だな。ハニワを気に入っていると聞いたから、昔もらったこいつを持ってきた」


 ボルカノは肩掛けカバンに手を突っ込むと土偶を取り出した。それをリヒトの前に見せると――


「ドグウね。リヒトは気に入るかしら?」

「あー……」

「ぴ、ぴょー……」


 土偶を目にしたリヒトはびくっとして固まり、なんともいえない声を出していた。


「どうじゃ?」

「ふあ……あ、あああああああああん!」

「おお!?」


 そしてボルカノが土偶を近づけると、リヒトは大きな声を出して泣き始め、トワイトの胸に顔をうずめた。


「うーん、やっぱり泣いたわね」

「だ、だめか?」

「ハニワと比べたらちょっと目が怖いかもしれないわ。でも、お守りになるからお家に置かせてもらうわね♪」

「すまんのう……」

「あああああああん!」


 ひとまずトワイトが預かることになったが、大泣きするリヒトを見て、ボルカノはすまなさそうにがっくりと肩を落とすのだった。

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