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第219話 竜、ウキウキで移動する

「わしじゃ」

「おう!? ……ロクローさんか、驚かせるなよ……また帰って来たのか?」


 地中を潜行して約一日ほどかけたロクローは無事に竜の里へと到着していた。

 特に門を置いていないが、見回りはしている。そこでちょうど居合わせた若者ドラゴンにロクローが声をかけた。


「うむ。お主らの願いが叶うかもしれんから大目に見るのじゃ」

「なんだって? あ、ロクローさん!」

「急ぐのでな。おおーい、ボルカノ、フラウ、スカイ! おるかー」

「でけえ声だな!?」


 見知った竜の里なので遠慮なくどかどかと里を歩き回り、数人の年寄りドラゴンの名前を呼びながら歩いていく。

 すると広場で若者と揉めているボルカノと出くわした。


「こっちも力づくになるぞ」

「ほう、ワシに勝てると思っておるのかひよっこ共が」

「あ? やるか?」

「よせ、ここで暴れたら里に被害が出る」

「おお、見つけたぞボルカノ!」

「む? ロクローではないか……! どうした? ほら、あっちへ行け」


 三人の若者がボルカノに詰め寄り、その内一人とにらみ合っていた。冷静な男は喧嘩はするなと止めていた。

 そこでロクローが戻り、ボルカノがパッと顔を明るくする。それと同時に若者を排除するように伝えた。


「いや、ええわい。こやつらにも朗報というやつじゃ」

「どういうことだロクロー爺さん?」

「うむ。実はな――」


 そこでロクローは国の名前は出さずに、人間の町や山、森で暮らす許可をもらったことを告げる。

 基本的に年寄りのみ受け入れで、暴れない者が対象であることを。


「ディランめ、やりおるわい」

「流石はアークドラゴンというところかのう。というわけでまずは面通しをする。そこで問題なければ実際に暮らし、さらに問題がなければその国へドラゴンの移住を増やすことを検討というところじゃ」

「おお、良かったな爺さん達」


 ロクローの話を聞いて若者たちがニタニタと笑いながらそんなことを言う。なんにせよ出て行ってくれるならなんでもいいということだ。


「まったくお主達は。まあええ、とりあえず後はリーフドラゴンのフラウかサバナともう一人くらいおらんかのう」

「フロストドラゴンのコウでええんじゃないか?」

「そうするか」


 そして――


「まあ、ディランさんとトワイトさんが? ありがたいわね」

「とりあえずどっちかだけでもええかのう」

「ならフラウ姉さんが先に行ってよ。私は待っているわ」

「ボルカノは人間の国に住むの大丈夫なのか……? 森を燃やしたりせんでくれよ」

「お前こそ森を凍らせるのでないぞコウ?」

「喧嘩をして暴れたらこの話はナシになるぞ」


 ――ロクローはすでに家を引き払い、別のドラゴンが住んでいたのでボルカノの家に集合した。

 リーフドラゴンのフラウとサバナの姉妹はまず姉に行ってもらうように話す。

 ボルカノと軽口を言い合っていたコウも問題ないと片手を上げて応えていた。


「しかし人間の住処へか。確かに人の姿をしておるが受け入れてくれるものじゃろうか」

「ディランの知り合いはみんなええ人間ばかりじゃぞ。たまに変なのがおるが、それは対処してくれるしのう」

「なにかお土産を持って行かないとね。人間さんには草花でいいかしら? ディランさん達はなにがいいかな」


 少々不安気なコウに大丈夫だとロクローは自身の体験を交えて言う。そこでフラウが手を合わせてお土産と口にする。


「ディランのところに拾った人間の赤子がおって育てておる。その子にあげると喜ぶと思うわい」

「ほう、捨て子か。不憫な子じゃのう……」

「でも、ディランさんとトワイトさんに拾われたならラッキーよ。きっといい子になるわ」


 ボルカノがしみじみと首を振り、サバナはうんうんと頷きながら赤ちゃんは不幸中の幸いだと言った。


「東の国のおもちゃを喜んでおるぞ。最近はハニワを手にしておった」

「珍しい子じゃ……む、それならこれをやるか」


 東の国は特殊なのとハニワはそれほど好まれるものではないため、一同は苦笑していた。そこで家主のボルカノが引き出しからなにかを取り出して来た。


「ドグウか」

「ああ。三百年位前、人間の村近くで昼寝をしていたら捧げものとか言って置いていかれた物じゃ。ハニワがいけるならこいつも良かろうて」

「そうかしら……?」


 得意げに大きな目をした土偶を置いたボルカノだが、フラウは眉をひそめて疑念を抱いていた。


「他にもなにか無いか探してくるわ」

「おれも一旦家へ帰ってくる」

「よし、では二時間後に里の広場で落ち合おう――」


 ひとまず話を終えたので、ロクローは荷物を持って来るように伝えた。

 ボルカノも土偶を含めて家の荷物を持ち出す準備を始めた。

 ディラン達もそうだったが、基本的にドラゴンの持ち物はそれほど多くない。

 金銀財宝、武具などが宝箱に入っていて、後は服や雑貨が少しある程度だ。

 

「む、来たか」


 程なくして出発者がやって来た。ロクローは寝転がっていた芝生で上半身を起こす。


「待たせたわ」

「いや、昼寝をしておったから大丈夫じゃ」

「とりあえずもう帰ってこない覚悟で荷造りをしてきたが、どうやって行く?」

「フラウ、飛んでもらえるかのう」

「もちろん構わないわ♪ トワイトさんに会うのも久しぶりねえ」


 そう言ってロクローに二つほどの大きな箱を渡すと、そのまま鮮やかな若草色をしたドラゴンへ変身した。


「姉さん、トワイトさん達によろしく!」

「ええ」

「はあ、人間の町か……」

「覚悟を決めんかコウ」


 そんなやり取りをしながら上空に浮いていく。フラウも十分速いのですぐにロイヤード国へ到着するだろう。


「……行っちまったか」

「ディラン爺さんを追い出して正解だったってことか? この調子で人間の町へ行ってくれれば里も安泰か」

「子供を作らないとなあ。お前のところはもうすぐだろ?」

「ああ」

「でも、この前赤ちゃんが生まれた家で他の家にいた婆さんの手を借りて産んだらしいぜ。危なかったって」

「年の功ってやつか? でも、あの方の言うことは若者が自分達だけでやって行かないとって――」


 空へ上がっていくフラウたちを見ながら、若者たちはそんな話をするのだった――

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