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老竜は死なず、ただ去る……こともなく人間の子を育てる  作者: 八神 凪


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第215話 竜、招集をかける

「おお!? クマ獣人!?」

「先ほどはありがとうございました。倒さずに治療してくれたこと感謝します」

「良くしゃべるなオイ!?」

「お父さん、驚きすぎよ。それにしても頼もしい感じがいいわね」


 ディランがロクローと話をしているところでギリアムと娘のカーラも合流してきた。

 変身をしているためいかつい獣人に見えるブルグに驚き、さらに良くしゃべることに二度びっくりしていた。

 カーラの方はそれほど驚いておらず、むしろ頼もしいと笑っていた。


「さて、こやつを連れてきたのはいいが、わしは用事ができた。ギリアム殿、少し家を空けるわい」

「お、なんだ? ディラン殿に関係するのか?」

「うむ」


 そこでギリアムにも各国のドラゴン移住計画について話すことにした。

 ちなみに元々ロクローがいるため今回の移住する国候補にはロイヤード国は入っていない。


「そういうことか。あいつらも決めたんだな」

「そのようじゃ。ということでロクローに呼んできてもらおうと思ってな」

「全員、人型になれるんですか?」

「ええ。里の竜は全員、人化できるわ」

「すごいなあ、ブルグさんも変身できるし」

「まあ人化はそれなりに生きた魔物がなれるかどうか、というくらい難しい。教えたとはいえブルグは頑張ったと思う」

「いえいえ、そんな……」


 ブルグは照れながら頭を掻く。

 ひとまず話はまとまり、一旦ロクローが里へ戻りボルカノ達を連れてくる。飛べるドラゴンも居るため帰りは早いだろうとのこと。


「何人か候補が居たらロイヤード国に常駐してもいい。連れてきて構わないぜ」

「お、そうか。それは助かるわい。では行ってくるぞ」

「気を付けてな。年寄り連中によろしく頼むわい」

「おお」

「またねー!」


 ロクローは振り返らずに片手を上げてすたすたと歩いて行った。町を出てからドラゴンになり、一気に進むらしい。


「全力で移動して三日くらいかのう」

「リーフドラゴンのフラウさんあたりに乗ってくるといいですね」

「トワイトの話し相手もできるか」

「それじゃ次はブルグの件だな」


 とりあえず次のことを考えようとギリアムが顎に手を当てて口にする。

 差し当たってブルグ親子をどうするかという話に切り替えていた。


「そういえばこの小熊の名前はあるのか?」

「え? あ、はい。ギンタと言います。親がそうだったんでしょうかね、背中の真ん中だけ毛色が違うんです」

「あ、本当だ。よく見たら銀色だね」

「きゅーん?」

「種族が私とは違うので、どうか分かりませんが」

「ギンタっていうんだ。よろしくねギンタ!」

「きゅーん!」

「あう」


 小熊は背中の毛にちなんでギンタと名をつけたとブルグが言い、ギルファが嬉しそうに背中を撫でていた。

 リヒトはソオンを食べられそうになったので不機嫌モードだった。しっかりと自分の胸ポケットにひよこ達を隠してじっとギンタを警戒する。

 

「お主達はこれからどうするのじゃ?」

「特に決まっていません。適当に旅をしていただけなので、寝床も固定じゃないのですよ」

「どこかに住みつくとかはしないの?」

「そういう土地があればと思うのですがなかなか良い森がありません。どんぐりがたくさん成る木があればこの子が喜ぶので」

「どんぐり……」

「子供はどんぐりが好きでして。大人になると狩りや魚を獲ったりして肉を食べますよ」


 カーラがギンタを見てどんぐりを食べる姿を想像し、微笑ましいと顔を綻ばせていた。大人になるまではそういう感じらしい。


「どんぐりかあ、どこかの森にいっぱいとれるところがあればウチでもいいってことよね?」

「許可をいただけるのであれば」

「気にしたことがねえな……」

「わしらの居る山もどんぐりはそれほど多くないのう。松ぼっくりならあったが」

「そうですねえ」


 その場にいたディランやギリアム達はうなりを上げる。どんぐりだけをピックアップして気に掛けることはないからだ。


「あの、よろしいでしょうか」

「どうした?」


 そこで騎士の一人が手を上げて一歩前へ出てきた。ギリアムが反応すると、その騎士が話し出した。


「僕は村出身なのですが、近くに森がありました。子供のころ、そこでよくどんぐりを拾っていたのでもしかしたら木があるかもしれません」

「お、マジか? よし、なら行ってみようぜ。案内は任せる」

「もちろんです陛下!」

「って、お父さんは留守番よ? あたしを置いて二人で出て行ったんだから。あたしとギルファで行きます」

「おいおい、そりゃないぜカーラ」


 ふふんと鼻緒鳴らしてカーラがギリアムを制していた。当の本人はがっくりとしながらも仕方ないと子供たちに任せることにした。


 「ディラン殿もいらっしゃいますか?」

「うむ。知らぬ仲でもないし、どうせ暇じゃからな」

「ありがとうございますディラン様」

「それじゃあ行きましょうか。みんなお散歩できそうよ」

「うぉふ♪」

「ぴよー♪」

「あう」

「ぴよ」


 お散歩と聞いて体を震わせるヤクト達。ひよこ達も喜んでいたが、リヒトはポケットから出ないようにぎゅっと口を押さえていた。


「あらあら、怖くなっちゃったかしら? 教えれば大丈夫よ」

「ええ。後で言っておきます」

「それじゃ馬車を回してきますね!」


 そうして今度はブルグ達の住処探しとなった。

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